研究業績

◎現在進行中の研究プロジェクト

近年、グローバルな普遍秩序が希求される一方で、ローカルな相互性が注目されている。経済学もその例外ではない。従来のミクロ・マクロの理論区分が、普遍秩序に対する両サイド(個と全体)からの接近にすぎず、結局のところ、高度に抽象的で一般的な理論に回収される傾向にあるのに対し、ローカルな相互性の視点は、個々人の多様な生と多層的な評価に迫る点で新しい。いま求められているのは、このローカルな相互性の視点を支え、それをグローバルな普遍秩序と結びつける理論と社会制度(「公共的相互性」)の構築であろう。

私の目下の研究課題は、さまざまな自然的・社会的偶然と闘う人々の特殊・個別的な生を例外とはしない「一般」理論に向けて、新たな方法的枠組みを提示することにある。具体的には、調査で実際に観察されるデータをもとに、高齢者一般・要介護者・障がい者グループの潜在能力上の制約を推定すること、ならびに、相互の潜在能力に関する住民たちの認識をもとに、より有効な社会的支援や公的援助の方法を探究することにある。知情意にあふれた実証経済学者らと協働できる経済研究所からオリジナルな経済理論を世界に発信したい。

◎キーワード

ケイパビリティ・アプローチの理論的・実証的定式化、リベラリズムと現代正義論の再構築、セン理論にもとづく厚生経済学の方法的展開