COPD

【COPD(≒肺気腫)】

COPDとは、以前に肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気です。

現在は、両者を合わせて慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼んでいます。

芸能人の中にもCOPDの方は多く、桂歌丸師匠、宇津井健さん、和田アキ子さん達です。

みなさんのCOPDのイメージはどのようなものでしょうか?

COPDの原因

我が国でCOPDになる原因のほとんどは、「喫煙」つまり「たばこ」です。喫煙しない人は、まずCOPDになりません。COPDになりやすい吸い方は、

・早い年齢から始めた方

・喫煙年数が長い方

・喫煙本数が多い方

・そして、40歳を超えてきた方

・フィルターを通していない方(葉巻など)

などがあります。しかし、同じように喫煙してもCOPDになりにくい方となりやすい方がいます。

COPDの有病率や疫学調査

では、どれくらいの方がCOPDなのでしょうか。2004年に行われたNICE Studyでは、我が国に500万人以上COPD患者が存在するが、22万人しか治療を受けていない実態がわかりました。

統計からは、60代の7人に1名、70代の4人に1名が、COPDであることもわかってきています。さらに、死亡者はどんどん増え、2030年には日本人の死因の3位がCOPDになるといわれています。しかしながら、認知度は低いためまずは私たち自身がCOPDのことを知る必要があります。

COPDの歴史と病態

COPDは以前に肺気腫と慢性気管支炎といわれていましたが、左のような方が「肺気腫」(米国)、右のような方が「慢性気管支炎」(英国)として、教科書に載っています。一見違う病気に見えますが、どちらも喫煙によって生じた気管支から肺胞までの障害による疾患です。

肺を中心として破壊が発生すると、「肺気腫」

気道の狭窄や粘液の増加が発生すると、「慢性気管支炎」

と呼ばれます。これらを総称してCOPDとすることになりました。ところで、COPDの日本語訳は慢性閉塞性肺疾患ですが、この意味は、

慢性=いつも、閉塞性=気管支が細くて詰まりそうな、肺=肺の、疾患=病気

いつも気管支が細くて詰まりそうな肺の病気

ということになります。これが診断基準になってきます。

COPDの診断

COPD治療は、軽症から重症で積み重ねていく治療になります。初期には、禁煙を中心とした体力増進に励んでもらいます。すこし進行してきて、息切れを感じるようになってきた場合、気管支拡張薬の吸入治療を行います。さらに中等症になってきた場合、複数の気管支拡張薬やステロイドの吸入治療に移ります。重症になってくると、酸素療法を検討し始めます。このように、重症になるほど治療方法が大変になってくるので、初期から治療を積極的に行うことが重要になってきます。

COPDの吸入療法

吸入抗コリン薬(第1選択)

COPDの診断には呼吸機能検査を行います。前項で説明したとおり『いつも気管支が細くて詰まりそうな肺の病気』であることを証明するためです。呼吸機能検査では、車にたとえることが多いのですが、

1.肺活量検査(肺の容量:車では排気量)

2.1秒量(1秒間にはき出せる量:車では最高速度)

を調べます。気管支が細くなると、1秒量が低下します。1秒量/肺活量が70%未満になると、COPDと診断できるための基準を満たします。

医学的にはFEV1.0/FVC<70となります。

当然それだけで、診断してはいけません。喫煙歴や有毒ガスの暴露歴があること(いわゆる陽性所見)、気管支喘息、心不全、気管支拡張症、、、、などが無いこと(いわゆる陰性所見)を丁寧にチェックしていくことが重要です。これらは、レントゲン検査やCT検査、可能であれば呼気一酸化窒素検査を行うことで判断できます。当院ではすべて検査を行うことができます。

COPDの治療

左:スピリーバ、右:シーブリ

通称LAMA(ラマ)と呼ばれています。COPDの方には、このLAMAが最も気管支拡張作用が強いとされ、第1選択で用いられてきました。

吸入β刺激薬(第1選択)

左:オンブレス、右:オーキシス

通称LABA(ラバ)と呼ばれています。最近には新規LABAが登場し、これらの薬はLAMAよりも呼吸機能改善効果が高いことがあります。積極的にLAMA+LABAを使うようになりました。

合剤

左:ウルティブロ、右:アノーロ

最近は合剤があります。1回の吸入でLABA、LAMAともに吸入できるので、効果や利便性が向上しています。

当院では、皆様に合った吸入薬を探すために、医師や看護師(呼吸ケア指導士)が吸入指導を行っています。確実で正確な吸入治療が出来るような仕組みを提供しています。

COPDで注意すること

1.年のせいと思ってはいけない

COPDは、年配の方に多いため、「年のせい」と思いがちです。

息切れや呼吸困難は改善できます。

さらには、脳卒中や心筋梗塞が減少することも分かっています。

ためらわずに、受診の際に検査を相談してみましょう。

2.活動的であること

COPDになると、運動量が減ります。

COPDでは運動量がそのままその方の将来に直結します。

活動的な方は長生き、動かなくなると寝たきりの方向にシフトします。

吸入治療をしっかり受けて、健康的な生活をしましょう。

3.予防をしっかり

風邪や肺炎、インフルエンザにかかると、一気に体力が低下します。

予防接種や風邪予防を徹底し、栄養バランスの良い食事を摂りましょう。

青木 康弘

診療科 呼吸器内科

・・・・睡眠呼吸障害・COPD・喘息・抗酸菌症

学位 医学博士(群馬大学大学院)

専門 総合内科専門医

呼吸器専門医

睡眠医療認定医

プライマリ・ケア認定医/指導医

結核・抗酸菌症認定医

肺がんCT検診認定医

呼吸ケア指導士

インフェクションコントロールドクター