第7回アジア未来会議
グループ・セッション
「沖縄復帰と他者の映像」報告書

投稿日:2024/11/19

 

第7回アジア未来会議Session 3-01 (group session) 沖縄復帰と他者の映像 

去る2024年8月9日~13日、渥美国際交流財団が主催する第7回アジア未来会議がタイ・バンコクのチュラーロンコーン大学で開催された。沖縄映画研究会会員の世良利和、名嘉山リサ、藤城孝輔、馬然の4名が同会議内で「沖縄復帰と他者の映像」と題したグループ・セッションを行った。沖縄映画研究はついに日本を飛び出し、海外にまで広まったのだ。世良、名嘉山、藤城が以下で説明する発表を行い、馬はディスカッサントとしてそれぞれの発表を論評した。セッションの詳細は以下のとおりである。


開催日時 ・ 2024年8月11日14時00分~15時30分

開催場所 ・ チュラーロンコーン大学401/8教室

司会進行: 藤城孝輔(岡山理科大学講師)


パネリスト(発表順)


藤城孝輔(岡山理科大学講師)「メディアを超えた物語の再生と批評性の変容――大城立裕「カクテル・パーティー」小説から戯曲、映画への変遷」

藤城孝輔は、大城立裕の芥川賞受賞作「カクテル・パーティー」(1967年)と戯曲および映画へのアダプテーションとの比較を通して、沖縄と日本の関係の寓意に変化が生じていることを示した。現実には米軍基地をめぐる日本政府と沖縄の対立関係は顕著であるものの、翻案において沖縄と日本がしだいに同一視されることで日本と沖縄の力関係の不均衡が不明瞭になっていることがテクスト分析を通して明らかにされた。なお、本発表にもとづく論文は、第7回アジア未来会議の優秀論文賞を受賞している。

沖縄を代表する作家、大城立裕について語る藤城会員

世良利和(法政大学沖縄文化研究所国内研究員)「水着と戦争―アニメに見る沖縄の地政学」

世良利和は、沖縄をめぐる地理的、歴史的、地政学的諸条件を踏まえながら、アニメの中で描かれる沖縄のイメージや沖縄をめぐるテーマを「水着と戦争」という視点で分析した。20万人の命が失われた沖縄戦や戦後の米軍統治時代の記憶、復帰から現在にいたるまで続く米軍基地の存在、沖縄南西域にある尖閣諸島をめぐる日本と中国と台湾間の対立といった諸問題とアニメとの関連を指摘したうえで、世良はアニメで描かれる「戦争」が過去のものから未来のものへと変わりつつある傾向を示した。

タイの魅力にハマりつつある世良代表

名嘉山リサ(和光大学教授)「映画における日米協力体制の構築―『ある兵士の賭け』の製作過程と歴史の利用」

名嘉山リサは、米統治下の沖縄で戦争シーンが撮影された日米合作映画『ある兵士の賭け』(キース・エリック・バート/千野皓司/白井伸明監督、1970年)について、石原プロが米側とどのように交渉し協力を取り付けたのか、また米国防総省がどのような意図をもって撮影に協力したのかなどを、米側の公文書と日本側の資料を使い明らかにした。そのうえで、本作を日米合作映画、米軍協力映画、沖縄ロケ映画の系譜に位置付け、ある実話の映画化が歴史との再会を果たし、そしてそれにより歴史が再生・利用・政治化される過程をつまびらかにした。

慣れた調子で発表する名嘉山会員

パネル・ディスカッション(ディスカッサント:馬然[名古屋大学准教授])

3つの発表のあとは、馬然会員がディスカッサントとして各発表を論評し、4人によるディスカッションが行われた。また、会場の聴衆からの質疑も受けつけた。

4名によるパネル・ディスカッションのもよう