返流水処理プロセスの開発

フォトフェントン反応を用いた返流水処理プロセスの開発

活性汚泥法の汚泥処理工程にて発生する分離液は,水処理施設の上流へ返送されます。これを返流水といいます。返流水は活性汚泥法にて処理できなかった難生分解性有機汚染物質などが濃縮され、高濃度に含まれるうえ,原水の2~10%程度の少ない水量にもかかわらず,その排水負荷は原水の30~50%以上を含むことがよく知られています。返流水にともなう負荷が,水処理系への流入負荷量を大きく増大させ,処理水質の低下および,処理コストの増大,難生分解性物質の河川への流出が大きな問題となっています。返流水を適切に処理することにより、難生分解性成分の処理施設内での蓄積を防ぎ、流入負荷量を減らし、難生分解性成分の処理水中への残存防止、ランニングコストの削減を同時に行うことができると考えられます。

フォトフェントン反応は鉄イオン、過酸化水素、光エネルギーの反応により,強い酸化力を持つOHラジカルを高濃度に生成する反応です。フォトフェントン反応により、難生分解性有機物質や,高濃度の汚染有機物質を迅速に低コストで処理することができます。本研究では,標準活性汚泥法へのフォトフェントン反応を用いた返流水処理法の導入による効果を実験的に検討した。本研究が提案する返流水プロセスの概略図をFig. 1に示します。

Fig. 1 フォトフェントン反応を用いた返流水処理プロセスの概略図

実験結果より、フォトフェントン反応により難生分解性物質を分解し、昜生分解性物質に変換することを確認しました。昜生分解性物質は後段の活性汚泥法により分解されます。また、フォトフェントン反応によって生成したOHラジカルは難生分解性物質を優先的に分解する為、フォトフェントン反応に必要な試薬の量を最小限に抑えることが可能です。本プロセスにより、フォトフェントン反応に必要な試薬量を最小限に抑えることができ、かつ活性汚泥法を有効に用いることができます。それにより、処理水中の難生分解性物質の残存を防止でき、排水のTOC(全有機炭素)も効果的に削減でき、活性汚泥法のコスト削減も期待できます。また、本返流水処理プロセスで使用した鉄イオンは、最初沈殿槽でスラッジとして汚泥処理工程にまわされますが、鉄イオンは脱水工程では脱水効率を向上させる作用を持ち、消化工程ではメタン生成を促進する作用も期待できるため、鉄スラッジを効果的に利用できる。

以上の成果をGSCシンポジウムで発表した際のポスターをFig. 2に示します。

Fig. 2 フォトフェントン反応を用いた返流水処理プロセス

参考資料 (より詳しく知りたい人は参照してください)
  • 徳村 雅弘, Innovative water treatment system coupled with energy production using photo-Fenton reaction, 2010. (Link) (フォトフェントン反応を含めた促進酸化法(AOP法)についての基礎が書いてあります [無料でダウンロードできます])
  • Masahiro Tokumura, Rurika Hatayama, Yoshinori Kawase, Yukio Yanagisawa, Improving biodegradability of non-biodegradable compounds using photo-Fenton reaction, J. Water Environ. Technol., 11, 121-130, 2013. (Link)