AOP法への夾雑物質の影響

促進酸化法(AOP法)への夾雑物質の影響

医薬品成分は難生分解性であることから活性汚泥法で除去することが難しく、下水処理場からの処理水中に残留し、水環境中に排出されています。水環境中で検出されている残留医薬品成分は極低濃度(μg/Lオーダー)ですが、医薬品成分は極低濃度であっても生理活性を持つように設計されているため、その影響が懸念されます。

促進酸化法(Advanced Oxidation Process: AOP法)は、強力な酸化力をもつOHラジカルにより難生分解性有機物質を分解除去する排水処理技術であり、新しい医薬品成分除去技術として注目されています。しかし、既往研究の多くは純水中で分解実験を行っている場合が多く、また、実際に下水中に存在する医薬品成分濃度がμg/Lオーダーにも関わらず、mg/Lオーダーの初期濃度を用いて処理性能を評価しています。実際の下水中には対象物質の他にも様々な夾雑物質が存在しており、極低濃度である医薬品成分の除去は、これらの夾雑物質の影響を著しく受けると考えられます。そのため、夾雑物質が無い純水中での実験や、高い対象物質濃度での実験は、夾雑物質の影響を過小評価してしまうと考えられます。

本研究では、実排水濃度レベルの医薬品成分の、種々の促進酸化法による分解実験を、様々な夾雑物質を含む排水中で行い、夾雑物質の影響を定量的に明らかにすることを目的としました。

本研究では医薬品成分の例として、活性汚泥法での除去率が低く、水環境中での検出事例が多い、カルバマゼピンとジクロフェナクを用いました。促進酸化法として気-液系であるO3/H2O2、液-液系であるフォトフェントン反応(Fe/H2O2/UV)、固-液系である光触媒酸化法(TiO2/UV)を対象としました。

本研究により、下水に含まれる夾雑物質によって各促進酸化法が受ける影響を正確に見積もることができ、夾雑物質の影響を最も低くするような最適な促進酸化法の選定ができるだけでなく、かつ正確で最適な設計を行うことでコストの最小化も期待されます。医薬品成分除去技術の導入コストを低減することで、医薬品成分除去技術の導入を促し、水環境中の残留医薬品濃度の低減および水環境の保護に貢献できると考えられます。

Fig.1 WET2015で発表したポスター