フェントン反応を用いた抗カビ剤の開発東日本大震災により福島第一原子力発電所を含め、多くの家屋が倒壊、浸水の被害にあいました。震災後、福島第一原子力発電所20 km圏内の住宅は立ち入り禁止地域となっていましたが、2012年4月16日、一部の地域に限り禁止令が解除されました。長い間、放置された住宅は、カビが繁殖しており、その健康影響が懸念されています。
従来の抗カビ剤には、次亜塩素酸ナトリウムを用いたものが多いですが、酸性溶液との反応で有毒ガスが発生することや、二次生成物として人体への毒性が懸念される有機塩素化合物を生成するなどの、二次的な健康被害が懸念されています。抗カビ剤は室内中に噴霧するため、二次的な健康被害のない抗カビ剤の開発が必要とされています。
フェントン反応は、鉄イオンと過酸化水素の反応により、酸化力が次亜塩素酸イオンより高い、OHラジカルを生成する反応です。次亜塩素酸と違い、水酸基の付加および脱水素反応により抗カビ効果を発揮するため、有害な二次生成物の生成を抑制でき、かつ酸性溶液との混合による有害ガスの発生もありません。
本研究では、フェントン反応を用いた抗カビ剤について、ラボテストおよび福島県南相馬市内の被災した住宅での実地テストにより、その効果を実験的に検証しました。
室内環境学会で以上の成果を発表した際のポスターを以下に示します (Fig. 1)。
Fig. 1 室内環境学会で発表した時のポスター