フォトフェントン反応を用いた排水処理技術水は私たちが生きていくうえでなくてはならない物質です。しかし、水は無尽蔵に存在するわけではなく、石油のように代替品に頼ることもできません。さらに、地球上に存在する水のうち、我々が利用できる水はごくわずかであるにも関わらず、工場からの排水などによって河川や海水が汚染され、自然の浄化作用や現在の排水処理技術では水の需要に対して供給が間に合わず、深刻な水不足となることが予想されます。そのため、汚染された水を迅速に浄化する技術の開発が必要不可欠となります。
新しい排水処理技術の一つに促進酸化法(AOP法)という方法があります。AOP法は、いくつかの酸化処理プロセスを組み合わせることにより効率よくOHラジカルを生成し、ラジカルの持つ強力な酸化力により、難分解性有機汚染物質を無機化する方法です。OHラジカルはオゾンや塩素などの酸化剤と比較し、より強力な酸化力を持つため、多くの有機物質を無機化することができるうえ、排水のTOC (全有機炭素)を迅速に低下できます。現在、促進酸化法として様々な組み合わせ例が報告されていますが、そのなかでも他のAOP法に比べ高濃度のOHラジカルを生成することのできるフォトフェントン反応が注目を浴びています。
フォトフェントン反応の概略図をFig. 1に示します。
Fig. 1 フォトフェントン反応
フォトフェントン反応は鉄イオンの過酸化水素による酸化反応と、光還元反応のサイクルにより構成されています。これらの酸化還元反応のサイクルにより、OHラジカルを生成し、排水中の有機汚染物質を迅速に無機化することができます。また、暗闇下では、フェントンライク反応 (過酸化水素による光エネルギーを必要としない三価の鉄イオンの還元反応)によって鉄イオンの酸化還元サイクルを成すため、反応速度はフォトフェントン反応に比べ劣るものの、暗闇下でも迅速に有機汚染物質を分解除去することが可能です。
まとめますと、フォトフェントン反応は、地球上で4番目に豊富に存在する鉄を触媒とし、安価な酸化剤である過酸化水素を原料に、無尽蔵に照射される太陽光エネルギーを原動力として、強い酸化力を持つOHラジカルを他のAOP法に比べ高濃度に生成することのできる反応です。このような利点を活かすことにより、従来のオゾン酸化法や塩素処理などの排水処理技術では処理できなかった難分解性有害有機物質や、高濃度(高TOC)の汚染有機物質を迅速に処理することができる新しい水処理技術を開発することができると考えられます。また、本技術は水中の汚染物質のみでなく、空気中の汚染物質の除去も可能である(空気清浄法)。また、化学物質のみならず、細菌や真菌(カビ)、ウイルスなどに対しても有効であると考えられる。
参考資料 (より詳しく知りたい人は参照してください)