化粧品のリスク評価

マニキュアに含まれる可塑剤の経皮曝露を考慮したリスク評価

リン系化合物は,難燃剤や可塑剤など,幅広い用途で広く室内製品に使用されています。既往研究によれば,リン系化合物の一つであるリン酸トリフェニル(TPhP)の代謝物が,人の尿中より検出されており,製品中のリン系化合物が人に曝露していることが明らかになっています。特に,女性の尿中TPhP代謝物濃度は,男性と比較して2倍高いことから,女性特有の曝露経路として化粧品からの曝露があげられています。一方,既往研究として,アメリカにてフタル酸ジブチル(DBP)からTPhPへの可塑剤の代替が行われていることが報告されています。そのため,女性特有の曝露経路として,マニキュアの使用に伴う曝露経路が候補としてあげられますが,定量的にその曝露量を評価した例はありません。また,マニキュアの使用頻度や使用方法など,個人差が大きいため,その曝露量の評価は難しいという問題があります。

本研究では,リン系化合物の新しい曝露経路として,マニキュアの使用に伴う経皮曝露を想定し,マニキュア中のリン系化合物の定性および定量分析を行い,その曝露量とリスク評価を行いました。リスク評価については,日本人のマニキュアの使用頻度や使用方法などの個人差を考慮するため,モンテカルロ法を用いた確立論的リスク評価を用いました。加えて,被代替可塑剤であるDBPと,現在主流の代替可塑剤であるクエン酸アセチルトリブチル(ATBC)のリスクも評価を行い,比較しました。

以上の成果を室内環境学会で発表した時のポスターをFig.1に示します。

Fig. 1 室内環境学会で発表した際のポスター

参考資料 (より詳しく知りたい人は参照してください)
  • 徳村 雅弘, 化粧品成分の安全性評価のための製品性状を考慮した経皮曝露量推算スキームの構築 -マニキュア用可塑剤の経皮曝露を考慮したリスクトレードオフ評価-, Cosmetology, 27, 113-119, 2019. (Link) (本研究の詳しい内容が書かれております)
  • Masahiro Tokumura, Makiko Seo, Qi Wang, Yuichi Miyake, Takashi Amagai, Masakazu Makino, Dermal Exposure to Plasticizers in Nail Polishes: An Alternative Major Exposure Pathway of Phosphorus-Based Compounds, Chemosphere, 226, 316-320, 2019 . (Link) (本研究の成果について書かれております)