ミラー対称性の諸相 2020

日時:9月16日(水)・17日(木)

場所:オンライン(Zoom)

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講演者(五十音順、敬称略):岩木耕平(東大)、岩成勇(東北大)、佐野太郎(神戸大)、社本陽太(IPMU)、野原雄一(明治大)、橋本健治(東大)、廣惠一希(千葉大)、山下真由子(RIMS)

プログラム(敬称略):

9月16日

10:00-11:00 廣惠 不分岐不確定特異点のunfoldingと射影直線上の有理型接続のモジュライの変形

11:15-12:15 岩木 Topological recursion for hypergeometric spectral curves and uncoupled BPS structures

昼休憩

14:00-15:00 橋本 Generalized triangle singularities

15:15-16:15 佐野 正規交差Calabi-Yau多様体の対数変形について

9月17日

10:00-11:00 岩成 Kodaira-Spencer morphisms, Hochschild's and D-modules

11:15-12:15 社本 Stokes filtered sheaves and differential-difference modules

昼休憩

14:00-15:00 山下 Lagrange トーラス束のstrictな変形量子化と格子ゲージ理論への応用

15:15-16:15 野原 Wall-crossing formula for the Gelfand-Cetlin system and cluster transformations

講演タイトル、アブストラクト:

岩木耕平(東大)

タイトル:Topological recursion for hypergeometric spectral curves and uncoupled BPS structures

アブストラクト;2階の超幾何微分方程式, およびその合流方程式の古典極限として得られる代数曲線に対し, (1) 位相的漸化式を適用することにより得られる分配関数と, (2) 付随するBPS構造から得られ る Bridgeland tau-函数という2つの対象の間の関係性について解説する. 本講演は Omar Kidwai (JSPS, 東大数理) との共同研究に基づく.

岩成勇(東北大)

タイトル:Kodaira-Spencer morphisms, Hochschild's and D-modules

アブストラクト:代数多様体の族に対してGauss-Manin接続や周期が定まる。 講演では安定∞圏の族に対して類似の構造を考える。また、圏の特異な族や いくつかの圏論的操作による振る舞いについても話したい。 次のようなトピックなどが現れ相互に関係しあう。これらは従来のGM接続ではみられなかった 豊富な幾何の表れと考えられる。 

(1) DG Lie代数と導来変形理論(の相対版) 

(2) 非可換 小平-Spencer写像 

(3) Hochschild (co)homologyの代数系とfactorization homology 

(4) (3)のモジュライ理論的解釈とKoszul双対性 

(5) 自由ループ空間とD-加群

佐野太郎(神戸大)

タイトル:正規交差Calabi-Yau多様体の対数変形について

アブストラクト:固有正規交差多様体で双対化層が自明なものがよい対数構造を持つ時、 対数変形理論を使って滑らかな複素多様体が得られる。 その結果を射影的ではない正規交差多様体に使って、 ケーラーでないCalabi-Yau多様体の例が構成できる。 そのような例のうち特に第2ベッチ数が任意に大きくなる例について説明する。

社本陽太(IPMU)

タイトル:Stokes filtered sheaves and differential-difference modules

アブストラクト:P. Deligneは, 複素領域における線形微分方程式の不確定特異点におけるStokes現象を内在的に記述するため, Stokesフィルター付き局所系の概念を導入しました. 本講演では, 微分差分方程式に対して類似の構造を与えることを目的として導入した, Stokesフィルター付き擬局所系の概念と, その同変Dubrovin予想への応用を念頭においた具体例について説明します.

野原雄一(明治大)

タイトル:Wall-crossing formula for the Gelfand-Cetlin system and cluster transformations

アブストラクト:Grassmann多様体 Gr(d,n) のミラーは, 双対Grassmann多様体 Gr(n-d,n) のあるZariski開集合と, その上の正則関数の組で与えられる. このミラー多様体の座標環には自然に団代数の構造が入る. 言い換えると, この多様体は団変数を座標とする代数トーラス(団座標近傍と呼ぶことにする)たちを貼り合わせて得られる. この講演では, いくつかの場合に団座標近傍が Gr(d,n) 上の完全可積分系の”SYZミラー”として得られること, さらに, 完全可積分系のLagrangeトーラスファイバーに対する壁越え公式がミラー側の団変数の変換(変異)を与えることについて話したい. これは植田一石氏との共同研究に基づく.

橋本健治(東大)

タイトル:Generalized triangle singularities

アブストラクト:有名な exceptional unimodal singularity は全部で14個あり、 これらについてtriangle singularity としての特徴付けが知られている(Dolgachev 氏、Milnor 氏による)。 本講演では triangle singularity の高次元化について議論する。

廣惠一希(千葉大)

タイトル:不分岐不確定特異点のunfoldingと射影直線上の有理型接続のモジュライの変形

アブストラクト:微分方程式の特異点の合流操作を繰り返すことでGaussの超幾何関数から Kummer, Hermite-Weber, Airyといった合流型超幾何関数の仲間(族)を作ることができる. 本講演ではこれを有理型接続(微分方程式)のモジュライ空間の変形族と捉えて, 不確定特異点が高々不分岐となる状況下で実際にこの変形族を構成する. また射影直線上の有理型接続のモジュライ空間は箙多様体としての実現を持つことが 知られており,この対応を通して箙の表現論から見た微分方程式の特異点の合流の意味づけを考えたい.

山下真由子(RIMS)

タイトル:Lagrange トーラス束のstrictな変形量子化と格子ゲージ理論への応用

アブストラクト:symplectic多様体M上にLagrangeトーラス束構造が与えられたとき, Mの「strictな変形量子化」を構成する. ここで, strictというのは, M上の関数に対してHilbert空間上の作用素の族を与え, Poisson代数のasymptoticな表現を構成する, ということである. 今回の構成では, トーラス束の底空間の中の格子点(Bohr-Sommerfeld点)上の作用素ができる. この構成は, 微分作用素のシンボルと作用素の対応の「格子版」と思うことができる. そこでこの構成を逆手にとって, 多様体の格子近似上の作用素が与えられたとき, その作用素の情報をトーラス束の関数の言葉で記述する, ということができる. 特にAtiyah-Singerの指数定理の「格子版」が成立する. 応用として, 物理の格子ゲージ理論に現れる「Wilson-Dirac作用素の指数の問題」への 数学的な証明が与えられることを説明する.

世話人:

金沢篤(京大)

二木昌宏(千葉大)

梶浦宏成(千葉大)

last modified: 24/9/2020