集団間葛藤と同調

【集団間葛藤状況における同調の働きを明らかにする】

人が外集団脅威に反応してある行動を見せたとき、一体どのような過程を経て集団間葛藤へと発展していくのでしょうか。集団間葛藤が生じるマイクロ-マクロダイナミクスを明らかにするには、外集団脅威によって生じた行動(マイクロ)が、いかなる過程を経て集団間葛藤状況(マクロ)へと発展していくのかを明らかにする必要があります。そこで鍵となるのが、同調行動です。同調行動、特に集団内の多数派に同調する多数派同調行動は、そもそも集団間葛藤への適応行動ではありません。むしろ、社会的に不確実な状況(どう行動していいかわからない状況)における情報探索場面で適応的になることが明らかになっています。すなわち、何をしていいか分からない時には、他の大勢の人がやっていることを真似すれば、大抵うまくいくのです。しかし、この多数派同調は、集団間葛藤状況でも有効に働きます。集団間葛藤に敏感に反応した人たちがある一定数を超えて存在すれば、多数派同調の働きによって、集団内で急激に協力者が増やていきます。すると、その集団は葛藤で勝てるようになり、結果的に適応的になるというわけです。この多数派同調は、非協力者が多い集団でも働きます。ただし、協力者を減らしてしまうため、そのような集団は葛藤に勝てず、やがて絶滅していきます。このような進化・適応のロジックを用いたシミュレーションやシナリオ実験、実験室実験などを行い、集団間葛藤と同調行動との関連を調べています。

【関連する論文・学会発表】

横田晋大・中西大輔 (2012) 集団間葛藤時における内集団協力と頻度依存傾向: 進化シミュレーションによる思考実験 社会心理学研究, 27, 75-82.

中西大輔・横田晋大 (2012) 集団間淘汰と頻度依存傾向の進化:少数派同調を導入した進化シミュレーション 日本人間行動進化学会第5回大会 (於:東京大学駒場キャンパス12月1-2日)

Nakanishi, D. & Yokota, K. (2011, June-July). The effect of intergroup conflict on ingroup cooperation and conformity – simulation and experimental data. Paper presented at the 23rd annual meeting of Human Behavior and Evolution Society, Montpellier, France.