【日中間の敵対感情における多元的無知現象を明らかにする】
現在、日中関係は緊迫の一途を辿っています。もともと隣同士で、貿易も頻繁にやりとりをしていた身近な国なのに、どうして敵対的な感情をもたなければならないのでしょう。そして、今現在、日本人は、中国人は、お互いのことをどう思っているのでしょうか。日中における互に対する感情に関する正確なデータを得ることが必要ですが、そこで何が起こっているかを明らかにすることも、学者の(数少ない?)役割の一つです。外集団への敵対的な感情や評価を持つとき、見逃しがちなのが、自分の心理があくまで自身の考えや価値観によってのみ決まっているという思い込みです。多元的無知と名付けられた現象は、その思い込みに対して警鐘を鳴らしてくれます。多元的無知とは、外集団に対しする差別・偏見が、自分の考え方や価値観ではなく、他の集団メンバーの行動を観察した結果から起こるとするものです。「裸の王様」のように、王様は裸だと分かっているにも関わらず、「他の人は何も言わない」ことを観て、「他の人には服が見えているんだ」と思い込んでしまい、結局皆が何も言わない状態が出来上がってしまう、ということです。日中の敵対感情においても、この多元的無知が起こってしまっている可能性があります。以上を踏まえ、日本と中国でデータを取り、現在分析している最中です。
【関連する論文・学会発表】
Yokota, K. & Li, Y. (2012, January). The effect of belief of others’ intergroup negative emotion on prejudice. Poster presented at the 13th annual meeting of the Society for Personality and Social Psychology, San Diego, LA.
李揚・趙瀚・横田晋大 (2011) 日中間感情における多元的無知 北海道心理学会・東北心理学会第11回合同大会 (於:北翔大学8月20-21日)
横田晋大 (2010) 他者感情信念が外集団への否定的態度に与える影響の検討 日本人間行動進化学会第3回大会 (於:神戸大学12月4‐5日)