コケムシQ&A

Q1.コケムシってどんないきもの?

コケムシは海や池にいる動物で、水中の石や貝殻、水草などの表面に付着して生活しています。

一匹のコケムシ(個虫)は体長1 mm もないような小さなものですが、

この個虫が自分のクローンを無性的にどんどん増やすことで大きな群体を作ります。

この群体が植物のコケのようにみえることから、コケムシと呼ばれています。

Q2.コケムシってどんな体をしているの?

個虫はキチン質や石灰質の部屋(虫室)をつくり、その中に柔らかい体(虫体)が入っています。

虫体は、繊毛が生えた触手が円形に並んだ触手冠をもっていて、これで水流を起こして餌を食べます。

口は触手冠の中央にあり、消化管はU字型に曲がって、肛門は触手冠の外側に開きます。

Q3.コケムシはどのような場所にいるの?

コケムシは熱帯域から南極まで、様々な水域に生息しています。

海であれば波打ち際の潮間帯から数千メートルの深海まで、

淡水であれば平地のため池から高地にある湖まで報告があります。

コケムシは付着生物なので、付着するものが豊富な岩場で特に多くみられます。

Q4.コケムシはいつからいるの?

コケムシはカンブリア紀から化石記録が知られています(2021年12月現在)。

古生代に大繁栄していましたが、その後に大量絶滅を経験して、

現在は古生代のものとは異なるグループが大部分を占めています。

Q5.コケムシは何を食べているの?

コケムシは触手冠に生えた繊毛で水流を起こし、水中の有機物片や微生物を集めて食べています。

飼育環境下では、小型の渦鞭毛藻などをよく与えています。

Q6.コケムシは何に食べられているの?

海にいるコケムシを好んで食べる代表的な動物は、ウミグモやウミウシの仲間です。

ウミグモは細長い吻をコケムシの虫室の隙間に突き刺して、中身の柔らかい虫体を食べます。

ウミウシにはコケムシ食の種類も多く、写真集などでもコケムシを食べている光景がよくみられます。

Q7.コケムシは何種くらいいるの?

コケムシは現在、世界中の海に6,000種ほどいると考えられています。

一方、化石種を含むとその種数は20,000種を超えるとも言われています。

ちなみに、淡水コケムシは種数が少なく、世界中でも100種ほどしか知られていません。

日本周辺にはこれまでおよそ300種が棲息していると考えられていましたが、

最近の研究成果から、その数は日本近海だけでも1,000種を超えると考えられています。

Q8.コケムシは何の仲間?

コケムシは、苔虫動物門(Bryozoa)というグループに属しています。

苔虫動物門が他のどの動物に近い仲間なのかは、じつはまだよくわかっていません。

少し前までは、腕足動物門(シャミセンガイの仲間)や箒虫動物門(ホウキムシの仲間)に近縁だと考えられていました。

しかし、最近の分子系統解析においても、未だ結論には至っていません。

現状で言えることは、下記2点です。

 ① 苔虫動物門は箒虫動物門や腕足動物門と近縁な可能性がある[=触手冠動物]

 ② それらはヒモムシ(紐形動物門)やイタチムシ(腹毛動物門)と近縁な可能性があり、

   さらにゴカイ(環形動物門)や貝類(軟体動物門)などと共に冠輪動物に含まれる

ちなみに、コケムシはたまに「サンゴやイソギンチャクの仲間」と紹介されますが、これは誤りです。

サンゴやイソギンチャクが属す刺胞動物門と苔虫動物門は、系統的に遠く離れた関係にあります。

形態においても、刺胞動物が触手に刺胞という毒針をもつのに対して、コケムシは刺胞を持ちません。

また、刺胞動物には肛門がありませんが、コケムシには口とは別に肛門があります。


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