感染症の危険度の考え方
広がりやすさ(再生産数:1人の患者から何人に感染させるか)
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どのくらい死亡しやすいか(致死率 :死亡者数/感染者数)
【事実】 各種感染症の危険度比較 (2023年1月31日時点)
〔データ出所〕
致死率(致命率、死亡率)(2023年1月時点):厚生労働省 オープンデータより算出
米国CDC関係者インタビュー記事:報道各社(2021年8月2日) 原出所はCNNテレビ
米国累計致死率:JHU CSSE COVID-19 Data (ジョン ホプキンス大学) の累積感染者数と死亡者数から算出
【意見】
① 新型コロナウイルスの危険度の実態
よく比較されるインフルエンザと比べると確かに致死率は高いが、感染症全体の中でみれば危険性が低い部類と言えそうです。
(比較対象にされるインフルエンザは、そもそも致死率がかなり低い)
②コロナが怖くて、他の感染症の予防接種を受けない??
新型コロナが怖くて、子供をクリニックでの予防注射に行かせないとの報道があります(この報道が統計をきちんと集計した正しい内容なのか、”そう言っている人がいる(と聞いた)” 程度の根拠の薄い、質の低い報道なのかは判断できませんが)。
もし、それが本当であれば、新型コロナを怖がって、新型コロナより危険度がはるかに高い小児麻痺の予防注射をしないというのは、非合理的な考え。
上図のような事実を広く知らせて、予防接種をきちんと受けるように伝えるべきではないでしょうか?
③ 人々のバランス感覚に疑問 ~ 非常に恐ろしい狂犬病には無頓着なのに ~
狂犬病は全ての哺乳類に感染し、4類指定とは言え感染したら二週間で狂い死んでゆく致死率ほぼ100%の非常に恐ろしい感染症です。
日本国内では感染発生が途絶えていますが、海外では広く蔓延しており、世界中で毎年約5万人が亡くなっています。
全哺乳類に感染するということは、感染したネズミが貨物船から日本に侵入する事態も十分に考えられるはずで、いつ感染が広まるか分からないと警戒すべきです。
それにも関わらず、犬に対する予防接種率は登録犬の7割にとどまり、登録されていない犬も含めると実質の接種率は4割程度との憂慮すべき推計があります。
この非常に恐ろしい感染症に対して、半数以上の飼い主が無頓着なのに、危険度が低い部類の新型コロナウィルスに、なぜこれほどまでに反応するのか・・世間全般のバランス感覚が悪すぎると感じます。
(2023/3/4 狂犬病に関する記述を一部修正)
社会活動の制限等によって、新型コロナの感染者数も死亡者数も少なくなっているかもしれません。
一方で、社会活動の制約により飲食業や観光業など多くの人が収入を失うなどの深刻な副作用があり、本来は天秤にかけて社会的な合意を得る必要があります。
しかし、残念ながら、片手落ちの情報発信によって、全体を客観的に観るような状態に社会がなっていないため、社会的な合意を得るような議論が本格的にはされていないのが残念です。
【グラフについて知っておいて頂きたいこと】
・基礎再生産数
この数字の扱いについては議論があるところと考えますが、現在、社会活動抑制などで低めに出ている可能性はあります。
・致死率
致死率は、その感染症の病原性(病気の強さ)だけでなく、公衆衛生や医療の水準によっても大きく変わります。
大正時代に全世界で流行したスペインインフルエンザ(スペイン風邪)は致死率10% と高いですが、現在は公衆衛生や医療水準が大きく進歩しているので、今、スペイン風邪が流行っても10%の致死率になるわけではありません。
鳥インフルエンザも初期流行時には非常に高い致死率でしたが、現在は治療薬(抗インフル薬)があるので、このような高率になるとは考えにくいです。