配属希望者へ

 3年生のゼミナールの話というより、その先の卒業研究を見据えた内容を書きます。私とゲームで遊んでいたら単位でるとか、システムはできたところまでで良いだろうとか、何か勘違いして配属希望する学生がいたら、その学生にとっても私にとって不幸になるので、教育方針について簡単に語ります。質問があれば、私の居室を訪ねて頂くかメールでよろしくお願いします(今は、MeetやZoomでの相談も可能です)。

 なにがともあれ、3年生の終わり、4年生になる段階で、あとは卒研を履修するだけの状態(必修や語学などカテゴリ別の卒業の条件クリアした上で、合計118単位以上取得)にして頂くのが望ましいです。記憶が正しければ、4年生になった段階で110単位以下100単位未満でストレート卒業できた学生さんはいません。配属Q&Aを仮公開しているので、こちらにも目を通して頂ければ嬉しいです。

結果を出すことを意識しましょう!

 本研究室は、研究成果至上主義の研究室です。学生さんには、学外への研究成果発表を積極的に薦めます。これは、私の流儀だけの問題ではなく、大学の上層部から「入学時点での学力はともかく、卒業時には有名大学の卒業生と肩を並べられるくらいに学生さんを鍛えてね」的な話を聞いており、客観的な指標の一つが、他大学(国公立大や有名私大)の学生さんが参加する学会での発表をクリアすることだからです。ぶちゃけると、私は本学へくるときの学長との面接で、露骨に「最初は40でも60くらいの」と言われました。出口の段階では、偏差値60くらいの大学の卒業生と張り合えるようにしてね、ということです。各年度初めガイダンスみたいなところで学科長から似た話を聞いているかもしれませんが、入口が文系風のゆる~い学科であっても、出口の段階では他大学の理工学系研究室所属の学生と闘うことを想定しています。

 研究室立ち上げ初年度(前職場の岡山理科大の話になりますが)、2016年4月に初めて顔を合わせた学生さんに、6月までにプロトタイプシステム実装と学会発表原稿執筆をして頂き、8月に口頭発表し奨励賞を受賞して頂いて、また次年度の大学パンフの特集記事の取材対象になるくらいの研究室であるからには、学生さんに、それ相応の意識レベルを求めるということです。念のために書いておきますが、今まで私の勤めた職場が超高偏差値大学で学生さんの基礎学力が高かった、というわけではありません。また、一流大学と業績レースして勝つような世界最高レベルどうこうの結果至上主義ではありません。全く勝ち目ないです。現実的に、とにかく「結果を出す(意識をもち、そして経験して頂く)」ことを重視しています。

研究活動を通して学びましょう!

 本研究室は「研究」するところです。仕様書通りのコーディングを行うだけのSEや、プログラマ養成講座ではありませんし、中学数学の復習合宿や基礎プロの補講をするところではありません。また、適当に本1冊指定して1年通してみんなで読んでいくような「お勉強」で終わることはありません。これまた学科長から似た話を聞いているかもしれませんが、上流工程に携われる情報系技術者(の卵)を世に送りだすことが、本学科(特に情報システム系の研究室)の使命の一部です。

研究活動を通して、以下の3点を学生さんに身に着けて頂きたいと思っています。

    • 10年後でも腐らない「モノの考え方」

    • そこらの国立大やそこそこブランドある私大の卒業生と闘って勝つ力

    • 結果を出す喜び(成功体験)を数多く味わって、「俺/私は結果を出せる!」といった自信

企業勤めを想定したやや具体的なイメージとしては、「上司を説得できる新商品企画立案、試作品の適切な評価、そしてプレゼンテーション能力を備えた人になって頂く」ことになります。本研究室での重要なポイントは、実装した提案システムの有効性を、学内外から協力者を集めて実験して検証するプロセスが入ることです。なぜ、わざわざこのようなことを書くかというと、皆さんが経験してきたプロジェクト科目とは、スケジュール管理の基本が大きく違ってくるからです。4年生の夏の終わりにはシステムが完成していないとヤバい、と思って頂きたいです(コロナ関連でスタート遅れた2019年度生は例外です)。プロジェクト科目の場合、冬になって「ようやくシステムできましたー☆」とか「思った通りのシステムできなかったけれど、頑張ってここまでできました! 許してね☆」でなんとかクリアできていたかもしれませんが、本研究室で卒業研究を行う場合、まず無理です。評価実験を行い、実験結果をまとめ、考察を行わないと、学会発表の原稿や卒業論文が完成しません。学生さんによっては、夏休み中の過ごし方が、卒業研究クリアできるかどうかに結構効いてくると思います。

 以上、厳しく思われる点があるかもしれませんが、一応、私は学生さんの高校時代までの状況や、家庭環境も多少考慮した指導も検討します。本学へくる前に3か所の私立大学に勤めた経験からも、親や親戚や進学校の高校教師からバカにされて自信を無くしている学生さんが時々いらっしゃる現実を理解しているので、是非とも研究活動を通して、小さい成功体験を繰り返し、自信を取り戻して頂きたいと思っています。

大学院への進学をすすめます!

 そこらの地方国立大や有名私大の理工系学部に在籍する、成績真ん中からやや下あたりの学生さんを蹴散らす力を身に着けるために、修士課程まで進学して頂ければ嬉しいです。色々と事情があるのでしょうが、正直なところ、情報系の学科、とくに情報システム学科と名の付く理工系ぽい学科に進学しておきながら、学部卒で就職するのは微妙な選択だと思います。これまた、似た話を学科長あたりから聞いたことがあるかもしれませんが、他の大学の卒業生と比較して闘えるよう皆さんを鍛えたいです。

 大学や大学院は就職予備校ではありませんが、就職先のランクを上げ、研究活動を通した学びをより活かせる職に就くためには、きちんと大学院で研究する方が良いでしょう。大学院まで行くとIT系大企業、大手ゲームメーカーなどを狙う戦いの土俵にあがり易くなります。国内学会や国際会議に参加して優秀な学生をマークしているレベルの企業(某大手ゲームメーカー含む)から、研究発表の場で声かけられるくらいになると良いです。前職場の学生さんは、学部生でしたが興味をもってもらえました。が、ご本人は既に学部卒で就職するのを決めていて、配属先も希望通りで入社前研修など受けている段階でした。なので、ちょっと残念ですが、大学院に進学して2年後に大手企業に入るといった進路変更することはなかったです。

 また、前職場ではありませんが以前勤めていた職場の大学院生(私が直接指導したわけではありませんが)は、N〇TやらY〇hoo、なんとか総研?商事?など、IT系それ以外問わず、所謂大企業から内定を5個くらい貰っていました。学部生のときに国内学会発表と受賞、大学院生のときにも国内学会発表と受賞、加えて国際会議発表数回、論文投稿1回だったと思います。ついでに言えば、普通科進学校から進学してきた学生ではなく、工業高校出身の学生でした。つまり、高校名で地頭の良さが云々なんて、そんなもの、実績(叩きだした結果)の前には関係ないということです。

 進学を考える際、お金の心配される学生さんがいらっしゃると思うので、その点について少々書いておきます。文教大がどのようになっているかは、実はよくわからないのですが、今まで私が勤務してきた私立大学では「うまくやれば大学院の学費を実質タダも同然にできる」カラクリというかルールがありました。私大の場合、学部卒の段階では国公立大より高くつくことが殆どだと思いますが、大学院修了時点では国公立大学とトントンになるか、もっとトクする感じですね。公立大出身(学費を割引なしで全額払いながら学部5年、修士2年、博士4年、計11年いた)の私からみて、かなり羨ましいルールを備えた私大があります。なにげに、この辺のルールの存在を知らずに「これ以上学費払えないから進学しない」という学生さんを何人も見てきました。残念に思います。なので、お金絡みのルールについては、研究科長の先生にすぐに相談することをお勧めします。相談した結果、実はオイシイルールなんて中堅私文系大学の文教大学には何も無かった! でしたらすみません……。


努力(研鑽)は必要、苦労は不要です!

 指導において私が意識する点は、おおよそ以下の3点です。

    • ビジョンをきちんと共有する

    • 努力はしてもらっても苦労はさせない

    • ゴールへ向かって前進したという結果を褒める

 研究テーマが決まった段階で、大抵の場合は、私の頭の中に卒論完成系がみえています。学部の卒研レベルで、失敗が見えている研究テーマを押し付けることはほぼ無いです。ゴールが比較的明確です。なので、ここまでできたら完成!というものを、常に学生さんに意識していただき、そのゴールに向かってどのような作業をすべきか、学生さんに理解して頂きます。ただ単に「頑張れ!とっとと結果だせ!」と言われても、そりゃあ無理でしょう。そして、可能な限り、私は学生さんに助言や指示するときに理由もセットで伝えます。学生さん自身に、意味あることをしていると実感して頂くためです。私自身「これ、なんの意味があるの?」と思う馬鹿らしい作業にやる気はでません。

 また、論文を探して読んだり、プログラムを勉強しながらシステム実装したりといった日々の研鑽は必要ですが、無駄に遠回りさせたくはありません。指導者の中には、「俺が若いときに苦労したんだから、お前らも苦労しろ!」的なことを言う方がいるかと思います。私は、「私自身が3年試行錯誤して身に着けた方法を、効率よく1年で叩き込む」ことを考えています。要は、効率厨のゲーム攻略みたいな研究活動をして、とっとと卒研をクリアして頂きたいわけです。私はインタラクティブ性の高い攻略Wikiみたいなものですね。

 あと、結果出すことが難しいと考えている方もいるかと思いますが、明確なゴールに向かって、きちんと私の指導というか助言に従って研究していれば勝手に結果は出ます。無駄な苦労をしないで楽して結果がでるように助言や指導しているのですから、当然です。また、計画通り毎週少しずつゴールに近づくこと、これ自体も価値ある「結果」です。

 ちなみに、機械ではなく人間寄り(理論重視の数理モデルではなく感性重視のユーザインタフェース側)の研究をしている以上、当初の想定とは違う実験結果がでても、それはそれで立派な結果で、卒業論文程度を書くのは余裕です。研究していれば勝手に結果がでてくるというのは、そういうわけです。

 で、大学院進学を勧める話と絡みますが、なんかシステム作って評価実験して結果でてくると、毎年1名か2名は、研究するのがより面白くなるらしく「うーん、大学院進学しても良かったかも……」と、内定式がとっくに終わり、冬になってから思い始めていました。私の方は、毎年のように「だから言ったのに~、勿体ないよなぁ~」とこぼすことになります。


雑用よりも研究(勉強含む)しましょう!

 原則的に、私は、学生さんを共同研究者としてみなそうとします。学生さんは私のカバン持ちでも秘書でもないので、情報系研究室にありがちな鯖管作業(うちにはサーバ自体ありませんが)、物品購入の書類仕事、私の研究費の管理や出張手続きなどの事務処理仕事の手伝いや、TAやRAとしてではない授業関連業務の補助などして頂く必要はありません。ただ、共同研究者として、部分的にですが私と学生さんの間で上司と部下的な関係ができてしまうことは、否定しません。また、共同研究者としてみなすということは、「お子様でもお客様でもなく、一人の大人として扱います」と言い換えることができます。研究を進めるうえで、進捗に責任をもって頂きますし、成果を出すこと強く求めます。

 私自身「とにかく研究(勉強も)していればOK」といった雑用0の恵まれた環境を指導教員から提供されていましたので、その恩返しとして、自分が指導者となってからは、研究室の学生さんに「とにかく研究第一でどうぞ」といった環境を提供しようとしています。

 もう少し歳をとって体力がもっと落ちてきたら、申し訳ないけれど……少しお手伝い頂くことができちゃうかもしれませんが、今のところは大丈夫かと。その代わりに、部分的に上司と部下の関係に近いことができてしまう点と関連しますが、研究したがらない学生さんには、厳しめの態度をとることがあるかもしれません

 ちなみに、雑用とはちょっと違うかもしれませんが、研究室飲み会とか合宿とか、私の方から企画することはありません。そんなことに時間を使うより、研究して欲しいです。ただ、学生さんが勝手にする分には、適当なタイミングで相談して頂ければ諭吉を出すことがあります。お金は出しますが、呼ばれない限り参加しませんので安心してください。今はコロナ関連で、対面での食事会や飲み会などは難しいと思いますが……。


研究指導に極振りします!

 私は、かなりプライベート犠牲にして、隙間時間のほぼ全てを使い、研究指導(要は卒研のお手伝い)を行いたいと思っていますし、これまで可能な限りそのようにしてきました。一方、スムーズに卒研を進めて卒業される学生さんは、だいたい週3日(午前~夕方まで約8時間×3日)~週5日(昼過ぎ~夕方か夜まで約6時間×5日)研究室(またはコロナ対策で自宅)で超集中的に作業し、その他隙間時間の作業加え、週に合計約30時間以上を卒研にあてています。バイト無しなら週2日完全オフで、徹夜はナシです。そこで私の方は、できるだけ、授業や会議などの時間以外、学生と一緒に研究室に籠ろうとします(またはコロナ対策でMeetやZoomでずっと画面共有……2020年度も2021年度も、授業後夕方から26時ごろまでの馬鹿げた時間、プログラム作業中の画面を共有してサポートすることが何度もありました)。リアルタイム質問受付と、学生さんの横へついてリアルタイムシステム構築支援みたいな感じで、配属された学生さん一人一人または研究グループ単位の、まるで家庭教師みたいになっている感があります。もちろん、研究ストーリーの組み立て、論文の章構成、執筆方法、スライド構成と発表技術などの助言・指導や、発表練習のお付き合いなどもします。

 いろいろ理工系の研究室について情報収集した学生さんなら気づくかもしれませんが、(たぶん上位レベルの大学ほど)研究室主宰者みずからが、研究の現場で学部生につきっきり指導することは、あまりありません。研究室主宰者の本来の重要な仕事は、研究費や企業との共同研究の話を引っ張ってくる、学外の営業活動だからです。研究室によっては、卒研テーマ決めから大学院生にさせるところもあります(当然、教員が卒論の完成系をよくイメージできていない場合があります)。

 これまでの在籍学生さんの卒業研究テーマをみて頂ければ、何らかの動くシステムを皆さん発表していることに気づかれると思います。私は、彼らのプログラムコーディングの代打ちをしていません。が、アルゴリズム(考え方)については、相当助言していたのは確かです。フローチャートっぽいものや、疑似コードっぽいものを紙に書いて渡したこともありました。調べ方のコツ、トラブル解決のコツは機会があるごとに伝えます。が、結局、途中からは、(卒業研究クリアできる)学生さんは、私の手の届かない領域に無事に突入します。なんか勝手に研究が面白くなって、先へ先へ進み始めます。配属直後は、エラーコード出ただけで大騒ぎだった学生さんが、数か月後には自分のアイディアを形にできるような感じになっています。

 私について、お外回りの仕事(研究費集めや共同研究のセッティングなど)より「研究現場での指導に力を注ぎ、学生さんにシステム実装と評価実験の実施を主に担って頂いて、外部へ公開してもあまり恥ずかしくない成果を出す」戦略戦術を優先して実行する教員だと理解して頂けるとよいでしょう。


 以上、思いつくままに書いてみました。機会があれば、書き足すかもしれせん。