投稿日: 2010/06/12 5:52:07
宿主和名: サクラ類
宿主学名: Cerasus spp.
病原菌: Monilinia kusanoi (Hennings ex Takahashi) Yamamoto (Sclerotiniaceae)
子嚢菌類Monilinia kusanoi (anamorph Monilia kusanoi)による病害.サクラの実がミイラ状を呈する(=実腐れ).実腐れを起こした果実は基質性菌核となり, 越冬した菌核からは翌年の春先に子嚢盤が形成され,伝染源となる子嚢胞子が放出される.本菌によるサクラの被害は,実腐れだけでなく葉腐れ症状も引き起こされる.
(葉腐れが幼果菌核病と呼んで良いのかはよく知らない.モニリア葉腐病?多分モニリア病で良いんだと思う.リンゴだってリンゴモニリア病で葉腐れも実腐れも含んでるし.ただ,M. fructicola (G. Winter) Honeyも感染するので注意しなければならない.病名をどう区別したらいいんだろう?)
M. fructicola はM. kusanoi よりも感染時期は遅いようである.実腐れ症状も幼果菌核病とは異なる.M. fructicola は成熟した果実の表面から侵入しているようである(たぶん).また,M. fructicola は感染すると,果実表面に分生子を大量に形成するし,果実表面に菌核を形成する.一方,M. kusanoi は花器の柱頭から菌が侵入する(確かめられていない?リンゴではそう).上述の通り,果実全体がミイラ状になり,全体が器質性の菌核となる.見た目はマッチ棒.これら2種を見分けるのに,一番簡単なのは分生子の形態.Monilia 属菌は数珠状につながった形状の分生子を形成する.分生子自体は通常レモン型.この分生子の1つ1つつながっている間のところに分離器があるかないかで区別することができる.M. kusanoi は分離器があり(有分離器節 Disjunctoriae),M. fructicola は分離器がない(無分離器節 Junctoriae).
M. fructicola は一般的にはモモ灰星病菌と呼ばれる.英語名はbrown rot fungi.ちなみに,サクラ類の中でもウワミズザクラの類Padusには別のMonilinia 属菌が感染するMonilinia padi と言うのがいる.詳しくは知らないが,ウワミズザクラを宿主とするらしい.さらにもう一つ,こちらはもっとややこしい.Monilinia ssioriと言うのもいる.何がややこしいかというと,一時期M. kusanoiと混同されていた経緯がある.原田幸雄先生がM. kusanoi として扱っていた菌は新種Monilinia ssioriになった.M. padiもM. ssioriもM. ssioriも分生子と分生子の間に分離器のあるタイプ(Disjunctoriae)の種.
葉枯れ.葉脈に白っぽく見えるのは分生子塊.
多摩森林科学園 2010/04/14
葉枯れの被害.木全体が罹病し,葉が暗褐色に枯れ上がっている.
多摩森林科学園 2010/04/14
実腐れ.左に1つだけ健全な果実(緑色の丸い実)がある.他はミイラ果.
多摩森林科学園 2010/05/17