Takahashi, Y., Matsushita, N., and Hogetsu, T.
August 2010, Volume 100, Number 8
Pages 747-755
DOI: 10.1094/PHYTO-100-8-0747
English abstract and article (link to APS)
和文要旨
自然感染および人工接種したナラ類樹体内におけるRaffaelea quercivoraの空間分布
髙橋由紀子, 松下範久, 寳月岱造.
1980年代後半からRaffaelea quercivoraによって引き起されるブナ科樹木萎凋病に起因するナラ類集団枯損が甚大な被害となっている.私たちは,蛍光標識コムギ胚芽凝集素を用いて,自然感染したコナラ樹体内のR. quercivoraの菌糸の詳細な分布を調査し,加えて,接種したミズナラ苗木の木部における菌糸分布,通道阻害および宿主の反応との空間的な関係を調査した.R. quercivora菌糸は自然感染・接種ナラ類樹木いずれにおいても道管を垂直方向に,放射組織を水平方向に伸長した.菌糸は接種点付近の比較的狭い地域に限られた.道管の機能不全もまた限られており,菌糸分布域と重複していた.2種類の蛍光物質からなる反応帯は木部の菌糸分布域の外側を取り囲んで形成され,常に通道阻害域で認められた.これらの結果から,ブナ科樹木萎凋病によるナラ類樹木の萎凋は少数の道管の機能不全によって引き起されるのではなく,多数の道管の機能不全によって引き起され,集中穿孔の間にキクイムシによって多くの坑道が掘られることによりR. quercivora菌糸が広がる必要があることが示唆される.