医学的に見たくわしいはらぺこ減量法のしくみ

はらぺこ減量法は、私たちの体重を維持する仕組みを逆手に取った方法です。

その仕組みについて、説明してみます。

食事を取って、グルコースなどの糖分が小腸から吸収されると、血液のグルコース濃度(血糖値)が上がります。

グルコースは私たちの体が最も使いやすい栄養の形で、そのまま脳や筋肉で使用されます。

ある程度血糖値が上がって、とりあえず体に必要な分が補充されると、今度は余分な糖分を貯蔵する能力を

発揮することになります。この働きに必要なホルモンがすい臓から出るインスリンです。

インスリンはまず糖分をグリコーゲンという、貯蔵型の糖分に変えて、肝臓や筋肉に取り込みます。

肝臓や筋肉で取り込める以上に栄養分が入ると、今度は脂肪細胞に脂肪として取り込みます。

インスリンは、貯蔵栄養であるグリコーゲンと皮下脂肪を増やして血糖を下げている。つまり太っているわけですね。

食事をとってからある程度時間がたつと、吸収したままで貯蔵されていない糖分を使いきってしまいます。

そうすると、肝臓に貯蔵したグリコーゲンが分解され、糖分を放出します。グリコーゲンがなくなってくると、

脂肪細胞が分解され、脂肪を分解したケトン体で、次の食事まで、私たちの身体機能を維持します。

食事を取らなくても、すぐ身体機能が損なわれないのは、この貯蔵した栄養分(脂肪分)を使う能力があるからなのですね。

健康状態の人間は、水分さえ十分に摂取していれば、2週間以上は絶食に耐えることが出来るようです。

私たちの体には、やせないように、できるだけ脂肪細胞が分解されない仕組みが備わっています。

その仕組みは脳を含む身体全体や生死に関わるような不安な感情までを巻き込んだとても大がかりな物です。

仕組みの1番目は、余った糖分は脂肪になって貯蔵されるが、脂肪が分解されてできる栄養分は

ケトン体であるということです。ケトン体は糖分より栄養素としては使用しにくい物質です。

仕組みの2番目は、脂肪細胞が分解されるときには、十分に血糖値が下がっていて、

かつ血中のインスリンの濃度が低くなっている必要があることです。

仕組みの3番目は、通常では、脳はグルコースのみを栄養していますが、グルコース濃度が低いときには

ケトン体も栄養とできること。かつそのためには、十分なケトン体濃度が必要とされることです。

どうして肥満の人が空腹のときの不快が強く、やせている人がそれほど不快でないのかずっとわからなかったのですが、

上の記述をアメリカの栄養学の教科書「クラウスの書=食品、栄養、食事療法辞典」で見つけたときに始めて納得できました。

肥満の人は、過食により、いつもインスリンが体内にある状態です。また、肥満によりインスリンの感受性も弱まり、

より多くのインスリンが分泌されています。そうすると、空腹になってグルコース濃度が下がっても、

血液の中のインスリンのために、脂肪はケトン体を放出できません。脳はグルコース減少の影響を受け、

飢餓状態を感じてきます。脳細胞の活動も鈍ってくる。しかし、血液中にインスリンが残っているので、

脂肪を分解してケトン体を作り出すことが出来ない。かつ、インスリンのためにどんどんグルコース濃度は下がっていく。

この、脳にグルコースもない、ケトン体もないという強い飢餓状態により、意識を失うことすらあります。

高インスリン血症下による低血糖により、脳細胞は、不可逆的なダメージつまり、脳細胞の死滅におちいることもあります。

文字通り、高インスリン血症下では脳細胞が飢え死にするのですね。私たちの空腹の時に感じる強い不快感は、

根拠のないものではありません。

でも、そんな時に何か甘いものでも食べると、とたんに不安感が消失、たちまち幸せ感でいっぱいになりますね。

とりあえず手近なものを何でもいいから食べようと強く思うこの仕組みで、貯蔵してある脂肪を分解させずに、

体重を減らさないようにしているのですね。本当にとてもうまく出来ています。

逆にやせた人は、インスリンが通常多く出ていないので、空腹の時にはスムーズに脂肪を分解して

ケトン体の栄養を使える。だから空腹になっても、それほどつらくないわけですね。

やせている人は空腹を我慢することがたやすいので、なかなか太らない。逆に太った人は空腹に弱く、

どんどん太っていくのは、この仕組みがあるからと考えると、スムーズに理解が出来ます。

では、太ってしまった人にはもう、チャンスはないのでしょうか。

決してそんなことはありません。まず3日間はらぺこ減量法をやってみましょう。

毎食前1時間だけ空腹を我慢してみましょう。そうすると、体もあきらめて、ケトン体を放出してくれるようになるようです。

貯めた栄養を使う能力が発揮されるようになったのだと思います。空腹のつらさがずいぶん軽くなります。

つらい時間も短くなり、つらさも軽減されてきます。私や知人の経験では、本当につらいのは、始めの3日だと思います。