デマ・フェイクから自分を守る
世の中に溢れかえる ”デマ・ガセ・フェイク・偽情報・誤情報” から自分で自分を守るために、必要な知識をまとめています。
目次
デマ・フェイクニュースとは?
インフォデミック − 嘘を見抜く方法
その話、本当? - ファクトチェック
嘘を広める人にならない
SNS各社の対策
日本政府公式サイト
世界中のデマ・フェイクニュースまとめ
まとめ
参照ウェブサイト
デマ・フェイクニュースとは?
【デマ】
古代ギリシアにおけるデマゴゴスdēmagōgos(民衆の指導者,転じて民衆を扇動する政治家)による民衆操縦のための宣伝・扇動が原義。※1
”意図的、扇動的な嘘の情報という意味があり、発信者は、それを広めることで人々の気持ちを煽ったり、何らかの行動を起こさせることを目的にしています。
(※1 世界大百科事典)
【ガセ】
”お騒がせ”のガセが語源とも言われており、”偽物、まやかし物”の俗称。
単に誤った情報を意味しています。
【フェイクニュース】
定義に関しては世界的に議論があり、政策文書では、
disinformation(偽情報)
misinformation(単に誤まった情報)
という表現を使用しているそうです。※2
【disinformationの定義例】
-EUハイレベル専門家グループ(HLEG)報告書-
All forms of false, inaccurate, or misleading information designed, presented and promoted to intentionally cause public harm or for profit.
あらゆる形態における虚偽の、不正確な、又は誤解を招くような情報で、公共に危害を与えることを意図し、又は利益を得るために、設計・表示・宣伝されたもの。
-英国DCMS下院特別委員会報告書-
the deliberate creation and sharing of false and/or manipulated information that is intended to deceive and mislead audiences, either for the purposes of causing harm, or for political, personal or financial gain.
害を及ぼす目的又は政治的、個人的若しくは金銭的な利益のために、 人々を欺き誤解を生じさせることを意図した虚偽の情報及び/又は操作された情報を意図的に作成・共有すること。
(※2 総務省ウェブサイト)
1-a. どうして偽情報を作るの?
フェイクニュースを作って莫大な利益を得ている人々が存在します。主な理由は以下の通りです。
・センセーショナルな内容によって特定のサイトへ誘導し、閲覧数を増加して広告収入を稼ぐ
・利益を得て、著名人、企業などの信用を失墜させる
・社会情勢や政情混乱時に人々の不安な心に付け入ることで利益を得る
・社会がさらに混乱することを楽しむ
・政治運動や選挙で特定の候補者や団体、人を貶めることで利益を得る
・特定のサイトへ誘導し、クリックさせることで個人情報を盗んだり、商品を販売したりして利益を得る
1-b. 拡散する目的は?
では拡散する人々の目的はどうなのでしょうか?
研究では、情報の内容よりも、広めている人をフォローしているから拡散する、という傾向があるそうです。
”面白いから正誤はどうでも良い”という安易な動機も存在しますが、なかには、善意や正義感で拡散する人々も存在します。
その場合、情報が正しいかどうか疑うこともなく、ただ信用してしまっているのです。
Covid-19蔓延に伴い”トイレットペーパー品切れ”という文章とともに、スーパーの棚が空っぽの写真が非常に拡散しました。
”中国で生産している、マスクの原料と同じ”といった”デマ”が始まりと言われ、拡散行動に悪意は無かったにも関わらず、結果的に人々が買い溜めに走るパニック現象につながった、とも言われています。
1-c. 逮捕されることもあります
2016年のアメリカ大統領選で大量のフェイクニュースが出回り、制作者が莫大な金額を稼いだ事は有名な話です。
また、結果的に様々な事件を引き起こしたことも知られています。
日本の法律では、ニュースを発信すること自体は罪に問われませんが、特定の人や法人の利益を害した場合には逮捕されることがあります。
例:名誉毀損罪 他人の名誉を毀損する行為
例:信用毀損罪・偽計業務妨害罪 虚偽の風説を流布し、又は人を錯誤に陥れる行為により他人の業務を妨害した場合
また、ニュース発信の過程で、他人のIDやパスワードを盗用すれば、不正アクセス禁止法に問われます。
最近では、熊本地震の発生直後に「熊本で動物園のライオンが逃げた」とツイッターでデマを流した男性が、業務妨害の容疑で逮捕されました。
起訴猶予となりましたが、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となる可能性がありました。
2. インフォデミック − 嘘を見抜く方法
【Infodemic = Information + Epidemic 】
”情報” と “ 伝染” を組み合わせた言葉で、情報の急激な拡散を表しています。
パンデミック(世界的大流行)よりもインフォデミックの方が早く広く拡散している為、正確な情報が届けられない問題について、WHOが警告を発しています。
【騙されないために、6つのチェック】
1. 情報の発信源をチェック
・情報源が明記されているか
・信頼できる情報源か(公的機関かどうか)
・ウェブサイトの運営者情報(About us)を見てみよう
2. 執筆者をチェック
・信頼できる専門家かどうか(所属先、経歴等)
・実在しているかどうか(なりすましかもしれません)
3. アカウント名、ユーザー名、アドレスをチェック
・発信者はApple社を名乗っているが、メールアドレスが不自然
例:appele2455nb
・トランプ大統領のアカウントを名乗っているが、ユーザー名が不自然
例:@Trumpjoejoyce2
・企業や団体を名乗っているのに、URLが数字やアルファベットの羅列であったり、有名サイトに不自然に似せている
4. タイトルや文章、写真をチェック
・”拡散希望”、”シェア希望”など、単に拡散が目的
・!!や太文字、大袈裟な文言の羅列
・ショッキングな写真の添付
・写真をよく見る
→文章と合っているか(撮影地、時間等)
5. 内容をチェック
・時系列は正しいか
・事実を伝えている? それとも単なる個人的意見?
・一次情報(人伝ではなく、本人が体験したもの)かどうか
6. 他の媒体もチェック
・紙媒体(新聞等)を見てみよう
・政府公式サイトを調べる
・他のウェブサイトを見てみよう
3. その話、本当? - ファクトチェック
4月2日は、世界ファクトチェックの日でした。
”ファクトチェック” とは何なのでしょうか?
【ファクトチェック】
社会に広がっている情報・ニュースや言説が事実に基づいているかどうかを調べ、そのプロセスを記事化して、正確な情報を人々と共有する営みです。一言でいえば、「真偽検証」です。※3
(※3 FIJウェブサイト)
3-a. どうやってチェックするの?
ソーシャルメディアなどから膨大な情報を収集し、それが疑わしいかどうかふるいにかけ、各分野の専門知識がある人々が事実に基づいて検証します。 現在ではA I(人工知能)を活用した情報チェックも実施されています。
3-b. 何に基づいてチェックしているの?
【ファクトチェッカーが守るべき5大原則】
【The commitments of the code of principles※4】
国際ファクト・チェッキング・ネットワーク(IFCN)が定めた規定です。
Principle#1 A commitment to Non-partisanship and Fairness.
・特定の党派に所属せず、公正であることを誓う
Principle#2 A commitment to Standards and Transparency of Sources.
・情報源が一定の基準を満たしており、かつ、オープンであることを誓う
Principle#3 A commitment to Transparency of Funding & Organization.
・資金源及び組織がオープンであることを誓う
Principle#4 A commitment to Standards and Transparency of Methodology.
・手法が一定の基準を満たしており、かつ、オープンであることを誓う
Principle#5 A commitment to an Open & Honest Corrections Policy.
・添削方針がオープンで誠実であることを誓う
(※4 IFCNサイト)
3-c. どんな団体がやってるの?
米デューク大学が運営しているReporters‘ Labは、世界各国のファクトチェック団体をデータベース化しています。
日本では、FIJ(特定非営利活動法人 ファクトチェック・イニシアティブ)というファクトチェックの普及活動を行う非営利団体が掲載されています。
【世界中のファクトチェック団体データベース】
【各団体のCovid-19関連ページリンク】
FIJ/日本
PolitiFact/アメリカ
Full Fact/イギリス
【ファクトチェックを依頼できる団体】
Factcheck.org/アメリカ
非営利団体で、ペンシルバニア大学アネンバーグ公共政策センターのプロジェクトであるFactcheck.org。
メールを送ってファクトチェックを依頼することができます。
(要英語、リンクにて注意事項を必ずお読みください)
3-d. 結果はどのように評価されるの?
【レーティング】
ファクトチェック記事を発表する際に表記する、対象言説に関する真実性・正確性の評価・判定をいいます。(レーティングを採用していないファクトチェック団体・メディアもあります。※5)
FIJ/日本の団体
Politifact/アメリカの団体
(※5 FIJウェブサイト)
3-e. ファクトチェック実例 ”キッチン用エタノールの効果”
”キッチン用エタノールのコロナウイルス消毒効果は科学的に証明されていない”
という説が拡散しましたが、メーカー側から反論コメントが出され、何が本当なのかわからなくなる事態が発生しました。
そこで、この疑義言説が事実かどうか、NPO「食の安全と安心を科学する会」(SFSS)がファクトチェックを実施し、その結果を掲載しています。
"SFSSがキッチン用エタノール製剤の消毒効果をファクトチェック!"
【NPO法人「食の安全と安心を科学する会」】
4. 嘘を広める人にならない
そのシェアボタン、押す前に
”一呼吸” 入れませんか?
フェイクニュースからどうやって自分を守るべきか、漫画で分かりやすく説明されている資料があります。
ブラジルのファクトチェック団体「Aos Fatos」が、米ポインター研究所運営の国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の協力を得て制作したものです。
4-1. 合い言葉は「だしいりたまご」
SNSで「わかりやすい医療情報」を発信している山本健人さん(外科医)が提案するフェイクニュースのチェック方法が「だしいりたまご」です。
①「だ」=誰が言っている?
その情報を発信している人が、本当に専門家なのか。一見すると、専門家のようでも、実は厳密に言うとその分野は専門ではない、という場合もあります。例えば医師であっても「心臓血管外科」「神経内科」「感染症内科」など、診療科によって専門性が明確に分かれています。
②「し」=出典はある?
いくら優れた専門家でも、人間である以上間違えることはあります。ですので、その情報の「出典は何か」「エビデンスはあるのか」を、常に考えておきましょう。もし出典がないとしたら、その情報が正しいかどうかを他の専門家が検証することができません。その場合は「あくまで個人的な意見にすぎない」と、考えることも必要です。
③「い」=いつ発信された?
医療に関する情報は、最初は正しいと思われていたことでも、時間が経って研究が進んだ結果、「実は間違いだった」とわかることがあります。これは医学に限らず、すべての情報に当てはまることだと思います。特に新興感染症の流行期のような、次々と新しい知見が明らかになるような状況では、少しだけ前の情報でも、のちに評価が変ってしまうことは十分あり得ます。その都度、その情報がいつ発信されたものなのかを確認しましょう。
④「り」=リプライ欄にどんな意見がある?
TwitterなどのSNSでは医療に関するデマが拡散することも多いのですが、リプライ欄を見ると、専門家がデマを否定していることが簡単にわかることもよくあります。リツイートして拡散しようと思ったときに、まずリプライ欄を見れば、「これデマじゃないかな?」と疑うことができます。「他の人がどういう見解を示しているか」を常に確認しようすることが大切です。
⑤「た」=たたき(攻撃)が目的の投稿ではないか?
例えば、自分が「あまり好きではない」と思っていた人が、SNSで批判を浴びていたとします。そんな時は、情報が正しいかどうかを判断することより、「拡散したい気持ち」を優先しがちです。その心理がデマの拡散につながることがあります。誰かを攻撃することが目的の投稿ではないか、拡散する前にもう一度考えてください。
⑥「ま」=「まずは一旦 保留しよう」
見つけた情報を友達に教えたり、リツイートしたり、情報の内容を実際に試したり・・・、そうした行動を起こすのを、一旦保留してみませんか。「これは」と思った情報でも、時間が経つとすぐに評価が変わるかもしれません。急ぐ気持ちを抑え、すぐに判断を求めないようにしてください。
⑦「ご」=公的情報は確認した?
自力で複数の情報を取りにいって比較検討する。出典が正しいかを確認する。これがベストです。でも、例えば英語の医学論文を何本も読むとなると、できる人は限られますよね。そうであれば、多くの専門家のコンセンサス(合意)である公的な情報を参考にするのが、もっとも安全ではないかと思います。
最後は「ご」でなくて「こ」になってしまいましたが、この7つのポイント、ぜひ覚えておいて下さい。
5. SNS各企業の対策
6. 日本政府公式サイト
【独立行政法人 国民生活センター】
新型コロナウイルスを口実にした消費者トラブルが増加しています。
新たな手口の勧誘が行われる可能性があります。少しでもおかしいと感じたら早めにご相談ください。
連絡先:消費者ホットライン 局番なしの188
(最寄りの市町村や都道府県の消費生活センター等をご案内する全国共通の3桁の電話番号です。)
【代表的な手口】
・市の対策室を名乗る不審なメールが届く
・ウイルスが水道水に混ざっていると不審な電話がかかってくる
・検査薬を販売する、あるいはマスクが購入できると書き込み不審なサイトへ誘導する
・オレオレ詐欺−ウイルスにかかった、といって電話してくる
・給付金を支払うと連絡してきて個人情報を聞き出そうとする
7. 世界中のデマ・フェイクニュースまとめ
以下にあげているものは全て偽あるいは誤情報として判定されたものです。
【日本】
・ウイルスが水道水に混入して健康に悪影響が出る
・花こう岩などの石がウイルスの分解に即効性がある
・新型コロナウイルスの感染予防にアオサが効果的
・コロナウイルスは熱に弱く、26~27度のお湯を飲むと殺菌効果がある
・30分に1回の軽いコップ1杯の給水で胃に流れて胃酸で死滅する
【スペイン】
・水蒸気を5分間吸引すると、コロナウイルスが不活性化される。
【イタリア】
・コロナウイルスのみによって死んだ人はおらず、インフルエンザほど危険ではないと、イタリアの医者が主張
【アメリカ】
・ドライヤーから出る熱した空気を吸う予防・治療できる。
・”ウイルスに効果がある”、”免疫上げる” として販売ーコロイド銀、ビタミン、お茶、エッセンシャルオイル
・イブプロフェンを摂取すると危険(WHOが安全であると公式見解)
・ベニスの河川水が綺麗になった(添付写真は別の町)
【複数言語】
・コロナウイルスは肺に到達する前に4日間喉にとどまり、酢と塩の入ったぬるま湯でうがいをすることでウイルスを除去できる
【イラン】
・アルコールが感染予防に有効
8. まとめ
人類にとって新しい病気であり、また、かつてない事態に直面している現状で、誰もが不安や恐れでいっぱいです。
今こそ自分から進んで情報を選定し、調べ、正しく理解することが自分自身と、ひいてはコミュニティを守る方法ではないでしょうか。
9. 参照ウェブサイト
【総務省】
プラットフォームサービスに関する研究会資料
https://www.soumu.go.jp/menu_sosiki/kenkyu/kenkyu.html
情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd114500.html
【IFCN/The International Fact-Checking Network】
国際ファクト・チェッキング・ネットワーク
https://ifcncodeofprinciples.poynter.org
【FIJ/特定非営利活動法人 ファクトチェック・イニシアティブ】
FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)は、日本でファクトチェックの普及活動を行う非営利団体です