OPT北海道2026 札幌に参加して
私が現在取り組んでいる研究テーマは、葉緑体分裂に関わるタンパク質の機能解析です。研究を進める中で、それらのタンパク質の局在や動態を、生きた葉緑体内で観察したいと考えるようになりました。しかし実際には、オルガネラという微小な構造であること、クロロフィルによる自家蛍光の存在、蛍光レーザーによるダメージ、さらには葉緑体自体の運動など、蛍光顕微鏡観察における問題は多岐にわたり、観察は極めて難航していました。
これらの問題を克服するためには、使用している顕微鏡の光学系に関する基本原理の理解、サンプル状態の最適化、そして取得したイメージの適切な処理方法を学ぶ必要があると考えました。そこで、本プログラムが非常に有用であると感じ、受講を希望しました。
本プログラムは、オンデマンド講義の視聴と2日間の実習から構成されており、基礎的な知識の習得と、実習を通した光学系の理解を同時に深めることができる、非常に充実した内容でした。
オンデマンド講義では、レンズによる結像の原理から最新の顕微鏡技術に関する知見まで、幅広い内容について学ぶことができました。私が日頃行っている蛍光顕微鏡観察やライブセルイメージングに直結する内容も多く、大変有意義でした。特に印象に残ったのは、超解像顕微鏡に関する講義です。名称自体は耳にしたことがあったものの、その原理についてはほとんど理解していませんでした。分解能の限界を超えるための発想や技術の発展の歴史を知り、生物学者の視点だけでは到底及ばない領域において、柔軟な思考と高度な技術開発が積み重ねられてきたことに強い感銘を受けました。生物学者だからといって生物だけを見ていれば良いわけではなく、生物学を支える工学や情報科学についても、最低限の知識を身につける必要があると感じました。
実習では、レンズによる結像や異なる照明法の特徴、蛍光観察光路の構築など、顕微鏡の根幹となるメカニズムを一つひとつ体験しながら理解することができました。簡便な顕微鏡とはいえ、多くのモジュールを組み合わせて精密な作業を行い、最終的に鮮明な像が得られたときの喜びは非常に大きいものでした。また、市販されている高機能な顕微鏡が、いかに複雑かつ精密に構築されているかを改めて実感しました。照明法の原理を理解したうえで、実際に分解能の違いを体験できたことは、今後の明視野観察にも大いに活かせると感じています。
プログラムの最後には、北海道大学ニコンイメージングセンターの設備を見学させていただきました。共焦点顕微鏡、超解像顕微鏡、多光子顕微鏡などについて、技術職員の方からそれぞれの特徴や原理をご説明いただき、共焦点顕微鏡では実際の観察デモも行っていただきました。ラージイメージで取得された高精細かつ巨大な蛍光画像は圧巻でした。また、自身が取得したいデータについて相談する機会もいただき、顕微鏡観察環境下で光や温度条件をどのように一定に保つかといった点について、亀井先生をはじめ技術職員の小林さんから貴重な助言をいただきました。チャンバーの利用や、マクロを用いた蛍光照射タイミングの自動制御など、具体的な方法をご提案いただいた一方で、葉緑体内の蛍光分子を長時間ライブイメージングすることは、現在の技術をもってしても非常に困難な課題であるという現実的なお話も伺いました。専門家の方々の率直なご意見を伺えたことは、非常にありがたい経験でした。
研究においては、高い理想を持つことは重要ですが、技術的・金銭的な制約など、現実的な壁が存在することも少なくありません。しかし今回のプログラムを通して、限界を理解したうえで、それでもなお最善を尽くす姿勢こそが、顕微鏡観察のみならず研究全体において重要であると強く感じました。
冨菜先生、亀井先生をはじめ、本プログラムの開催にあたりご指導・ご尽力いただいたすべての皆様に、心より感謝申し上げます。今回のプログラムで得た多くの学びを、今後の研究に活かせるよう、引き続き取り組んでいきたいと思います。
写真1 座学
現地参加者とオンライン参加者(右手モニターにオンライン受講者)
[主催者の資料写真より]
写真2 顕微鏡光学系の組立実習の様子
カメラ(右側)と対物レンズ(中央)をレールに設置し、さらに、クリティカル照明系用のレンズを追加作業中(左側)
[主催者の資料写真より]