地域活動としての学校の断熱改修 小糸小学校断熱ワークショップ報告
藤沢市/ふじさわ学校断熱ワークショップ実行委員会 藤法淑子さん
株式会社門倉組 DX推進課長 椎野 裕之さん
地域活動としての学校の断熱改修 小糸小学校断熱ワークショップ報告
藤沢市/ふじさわ学校断熱ワークショップ実行委員会 藤法淑子さん
株式会社門倉組 DX推進課長 椎野 裕之さん
藤沢市からは、市立小糸小学校で行われた学校断熱ワークショップの事例が紹介されました。前半は藤法さんからこのワークショップの特徴と概要が、後半は当日の作業と進行を担当した椎野さんから、作業の様子や気を付けた点などが紹介されました。
|市への陳情がきっかけ。
(藤法淑子さん)
藤沢市の断熱ワークショップの特徴は、地域活動として行っているという点です。私たちのメンバーの多くは、2022年4月にNPO法人 気候危機対策ネットワークの会員によって結成された、藤沢市へ気候変動対策の推進を求めるチーム「#7年後も本当に住みやすい街大賞1位とるぞ藤沢プロジェクト」で活動しており、藤沢市の環境総務課や市議会議員の皆さんと気候変動対策の推進を求めて対話を続けております。
この、小糸小学校の断熱ワークショップが開催されたきっかけは、2022年9月に行った市内公共施設の断熱性能向上を求める陳情です。藤沢市内の再エネ設備導入促進を求める陳情とともに提出し、審議される委員会において提出理由を説明する陳述を行いました。その際、長野県立白馬高校で行われた「学校断熱ワークショップ」の手法を例に挙げさせていただき、こちらが教育面でも、地域の方へ断熱の重要さを知らせる面においても有効な取り組みになるというお話をさせていただきました。事前に環境総務課や市議会議員の方と何度も話してきたこと、また、建築物省エネ法の改正や東京都の太陽光パネル設置の義務化が進んでいる時期だったこともあり、市のほうでも断熱は今後必要であるとの認識がすでにあったため、提出した2つの陳情は無事に趣旨了承となりました。
陳情した翌年の今年3月に断熱ワークショップが実施できたのは、陳述を聞いていた市職員の方から「ワークショップやりませんか?」と直接お声がけいただいたからです。そこからは藤沢市が共催となり、内部調整や協力してくださる小学校、事業者の方を募集をしてくださるなどして「藤沢学校断熱ワークショップ実行委員会」が結成されました。のちほどお話しいただく門倉組さんは、この取り組みをご提案させていただいたとき、すぐに賛同してくださったと伺っております。
私たち市民側はおもに、断熱の重要性や効果の高さを広報するなど、地元の方とのつながりづくりや、資金集めを担当しました。資金集めは初めてのことでしたので、すでにクラウドファンディングの実績のあるさいたま断熱改修会議の山本様に相談に乗っていただき、クラウドファンディングサイト「Good Morning」を通じて2月13日から3月24日のおよそ40日間、ご支援を呼びかけました。
建物の断熱が気候変動対策になるということを多くの方の知っていただくきっかけになるよう、InstagramをメインにSNS等でショート動画を発信し、楽しんでいただける工夫をしながら呼びかけを行った結果、189名の方から総額118万2700円、当初の目標の108%のご支援をいただくことができました。実行委員会メンバーと直接の知り合いの方、気候変動に危機感を抱き何かしたいと思ってくださっている方、断熱の取り組みが広まってほしいと願っている方など、様々な思いをお持ちの方が応援メッセージとともにご支援くださいました。この応援メッセージにも大変励まされました。
収支の内訳ですが、支出は材料費約80万円、運営費約5万円、クラウドファンディングリターン費用約15万円、クラウドファンディングサイト手数料約10万円で合計約110万円となっております。これには工事費は含まれておらず、実際の作業等については門倉組さんと、かどくら会さんという工務店の方々のボランティア協力で実現することができました。本当にありがとうございました。余剰資金については今後の断熱への取り組みに活用させていただきます。
次に当日の様子です。ワークショップ当日の参加者は親子8組16名、スタッフ16名、4件の取材の方にも入っていただきました。午前中に竹内先生による断熱セミナーをしていただき、子どもたちが断熱について理解を深めました。また、藤沢市の宮治副市長も午前中に来てくださいました。
当日のワークショップの進行は株式会社 門倉組の椎野様が中心となり、子どもたちの安全を第一に楽しくスムーズに進めてくださいました。この写真を見ても子どもたちが集中して作業をしていることがわかるかと思います。私たちのYouTubeチャンネルにも少し長いですが当日の様子を公開してあるほか、共同通信さんにも取材いただき、その動画もございますのでぜひご覧ください。ではここから門倉組の椎野様に当日の様子についてご報告をしていただきます。
|当日の様子と意識・工夫したこと
(椎野 裕之さん )
神奈川県藤沢市の総合建設会社門倉組、椎野と申します。よろしくお願いいたします。私からは当日の様子を説明させていただきます。
今回携わるにあたり、意識した点は3つあります。1つは絶対に安全であること、2つめは建設業の魅力を知ってもらいたいということ、3つめは、先ほど長野県さんのお話にもありましたが、楽しんでいただくこと。これが非常に重要だと思います。
1つめの安全に関しましては、右上の写真になります。ちょっとわかりづらいかもしれませんが、床にテープで作業エリアを明示し、自分の作業エリアがはっきりわかるようにしました。また、動線に関しても、入るときは教室の後方から、出るときは教室の前方から出ることとし、ぶつかることがないように工夫しました。作業に入る前に道具の正しい使い方もしっかりと説明しました。
2つめの建設業の魅力を知ってもらうにあたっては、教室には一切何も置かず材料や道具関係はあえて廊下に置き、必要なものは取りに行っていただくという、搬入搬出をイメージしたワークショップをさせていただきました。また、私ども建設業従事者と同様に道具を大事にしていただきたいとの思いから、お一人お一人にカゴと道具を用意させていただき、終了後はご希望の方に記念のプレゼントとしてお持ち帰りいただきました。
できるだけ多くの体験をしていただきたいとの思いから、断熱材を切る、壁の仕上げを張る、などいろいろなメニューを用意し、4つの時間割を設けてそれに従って進めさせていただく工夫もしました。
そして3つめの楽しんでいただくということ。当日私は、気軽に話しかけていただけるように、あだ名で自己紹介をしました。また、お子さんと話すときは極力しゃがんで目線を揃えるなども徹底しました。
説明に使用したパワーポイントは極力文字を減らして写真や挿絵を多くし、漢字にはフリガナを振ったり、笑いの要素を入れるなど、楽しく学べることを意識して作りました。そしてなにより一番意識したことは、司会進行をする私自身が楽しむことです。
今回は私どもも断熱ワークショップというものに初めて携わらせていただき、わからないことだらけでもありましたが、ご参加の皆さん、それからスタッフの方たちのたくさんの笑顔を見ることができ、本当に良い経験ができたと思います。私からは以上です。
|効果検証と今後について
(藤法淑子さん)
ありがとうございました。工事工程について少し補足です。小糸小学校は鉄筋コンクリート造4階建てとなっており、今回断熱改修した教室は、小学校4年生から英語の授業で使用する多目的室で最上階にあります。
改修内容は、天井裏に断熱材を二層入れ、南に面する窓の下の壁の屋内側に断熱材を張り付け、木製合板で仕上げました。窓は既存の窓がアルミサッシなので、内側に木製の建具を新設し、その内窓がアクリル板となっております。
ワークショップ作業後、断熱した教室と、隣の無断熱の教室の窓の温度を比較するために当日サーモカメラで撮影しました。無断熱の教室は窓が青くなっており、窓の温度が12.4℃、壁の温度が15℃、一方、断熱した教室の窓の温度は19.6℃、壁の温度は20℃でした。ワークショップを実施した3月25日は小雨の降る肌寒い日だったため、実際に体感でも温かさを感じることができました。
最後に今後についてです。藤沢市の温暖化対策の取り組みについてはこれまで、環境総務課の温暖化対策担当が担っておりました。5名の職員は総務の業務も兼任し大変お忙しそうでしたが、今年度の大きな変化として、ゼロカーボン推進担当が新設されました。5月29日に担当の方々と面談したのですが、以前よりも体制が整っており、お話からその意気込みも感じました。今回の断熱ワークショップにより断熱の重要性が庁内でしっかりと共有され、公共施設の断熱化推進ももちろん、今後は民間既存住宅などの断熱も進めていかなければならないという点で共通認識があると実感しております。
藤沢市と協力して、現在新たな企画を考えています。まだ発表できる段階ではないのですが、たくさんの方にご支援いただき、応援していただいたことが形になるよう、チームメンバーとともに尽力してまいります。また、小糸小学校の断熱化した教室の検証も市が継続して行う予定となっておりますので、そちらも併せて注目していきたいと思っております。
これからの活動報告はInstagramとFacebookで行っていきます。それぞれのプロフィールにYouTube動画や関連情報へのリンクも貼ってありますので、是非ご覧いただけると幸いです。引き続き応援どうぞよろしくお願いいたします。