一般社団法人日本技術者教育認定機構(JABEE)では、企業の皆様にJABEEの認定プログラムについてもっと知っていただくために、2018年5月よりメールマガジン配信を開始し、2018年度は3か月ごとに4回配信しました。
2019年度につきましても3か月ごとに配信していく予定です。ウェブサイト(https://jabee.org)とともに、JABEEと認定プログラムにかかわる情報を分かりやすく皆さまにお伝えできるよう努めてまいります。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
鹽竈神社の四季桜
1月上旬、カリフォルニア大学バークレイ校機械工学科(元副工学部長)M.Tomizuka教授、サンノゼ州立大学副工学部長J.Rhee教授と面会しました。
米国の技術者教育認定団体としてJABEEの先輩格であるABET(Accreditation Board for Engineering and Technology)があります。米国の理工系大学では多くの大学がABETの認定を受けています。
先生方のお話では、米国の大学生は将来何になりたいか、何を勉強したいのかがはっきりしていて、大学名よりは勉強したい講座のある学科や先生を求めて進学してゆく傾向にあるそうです。ABETの認定を受けることによりCourse Objectives(授業の目標)、Course Outcomes(学修成果)の内容が明確に記述されるようになり、学生はこの目標と成果を調べて他大学から転学してくる学生も多いそうです。また学部から同じ大学の大学院に進学する学生の割合はバークレイの場合は学部学生の5%程度、サンノゼ州立大は大学院生全体のうちの約15%だそうで、日本とはかなり違っています。学生が他の大学に転学したり、大学院に進学するときにもABETの認定プログラムで学んだことに意味があるそうです。(事務局長 三田清文)
バークレイ校 M.Tomizuka 教授(写真右)
普段は夜まで多くの学生が勉強する図書館
【第4回】
認定プログラム修了生が身に付けている知識・能力(続)
JABEE認定基準では修了生が9つの知識・能力を身に付けていることを要求しています。工学教育の根幹と思われている専門分野の科学技術の知識・能力は、(c)と(d)だけです。その他の7つの知識・能力は科学技術の知識・能力を使ってエンジニアとして活動するための基本的な能力です。
JABEE修了生の9つの知識・能力
本号では次の2つの項目を紹介します
(f) 論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力
この項目は、広い意味でのコミュニケーション能力を要求しています。
· 情報や意見を他者に伝える能力
· 他者の発信した情報や意見を理解する能力
· 英語等の外国語を用いて、情報や意見をやり取りするための能力
これらのうち、外国語によるコミュニケーション能力とは、通常、英語によるコミュニケーション能力ですが、必ずしも英語でなくてもよいです。また、流暢な会話力を要求しているものではありません。少なくともプログラム修了後ある程度の訓練により、技術的な内容についてのコミュニケーションができることを求めています。
プレゼンテーション訓練のイメージ
(i) チームで仕事をするための能力
この項目は、他分野の人を含む他者と協働するための次の能力を要求しています。
· 他者と協働する際に、自己のなすべき行動を的確に判断し、実行する能力
· 他者と協働する際に、他者のとるべき行動を判断し、適切に働きかける能力
技術者として業務に携わる際には、自己の専門分野以外を専門とする技術者・非技術者と協働して問題解決等に取り組む機会が予想されます。グループで実験に取り組む等という経験だけではなく、他分野の人を含む他者と協働することの重要性の認識や協働するための方法に関する知識修得が必要です。また、限定された分野や人数であったとしても協働の実践を積んで気づきを得るという、チームで仕事をするための基礎的な知識と能力を身に付けさせること要求しています。
グループワーク訓練のイメージ
2018年度の審査作業は終了しました。新規認定プログラム及び暫定認定プログラムをJABEEウエブサイトに掲載いたしましたので、ご覧ください。
リンク先 2018年度新規認定プログラム 2018年度暫定認定プログラム
2001年度に審査をスタートしてから国内の教育機関の累計プログラム数は172教育機関の505プログラム、認定プログラムの修了生の累計は約30万人になりました。
プログラム審査は化学、機械、建築、農業など16の専門分野の学会、協会が分担して行います。それぞれの分野ごとの委員会にて審査報告書を1件1件確認します。判定結果にバラツキがなく、その判定の根拠・指摘事項が分かりやすいかなどをみます。その後全分野の審査結果を持ち寄り、3日間かけて認定・審査調整委員会を開催して、最終的な認定審査結果としてまとめました。
この結果は3月1日の認定会議で審議・確認され、3月8日の理事会で報告・承認されました。
認定・審査調整委員会
企業の皆様にJABEEおよび認定プログラムのことを知っていただくため、今年は5つの大学の就職セミナー会場にてパンフレットの配布をさせていただきました。
訪問させていただいた大学ではたくさんの企業が参加され、各社のブースでは採用担当者の方が会社説明と学生の方からの質疑応答が行われていました。
企業の採用担当者の方でJABEEのことをご存じの方は少なく、たくさんの方とお話させていただきました。一方大学OB/OGも各社のブースには企業人として来ており、中にはJABEEプログラム修了生として技術士の資格を取得し、企業で活躍されている方もいらっしゃいました。
大学就職セミナー
2月2日、日本大学理工学部駿河台校舎で開催された日本工学会主催の公開シンポジウム『我が国の科学技術人材育成の現状と課題』にてJABEE副会長、国際委員長の本城先生が『技術者教育認定ならびに技術者資格認定の国際動向』と題して講演を行いました。
JABEEが行っている工学教育以外でも、医学、薬学、看護学、獣医学の分野で認定団体を設立して認証評価が開始されようとしていること、さらに一部分野では、この認定に連動した国際的な相互認証の動きもあることなどが紹介されました。
またJABEEが加盟するワシントン協定のような技術者教育認定の国際協定の団体と技術者資格に関する団体が連携を図るために2001年に結成されたIEA(国際エンジニアリング連合)の動きに関しても紹介されました。
講演の資料は日本工学会のWebページを参照ください。
日本工学会シンポジウム
科学技術の社会実装教育 エコシステム拠点の形成事業 価値創造型人材の育成 ―産学共同による教育手法について―と題するシンポジウムを聴講しました。
はじめに文部科学省から工学系教育改革のながれと今回の人材育成事業についての説明があり、引き続きSociety 5.0時代の産業構造の変革に対応できる産業界が求める人材像について日本電気(株)技術イノベーション戦略本部長の基調講演が行われました。Society 5.0の世界での生活、最先端技術の紹介があり、産業界が求める人材としてはデータを分析し、価値へと変換できる能力などを求めているとのことでした。このあと北海道大学、埼玉大学、名古屋工業大学、金沢工業大学の4つの大学からその取り組みについての報告がありました。これまでの機械、電気といった限られた範囲での専門知識だけではなく統計技術、情報技術や経済・経営といった文系分野を大学院までの6年、9年間に学べるしくみが検討されており、このために大学のみならず産学連携で企業の研究者、技術者の参画も求めてゆくというものでした。4大学は地域とも連携したそれぞれの進め方ですが、日本の発展の為に良い人材を輩出するものとなることが期待されます。(事務局長 三田清文)
編集後記
"JABEE"を多くの方に知っていただけるように、メールマガジンを配信させていただいております。まだ不足な点が多々あるかと思いますが、有効な情報発信を進めてまいります。みなさまのご意見、ご要望等をお寄せくださいますようお願いいたします。
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