新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度の認定審査は遅延を余儀なくされ、現在進行形のトピックスも少ない状況です。そこで今回は、改めてJABEEのことをより良く知っていただくために、JABEE創設の背景と活動の概要をまとめました。
JABEEの技術者教育認定は、わが国初の専門教育認定制度として、2001年度にスタートしました。人材の国際的流動化が進む中で、わが国の発展に貢献する技術者を育成するための仕組みの一つとして、産官学の協力のもとに生まれた制度です。JABEE創設の背景には、わが国の将来を担う技術者の育成に一部の有識者が大いなる危機感を持ち、国際的に通用する技術者教育の質保証の必要性を提言し、産官学各界から少なからぬ賛同を得たことがあります。この危機感とは、大学工学部に代表されるわが国の技術者や技術系研究者の育成システムがガラパゴス化し、グロ-バル化の中でこれまでの強みを失っていくのではないかという危惧でした。今になってその後のわが国産業界が辿った道筋を振り返ると、これは必ずしも杞憂ではなかったことを実感します。
JABEEの認定制度では、大学の学科等に代表される工農理学系の技術者教育プログラム(以下、「プログラム」)に対し、卒業時の目標として設定した知識、能力を学生に身につけさせるための教育システムを構築し、それを継続的に改善しながら実効的に運営することを求めています。教育機関のランク付けや権威付けを行うものではなく、そこで履修する学生に将来技術者として活躍するために必要な知識・能力を与える教育がなされているかという観点から、教育システムの質を保証するものです。言い換えると、JABEEの認定制度は学生達のためのものであり、ひいては将来の日本のためのものです。
JABEEは、文部科学省が学校教育法に基づき教育機関に実施を義務付けている「機関別認証評価」とは異なり、自らの意思で認定を申請したプログラムをJABEEの認定基準に基づいて審査し、基準を満たしていることを認定しています。これは、産業界におけるISO9000シリーズによる品質保証と似たシステムと言うこともできます。JABEEの認定は、学生にどのような知識・能力を身につけさせているかを評価(アウトカムズ評価)するのが、その大きな特長です。JABEEの認定基準では、プログラムが掲げる学生が身につけるべき知識・能力の到達目標(学習・教育到達目標)の達成が保証されることが必須で、そのための手段である教育方法や達成度評価方法はプログラムが主体的に決めるというのが基本的な考え方となっています。プログラムが設定する学習・教育到達目標には、技術者教育と専門職資格の認定に関する国際組織である国際エンジニアリング連合(IEA)が示している12の知識・能力項目(Graduate Attributes)に基づき、JABEEがわが国の教育の特質を加味してまとめた9項目を含むことが必須です。
認定基準は大きく4つの大項目から構成され、それぞれの基準項目では以下のことを求めています。
基準1:修了生が身につける知識・能力として、JABEEが示す9項目全てが達成されることを前提に、学習・教育到達目標が設定されていること。
基準2:学生に学習・教育到達目標を達成させるためのカリキュラムが編成され、それに基づく教育活動が、学則、シラバス、パンフレット等で公表している内容に照らして適切に実施されていること。
基準3:プログラムの修了生全員がすべての学習・教育到達目標を社会の要請する水準以上で達成していること。
基準4:教育を改善するための仕組みが存在し、継続的に機能していること。
審査員は、16の認定分野の中からプログラムが申請した分野に対応した学協会が選定し、派遣します。審査員による審査後に提出された審査結果は、関連委員会での審議・調整を経て認定会議で認定の可否が決定され、理事会の承認により最終決定されます。
JABEEが認定したプログラムの修了生は、国内では国家資格である技術士になるための第一次試験が免除され、最短で4年の実務経験の後に第二次試験に合格すれば技術士となることができます。一方、海外に目を向けると、20世紀の後半から技術の専門職能資格の相互承認と、技術者教育の相互承認が連携した形で検討され、将来の全面的相互承認を目指して協定が結ばれています。技術者教育認定の国際的相互承認は、1989年にワシントン協定の創設によって始まりました。ワシントン協定は、将来的には加盟各国が他国の加盟団体が認定したプログラムの修了生に対し、自国のプログラム修了生と同等の技術者資格を付与できるようにすることを目指しています。この目標に沿って、一部の東南アジアの国では、国費留学生の留学先をワシントン協定加盟団体が認定したプログラムに限定しています。
技術者教育認定の国際的相互承認の動きはその後も広がっており、JABEEはワシントン協定への加盟後も、2008年にはJABEEが創設に加わった情報系専門教育に関するソウル協定に、さらに2019年には建築設計・計画系教育に関するキャンベラ協定に加盟しました。
JABEEは冒頭でご紹介したような経緯で創設され、現在に至るまでの約20年間、技術者教育認定の活動を行ってきました。しかし、残念なことに教育関係以外の、特に企業関係の方にJABEEの存在や活動が広く知られているとはとても言えないのが現状です。本メールマガジンにより、皆様に少しでもJABEEのことをご理解いただけることを願ってやみません。
世界中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。JABEEでも、教育機関のキャンパスへの立ち入り制限や国内の移動制限などにより、今年度に予定しているプログラムの認定・審査に大きな影響が出ています。現在、受審校や学協会の関係者の皆様と相談しながら審査スケジュールの見直しを進めています。
海外においては、JABEEが加盟している教育プログラムの認定団体の集まりであるワシントン協定(以下WA)のすべての加盟国で、JABEEと同様に例年通りの審査活動ができない状況になっています。そのような中で、WA主催によるオンライン会議が開催され、各国から様々な情報が発信されました。(6月13日)
その中で、米国の認定団体であるABETからは、今年度の審査はすべてオンラインで実施するとの報告がありました。また、カナダのCEABは、継続審査等に当たる既存認定プログラムに限り、1年だけの認定期間延長の措置を講じ、今年度の認定審査活動を中止する予定とのことでした。
JABEEは文部科学大臣から情報、創造技術、組込み技術、原子力分野の専門職大学院の認証評価機関として認証され、2010年度から認証評価を開始しました。以降現在まで4 教育機関、5 専攻の認証評価を実施し2010~2014年度で第1 期を完了し、2015~2019 年度で第2 期を完了しました。
2019年度は、東京大学大学院工学系研究科原子力専攻および神戸情報大学院大学情報技術研究科情報システム専攻の2専攻について認証評価を実施しました。認証評価の実施に当たっては申請専攻から提出された自己評価書に基づく書面調査および実地調査を行いました。その評価結果をもとに、2019 年度専門職大学院認証評価実施結果報告書を3 月25日に文部科学大臣宛てに提出し、対象の2専攻は適格認定されました。
認証評価報告書、自己評価書(本文編)はJABEEウェブサイト(認証評価結果)に掲載しています。
2020年度定時社員総会を5月28日(水)に建築会館会議室にて開催しました。
新型コロナウイルス感染症の感染リスク低減を図るために関係者の皆様のご来場を極力控えていただくとともに、定款に基づいた委任状等による出席により定員数を達成することが出来ました。
これにより議案である2019年度事業報告、決算報告並びに役員の選任について、全会一致で可決されました。その後、新規認定プログラム、専門職大学院認証評価結果及び2020年度事業計画、収支予算等が報告されました。またJABEEの審査員や各種委員会の委員として永年に亘り貢献してしただいた26名の方をJABEEフェローに認定して無事に総会を修了することができました。
総会資料➡ 2020年度社員総会
社員総会
JABEEでは、「JABEE認定プログラム」の社会への認知度向上のために、賛助会員の皆様にご使用いただける「JABEE賛助会員ロゴ」を準備しております。印刷物やウェブサイト等での使用いただくことができます。
⇒ リンク先 JABEE賛助会員ロゴ
JABEE賛助会員用ロゴ
前回に引き続き技術者教育プログラム認定の海外状況第4回としてJABEE国際委員会前委員長の本城勇介先生に「技術者教育プログラム認定と技術者流動性(mobility)の国際的枠組:IEA」と題しまとめていただきました。
技術者教育プログラム認定と技術士などの専門職能力の国際的枠組としてIEA(International Engineering Alliance)があります。このIEAと技術者教育認定団体間の国際的な協定であるワシントン協定(Washington Accord)を中心に総会で討議されている課題等を含め解説していただきました。
WA総会にて審査結果を報告される
佐藤之彦先生
新型コロナウイルス感染症拡大にて日々の日常生活に様々な制約を受けております。教育機関の多くが入構禁止などの措置がとられたことで、JABEEの活動も従来にない対応で認定・審査を進めることとなりました。設立後20周年が経過し、JABEEを取り巻く環境も変化しており、改めてJABEE創設の背景と活動について説明させていただきました。
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