【卒業論文】
災害を乗り越えていくまちづくり構想
― 岩手県山田町を事例に
【卒業論文】
災害を乗り越えていくまちづくり構想
― 岩手県山田町を事例に
浅沼美宥
石田奈緒
本研究は、東日本大震災を経た地域生活の変化を、震災以前の街並みへのヒアリングと復興支援の経過観察により、北東北地域の特徴的なまちづくりの在り方を模索・検討するものである。
岩手県沿岸部にある山田町は、震度 5 強を記録し、津波による甚大な被害を受けた。震災後は防潮堤の建設など、目に見える形で復興は進んでいるが、その安心安全と引き換えに、以前は町から容易に見渡すことができた太平洋(山田湾)が意識から遠のくことや、経年変化により震災の記憶が逆に薄れてしまうなど、復興支援を受けてのまちづくりに対する心理的な側面の影響が懸念される。この課題に対し、山田町の防潮堤を利用して、子供達と共に壁画を制作することを構想しつつ、山田町の特徴的な復興支援の取り組みやまちづくりの計画を論文として報告する。
なお、当初計画では、防潮堤への壁画制作の過程が含まれていたが、今年度の新型コロナウイルスの影響により交流事業が行えなくなったため、本研究は今後の壁画制作へ向けた予備調査・基本設計と位置づけ、山田町の復興に関する取り組みとその過程を主な研究対象とする。
【卒業制作】
北のしつらえ
ー 地域固有の文化に見る暮らしと造型の関係
高野亜子
【卒業制作】
視覚体験を通じた認識に関する研究
ー 展延する脆性的な日常
髙橋祐賢
本研究は、日常の光景、すなわち『光と影』による視覚体験を、映像インスタレーションを通じて再解釈し、私たちの日常に対する認識を揺さぶる作品を制作するものである。
新型コロナウィルスの感染拡大といった社会状況により、1 年前の日常と現在の日常は大きく変化してしまった。しかし、改めて日常について問いなおすと、私たちが固定観念的に捉えがちな平凡な日常も、実際にはささやかな変化が連続しているのであり、このような観念をいかに取り去ることができるかが、これからの時代の New Normal(新しい生活様式)に必要なことと考える。
これを踏まえ、連続的に変化し続ける日常をテーマに、視覚体験を伴う装置(インスタレーション)を制作し、鑑賞者が認識の脆さや可塑性、展延性について発見することをコンセプトとする。
【卒業制作】
東北の野生動物と環境問題に関するイラストレーション
對馬健太
【卒業制作】
ガラスによる「苔のための鑑賞器材」のデザイン
中村緑夢
本研究における作品を「-arium」と名付ける。-ariumとは、特定の機能を持つ装置を意味する。例として、Terrarium(陸上生物を容器で飼育すること)やAquarium(水中生物を容器で飼育すること)などがある。動植物を容器で飼育する事において、ガラスは内と外を分ける仕切りとなって新たな空間を生み出す。このガラスは主原料の石や砂など地球に有り触れたものが『溶けて流れて固まって』生成される、自然に由来した工業製品である。
青森県奥入瀬渓流は、溶岩が苔類に覆われた原始的な光景を感じさせる。大地の熱が生み出したこの自然の姿を、同じ生成過程を持つガラスそのものに置き換え、外界の自然を室内に持ち込むことのできるインテリアプロダクト「-arium」シリーズの制作を行い、地球環境への意識を高めるライフスタイルの提案を目標とする。
【卒業制作】
もうひとつの現実の立証
ー 都市伝説「きさらぎ駅」の事例から
貮又正弥
本研究は、インターネット上にある都市伝説「きさらぎ駅」について調査・考察し、噂話が現実味を帯び仮想空間上で実体化する過程から、今日の情報のあり方について検討するものである。
インターネットの発展の中で誕生した「きさらぎ駅」という都市伝説は、実在しない架空の駅である。しかし、多くの人がその情報を共有することによって、あたかも現実にあるかのように実体化し広まっている。このことを通じて、現代社会は実際の物理的な空間だけでなく、インターネットももうひとつの現実として存在していることになるのだろう。
これを踏まえて、「きさらぎ駅」をモチーフとした観光案内やWebサイトを構築し、鑑賞する人々に情報との接し方について改めて検討してもらいたい。
【卒業制作】
墨と書の技法による「色」の解釈
ー 展示「花鳥風月〜色のないせかいで色をみる〜」を通して ー
南遥香
人が美しいと感じる景色、物、感情は何色をしているのだろうか。自然も人間の感情も一つとして同じものは存在せず、それゆえ、私たちはいつも何かに心動かされ、その何かを次世代へと語り継いでいこうとする。
美に内在されるそのような探求が私の制作の根底にある。色とは、物体が反射した可視光線を見分けることという工学的な解釈もあるが、感情、こころの動きといった文化的な解釈もある。
本研究では、古くから日本の文化が大切にしてきた物事を美しいと愛でる感覚、すなわち「色」を、言葉の持つ力をもって呼び戻すことができる制作を試みる。墨と書の技法による白と黒のせかいで、それぞれがイメージする「色」を感じ取ってもらうことを目的とする。