計画された偶発性理論

ジェラットは客観的意思決定だけでなく、主観的な判断を大切にすることで、突然の変化や不確実なことに対応できるようにするべきだとして積極的不確実性(Positive Uncertainty)という概念を導入しました。

これを受けて発表された「計画された偶発性理論」(Planned Happenstance Theory)とは、スタンフォード大学のクランボルツ教授らが1999年に提案したキャリア論です。

従来のキャリア論は、将来の目標を明確に決めて、そこから逆算して計画的にキャリアを作りこんでいくというものでした。クランボルツ教授らはそれを現実的でないとし、キャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されると主張しました。その偶然を計画的に設計し(積極的に機会を創りだすような行動を取り)、自分のキャリアを良いものにしていこうという考え方です。

具体的には、 機会を活かせるような能力を身につけておくことを提唱しています。

さて、どうすれば予期しない出来事を創り出せるのでしょうか。クランボルツ教授は以下のような行動指針を持つことが大事だと指摘しています。

(1)「好奇心」 ―― たえず新しい学習の機会を模索し続けること

(2)「持続性」 ―― 失敗に屈せず、努力し続けること

(3)「楽観性」 ―― 新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること

(4)「柔軟性」 ―― こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること

(5)「冒険心」 ―― 結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと

(参考:『その幸運は偶然ではないんです!』ジョン・D・クランボルツ、A.S.レヴィン著 花田光世ら訳 ダイヤモンド社 2005)