非認知能力

非認知能力とは学力試験では測れない能力であり、欧米では人生の成功を左右する能力として注目されています。

非認知能力の中でも最も重要な要素には、ビッグ5と呼ばれる5つの資質が挙げられます。

① 勤勉性・誠実性 ( Conscientiousness )

目標に向かって取り組む態度のことです。

② 開放性 ( Openness )

外界の体験に対して開放的に向かい合う性格のことです。

③ 外向性 ( Extraversion )

積極的で親しみやすく、社会との関わりを進んで持とうとする性格です。

④ 協調性・調和性( Agreeableness )

周囲に寛大で協力的な性格のことです。

⑤ 情緒安定性( Emotional Stability )

楽観的で、情緒の安定した性格を指します。リラックスしていてストレスをうまく発散でき、障害にもうまく対処できる人に高いと言われる性格要素です。

ビッグ5の他にも、忍耐力(Perseverance)、社会的適性(Social Competencies, リーダーシップなどが含まれる)、創造性(Creativity)、メタ認知ストラテジー(Metacognitive Strategies, 自分の状況を把握する能力)、自制心(Self-Control)、意欲(Motivation)、自己認識(Self-Perceptions、 自分に対する自信がある、やりぬく力がある)などが非認知能力に含まれます[GS]。

日本でも、非認知的能力が注目・研究されています。

2017年3月に改訂された「学習指導要領」に、その内容が組み込まれ、学習指導要領に合わせて保育所保育指針・幼稚園教育要領も改定されました。

保育園・幼稚園も変わろうとしています。

また、2020年からの大学入試でも、この非認知能力を評価の対象とすることが決まっています。

「非認知能力」を鍛える経験は、幼児期や子ども時代に限ったことではありません。

大人になってからでも十分に能力を鍛えることは可能です。例えば自制心は何かを繰り返し継続的に行うことで向上します。課外活動も非認知能力を鍛えるのに有効とされています。

・学校と非認知能力の関係

米国の一般教育修了検定(GED, 日本の高卒認定に相当)に関する分析によると、高校に通わずGEDに合格した生徒は高校を卒業した生徒と比べて年収や就職率が低い傾向にあるそうです。もし学力だけが重要なのだとすれば、同程度の学力を問うGEDに合格した生徒と高校を卒業した生徒との間で大差がつくはずありません[HHK]。

また、(高校のレベルに関係なく)通知表の成績が良かった学生は大学中退率が低いということもわかってます[BCM]。

これらの研究は「学校とは単に勉強をする場であるのみならず、非認知能力を養う場でもある」ことを示唆しています。

・リーダーシップ

リーダーシップとは目標達成に向けて自ら行動したり提案したりすることと、チームメンバーの積極的な関与を促す行動です。実践する方法は様々です。リーダーだけが発揮するものではなく、チーム内にいる全員が発揮すべきものです。リーダーシップが発揮できる人には、良い仕事が回ってくるため、好循環が生まれます。

・自己効力

人が行動を取るとき、2つの予測が働く:

①行動によって結果が生じるという予測(結果予測)

②うまく行えるかどうかについての予測(効力予測)

これらの予測は「自己効力」(self-efficacy)と呼ばれる[B]。言い換えれば「自分に対する有能感・信頼感」であり、非認知能力の一つと言える。自己効力は重要視されており、適性検査RCAPでもこれを図る指標が用意されている。

参考文献

[GS] Gutman, L. M., & Schoon, I. (2013). The impact of non-cognitive skills on outcomes for young people. Education Endowment Foundation, 59.

[HHK] Heckman, J. J., Humphries, J. E., & Kautz, T. (Eds.). (2014). The myth of achievement tests: The GED and the role of character in American life. University of Chicago Press.

[BCM] Bowen, W. G., Chingos, M. M., & McPherson, M. S. (2009). Crossing the finish line: Completing college at America's public universities (Vol. 52). Princeton University Press.

[B] Bandura, A. (1977). Self-efficacy: toward a unifying theory of behavioral change. Psychological review, 84(2), 191.

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