EU崩壊で始まる新世界秩序

「EU崩壊で始まる新世界秩序」(「問題は英国ではない、EUなのだー21世紀の新・国家論ー」エマニュエル・トッド著、文藝春秋、2016年に収録)は、ソ連崩壊・リーマンショック・アラブの春・ユーロ危機・英国EU離脱を予言し、現代最高の知識人とされるトッド氏によるEUの今後を予言した記事です。英国EU離脱はグローバリゼーションによる疲労の結果であり、EU崩壊の引き金になるだけでなく、グローバリゼーションの終わりの始まりを示す出来事だとしています。また、EU崩壊は各国の主張が強まることによって進むと予想しています。そして英国に続く『目覚め』が欧州各国で起きることでドイツによる強圧的な経済支配から「諸国民のヨーロッパ」を取り戻し、それこそが欧州に平和をもたらすのではないかと予言しています。著者は「終わり」を予想するのは簡単だがそのあとの新しい世界を予見するのは難しいと語っています。そのため経済的な競争が激化してグローバリゼーションの荒波に人々がさらされるシナリオもありうると警告しています。

予言はいかにして可能なのでしょうか?

歴史は肉眼だけでは見えません。フィールドワークで現場に足を運んでも変化をとらえることはできません。著者によると歴史の情勢を教えてくれるのは国勢調査などの統計だそうです。例えば著者は出生率の激減からサウジアラビアの崩壊を予言しています。

現在我々は近未来を見通すのが非常に困難な局面にいます。変化するパラメータがあまりにも多いためです。しかし、だからこそ安定したパワーがどこにあるか見極める必要があります。