EROS PARALLAX PROJECT -「エロス」視差観測プロジェクト

1月28日(土)〜2月3日(金)(日本では4日未明まで)小惑星「エロス」を観測し、太陽系の大きさを測ります。

詳しくは、英語によるページをごらん下さい。以下に要点をまとめます。

小惑星「エロス(433 Eros)」が1月31日(火)、最接近します。小惑星「エロス」の軌道が比較的つぶれた楕円であるため、「衝」(地球を挟んで太陽の反対側の位置になること)の時の距離が大きく変わりますが、今回は、ほぼ30年ぶりの大接近となり、0.1787 天文単位(2673万km)まで近づきます。明るさも8.56等と明るくなります。そこで、地球上の2点から、同時に撮影し、背景の星を基準とした「視差」から、測量の要領で、その距離を測ろうというプロジェクトです。

現在は、レーダー技術で天体までの距離が正確に測れていますが、レーダーが発明される以前は、軌道が確定していて地球に近づく観測可能な明るさの小惑星の大接近時にその小惑星を、または金星の太陽面通過時に金星を、地球上のなるべく離れた2点から観測して「視差」を求めることにより、それぞれの天体までの距離を測定し、ケプラーの第3法則(公転周期の2乗が軌道長半径の3乗に比例する)から太陽系の大きさを決定していました。今年2012年は、この二つの現象が同時に起きる非常に珍しい年なのです。

20世紀の初めの頃、大天文台とその遠征隊とで行っていた大々的な観測は、現代ではアマチュアクラスの望遠鏡や望遠レンズとデジタル一眼レフや天体撮影用のCCDカメラにより簡単にできるようになりました。また、アマチュア観測家は世界の至る所にいます。そこで、世界中の天文ファンに小惑星「エロス」を撮影し、位置を測定し、送ってもらうことで、かつての観測を世界中に散らばる天文ファンにより再現してみようというのが、今回のプロジェクトの趣旨です。また、学校や各天文教育施設では、よい観測教材になるのではないでしょうか。今回の観測結果は、次の観測機会にも生かすことが出来ます。

なお、今年6月6日に起きる金星太陽面通過の際にも同様のプロジェクト「Transit of Venus - MEASURING THE SOLAR SYSTEM」を行う予定です。

観測方法

具体的な観測方法は、Eros and the solar parallax ページをごらん下さい。簡単にまとめますと

    1. 撮影時刻を選ぶ

      • 南北に離れた地点で同時観測できる時刻を選びます。日本は、アジアとオーストラリアの間で同時観測する時間帯18:00UT(日本時間27時 - 翌日の午前3:00)が推奨されています。天候も考え、その前後15分の撮影もできれば、行ってください。

    2. 小惑星「エロス」を撮影する

      • 小惑星「エロス」を望遠鏡か望遠レンズで撮影します。まず、撮影時刻を正確に(秒の単位であっているように)合わせてください。なお、報告はUT(世界時)で行ってください。露出開始と終了の真ん中の時刻を観測時刻とします。また、後の位置測定が出来る様、画像内に位置が測定されている星が10〜20個は写っているようにしてください。(露出時間、F値、焦点距離などで変わります。事前に試してみましょう。)以下で紹介する方法では、USNO-B Catalog を使っています。

    3. 画像と星図を合わせる

      • 撮影した画像と位置測定用の星図の方向や倍率を合わせます。上記ページでは、astrometry.net を使う方法を紹介しています。英語ですが、読んで、挑戦してみてください。

    4. 小惑星「エロス」の赤経、赤緯を決める

      • 星図と合わせた画像から「エロス」の赤経、赤緯を読み取ります。astrometry.net では、画像の傾きを修正し、ピクセル単位のx、y位置とその点の赤経赤緯の変換係数が追加されたfitsフォーマットの画像が得られます。これらから、「エロス」の位置を計算しても良いですし、上記ページでは、「ds9」というソフトウエア(Wndows、MacOSX、linux版あり)を使って、上記Fitsフォーマットの画像を読み込ませ、ビジュアル的に赤経、赤緯を表示させます。

    5. 小惑星「エロス」の赤経、赤緯を報告する

      • Eros and the solar parallax ページに報告フォームがありますので、記入して、送信してください。画像を公開してもよいという方は、別に、メールに添付して送信してください。(と書いてありますが、巨大になると思いますので、どこかにおいてURLを教える方が良いかもしれません。)送られた画像は、depository of pictures にて、公開するそうです。

以上です。

ご協力いただける方は、よろしくお願いいたします。(上記方法で、天体の位置測定の練習にもなると思います。)