Ras-ERK cascadeの定量モデル
研究背景
Ras-Raf-MEK-ERKシグナル伝達系のシミュレーション研究はこれまで数報報告されていました。しかし、同じシグナル伝達系を対象としているにもかかわらず、それらの研究の間で使われているパラメーターがバラバラで、どれがリアルなシミュレーション結果か当時分かりませんでした。
研究目的
Ras-Raf-MEK-ERKの4つの分子で構成される定量的なシミュレーションモデルを作ることを目的として研究を行いました。
結果
- Ras, Raf, MEK, ERKのHeLa細胞内の分子濃度を測定した。
- Rafが他の分子に比べて1-2桁濃度が低いのは驚いた。
- MEK, ERKの核内核外移行速度を蛍光タンパク質Dronpaを使って測定した。
- ERKの活性化の時間変化をERK FRETバイオセンサーMiu2を使って測定した。
- Ras-Raf結合の解離速度定数をDronpaを使って測定した。
- これらのパラメーターを基に、Kinetikitというフリーソフトを使ってシミュレーションモデルを構築し、シミュレーションした。
- このシミュレーション結果は、実験結果を完全には再現できないが、大まかな点においては十分細胞内のERKリン酸化速度を再現することができた。
コメント
この論文を契機として、私たちは定量的なシミュレーションモデルの構築研究を進めることになった、記念碑的な論文です。実験で測定したパラメーターは需要があるらしく、この論文はたくさん引用されています。