顎変形症の治療

(外科的矯正治療)

【不正咬合と顎変形症】

不正咬合には、歯のでこぼこ、出っ歯、受け口、八重歯、すきっ歯のほか上下顎(あご)の骨の不調和に起因しておこるものがあります。それらを正しく治す方法のひとつが矯正歯科治療です。

顎変形症は、大きな受け口や小さい顎、顎変形による顔の非対称などの上下顎の成長の不調和に、歯の位置の異常が加わることによって重度の咬み合わせの異常と顔面の変形を呈しており、顎の手術を用いた矯正歯科治療が必要となります。

咬み合わせが悪いということは、肉体的なものばかりでなく、しばしば精神的に負担となります。具体的な心身への影響としましては、むし歯・歯槽膿漏・外傷および歯根吸収の誘因となる、食物をよく咬むことが出来ず消化器官に負担がかかる、正しく発音しにくい、言葉がわかりづらいなどの障害が考えられます。また特に見た目を意識した場合は社交性が乏しくなる、容貌に一人悩むことも少なくありません。

【治療の目的】

顎変形症治療の主な目的は、上下の顎の不調和と咬み合わせを治すことです。外科的矯正治療を行なうことにより、咬み合せが良好となり食物がよく咬めるようになる、口もとや顔の形が改善されるといった効果が見込まれます。また、虫歯や歯槽膿漏(歯周病)の予防や上下顎骨の不正が改善されることにより補綴治療にも効果が見込まれます。

【治療方法と流れ】

【顎変形症治療】 顎変形症の治療(外科的矯正治療)は、顎切り手術前に行う術前矯正治療、顎切り手術後に行う術後矯正治療、良好な咬合が得られた後にそれを保つために行う保定治療に大きく分かれます。

現在、顎変形症に対する手術、矯正歯科治療には、健康保険が適用されます。

【チームアプローチ】 治療は、検査、診断後、治療計画を作成し、それにそって行われます。患者ご本人の気になるところ、治したいところをお聞かせいただき、検査資料を分析して治療方針を提示し、十分に納得いただいたうえで治療が開始されます。顎変形症の治療では、矯正歯科と口腔外科、形成外科など複数の診療科担当医が治療方針を検討するチームアプローチによって行われることも特徴です。

【術前矯正治療】 術前矯正治療では、顎切り手術の前に矯正歯科治療により歯を移動させ、上下顎それぞれの歯ならびを整え、手術をした時に上と下の歯がきちんと咬む状態にします。その後、顎を移動させる手術をします。術前矯正治療は数か月~2年以上を要します。

【顎外科手術】 一般的に術前矯正治療が終了した時点で顎矯正手術が行われます。手術時期は体の成長、顎の伸びが止まる時期以降で、個人差がありますが、概ね男性では17~19歳、女性では16~18歳以降になります。

【術後矯正治療】 手術が終わったあとも、手術後の顎の位置の変化に対応し、上下の歯を緊密に咬み合わせるため、通常1年程の術後矯正治療が必要となります。

【保定】 矯正歯科治療が終わり矯正装置をはずした後、きれいに治った歯ならびをその位置に落ち着かせる保定治療が必要となります。装置の使用期間は年齢、治療の経過・内容によっても違いますが、通常2~3年を必要とします。

【外科的矯正治療に伴う偶発症とその頻度】

口の中に入れた装置により歯肉の発赤や腫脹、粘膜の外傷性の炎症や潰瘍が出来ることがあります。また、口腔外に装着された装置により、皮膚荒れや発赤が出来ることがあります。

歯の移動を行うと、歯の根の部分が短くなる歯根吸収が起こることがあります。これは、根の先が丸くなるといった軽度のものを含めると、約7割に認められるとされますが、根の3分の1以上が吸収するといった重度なものは、0.5 %以下と報告されています(重度のものは非常に稀です。院長の患者さんで発症した例は今までのところございません。しかし、大学病院等で相談を受けたり、処置を行ったり対応したケースはあります)。

歯磨きが悪いと歯面の白濁やむし歯、歯ぐきの炎症(歯周病)が起こります。まれに装置をはずすときに歯の表面のエナメル質に剥離が認められることがあります。

治療にはこれら偶発症について熟知した医師が当たっており、偶発症が生じた際には速やかに対処を行ないます。偶発症により必要となった医療行為に対しての当院からの補償はございません。治療にはご本人の保険を適用させていただくことになりますのでご了承ください。(注:偶発症は通常通りに検査や治療が行なわれていた場合でも、ある一定の頻度で起こりえることであり、医療過誤との同意語ではございません)

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【外科的矯正治療の中止について】

外科的矯正治療を受けることを希望されても、矯正歯科医の判断により治療を中止したり、中断・延期したりする場合があります。具体的には、矯正装置の材料にアレルギーが認められ装置を使用できない場合、歯磨きがうまく出来ず口腔衛生状態が悪く治療開始後、むし歯、歯周病を誘発する恐れがあると判断した場合、全身に矯正歯科治療に影響を及ぼす疾患のある場合、前述の偶発症のため治療を継続するとかえってあなたの今後の健康を阻害する可能性がある場合などが考えられます。

治療が不成功となった場合、例えば歯が動かなかった場合や歯根が吸収し抜歯が必要となった場合は人工歯根(インプラント)、ブリッジ、義歯などの歯科治療が代替の治療法として考えられます。むし歯や歯の表面のエナメル質が剥離した場合、その歯の修復治療が必要となります。また、保定治療中後戻りが生じた場合、再度マルチブラケット装置による治療が必要となる場合があります。

外科的矯正治療が行われている途中で手術をしない選択をされた場合には、咬み合わせがかえって悪くなります(特に歯を抜歯して治療を行った場合、問題が大きくなります)。また、手術を行わない治療は自由診療となるため、その時点までの治療の健康保険負担分をお支払いいただくとともに、その後の歯科矯正治療は全額自己負担となります。

【顎関節症と顎変形症】

顎変形症を有する患者さんは顎関節症の罹患率が一般より高いと言われています。顎関節症は、現在でも不明な部分が多い病気です。そのため、検査・診断には全身疾患・不定愁訴との鑑別を含めた顎関節症に対する十分な理解をもって、治療および処置は特に慎重に行います。診断の結果、適切と判断される診療科へご紹介し連携をとりながら治療していく場合もあります。

また、術前後の矯正治療期間中だけでなく、外科手術に際しても特別な配慮が必要となります(手術時の骨移動量・手術方法・入院中の管理など)。

【補綴治療と顎変形症治療】

補綴治療(入れ歯、ブリッジ、インプラント等)と矯正歯科治療を適切に組み合わせることで補綴治療の治療結果が良くなります。補綴治療を行う病院と綿密に連携をとりながら円滑に治療をすすめていきます。顎変形症患者さんでも同様です。

※ 成人の方、入れ歯を使われている方も矯正治療によってより良く咬み合わせを整えられることが多々あります。矯正治療は子供の時だけの治療ではありません。年齢であきらめず歯科治療も含めご相談ください。

 

医院概要: 文京ながはま矯正歯科は2012年に設立、患者さんやご家族に信頼される矯正歯科治療を提供できるように日々努力を続ける矯正歯科専門クリニックです。

院長 長濱 浩平 歯学博士 / 日本矯正歯科学会認定医 東京医科歯科大学卒 所在地は、都営三田線白山駅1分白山下出口すぐ、東京メトロ南北線本駒込駅7分 東京都文京区白山1-33-8-218

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