顎関節症

❐顎関節症と咬み合わせ

顎関節症って??

一般に、顎(あご)の関節や筋肉の調子が悪くなる「顎関節症(がくかんせつしょう)」とは、顎関節(顎の動きを制御している顎の関節)や筋肉に痛みが出たり、顎がうまく機能しない状態になったりすることを指します。

女性に多いの??

顎関節に不具合を感じている人がどの程度いるのか、正確にはわかっていませんが、アメリカでは、1千万人以上が何らかの顎関節症状を持っているという統計的なデータが報告されているようです。また、こちら日本では、なんと、成人の約半数近くに顎関節に何らかの症状があると報告されています。この顎関節症の症状は一般的に男性よりも女性に多いといわれています。

症状や痛みはどんなの??

ほとんどの人の顎関節や筋肉周囲の痛みは、深刻な状態にはなりません。一般的に、顎関節や周囲の筋肉の症状は時折、あるいは一時的に発生しますが、人によっては周期的に症状がおこる場合もあります。痛みについては、何も治療を行わなくても消えることがあります。しかし、人によっては、症状がひどくなったり、症状が長期化したりすることもあります。

病気の原因、最良の治療法??

悪い咬み合わせや歯列の矯正(矯正歯科治療)が顎関節症を引き起こすと聞いたことはありますか?これらの説は、研究者の間ではまったく疑問視されています。悪い咬み合わせの人や矯正歯科治療中の人でも顎関節症に罹患しない人の方が当然多いのです。また、ストレスや歯ぎしりも原因としては不明確です。顎関節症の多くの人は歯ぎしりをしていませんし、いつも歯ぎしりをする人の多くは関節痛の症状が無かったりします。

顎の筋肉に痛みがある人は、歯ぎしりをすると痛みを生じるので、そうでない人よりも歯ぎしりをしない傾向にあることや、顎関節や筋肉に不具合を持った人の多くにストレスが認められることから、ストレスは顎関節症の原因と言うよりも、長期的な顎の痛みや機能不全の結果生じているのではないかと考えられています。

顎関節症の治療法は、できる限り保存的で可逆的治療(セルフケア、薬物療法、スプリント)を行うことを推奨しています。

【セルフケア】 セルフケアは多くの場合、顎関節と筋肉の不具合は一時的なもので、ほとんど悪化しないため、不快感を和らげるための単純な治療法です。患者さんがご自身で実践できる方法で、例えば、軟らかいものを食べる。 大きなあくびや大声等、極力顎を動かさない。 顎のストレッチや安静のための簡単な運動を医師から学ぶ。など

関節症について疑問があるのは患者さんだけではありません。治療を行っている医療者や顎関節症の研究者もまた、顎関節症の原因や顎関節症に対する最良の治療法は何かという答えを探求し続けています。安全で効果的な治療法が科学的に証明されるまでは、咬み合わせや顎を永久的に変えてしまうような処置をさけることが重要です。

顎関節症の進行

顎関節症が重度に進行した場合、顎の形にも変化が起こることがあります。左図は、顎関節部分の状態を精査する目的でCT撮影を行い、そのデータを3D立体構築した後、下顎の部分だけを取り出しました。下顎頭部(関節として動く部分)が変形し通常握りこぶしのように丸い部分が横から見ると山形にとがっているのがわかります。部分的に下顎頭が吸収変形を起こしています。この状態は、急激にはおこりません。痛みもあまり伴わない場合が多いようです。中学生以降、特になにもしていないにもかかわらず咬み合わせや歯並びが少しづつ悪くなってきたという患者さんの話を症状の兆候としてよく聞きます。