顎変形症治療の流れ

【初診相談】

ご相談の時間を十分にお取りするため当院へ予約のご連絡をお願いいたします。

当日、まずお口などの状態を見させていただきます。この時、状況をより正確に把握しご説明するために写真・レントゲンを撮影させていただく場合もございます。お話をおうかがいし、外科的矯正治療についての全体の流れや手術について、また矯正装置および大まかな治療期間・費用をご説明いたします。また、その際、心配ごと、疑問、希望や要望などを教えていただければできる限りおこたえいたします。

(おおよそ30分から1時間です)

顎変形症が疑われる場合は精密検査を行います。

顎変形症:骨格性の下顎前突

顎変形症 :骨格性の上顎前突、下顎後退

【精密検査】

顔や口の写真撮影および必要なレントゲン写真撮影を行います。歯型を採ります。さらに、顎機能検査(あごの動きや、筋肉のバランスを診査)を行う場合もございます(顎変形症の患者さんは必ず行います)。また、必要に応じて歯周ポケット測定や歯の汚れ検査、CT撮影(東京大学病院、東京医科歯科大学病院ほか、別途予約)を行います。

(おおよそ1時間です)

【診断】

検査の結果など資料をもとに、現在の状態と治療後の予想される結果をお話します。

また、使用する装置、予想される治療期間、治療にかかわる注意点などをご説明いたします。

(おおよそ30分から1時間です)

当院で診査・診断を行った後、手術を行う施設へ受診していただきます。

【歯を動かす治療(手術前矯正治療)】

当院にて術前矯正治療を行います。毎回の治療は、症例、症状、治療段階によって大きく異なります。

(おおよそ月に一度、30分から1時間程度です)

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【顎矯正手術(骨切り手術 )】

手術のため入院が必要です。また、術前検査が必要となるため入院前に手術を行う施設へ通院する必要があります。

◆ 病院で行うこと ◆

①自己血採血

手術時の出血の際に他人の血液を入れないようにするため、あらかじめご自身の血液を貯血します。基本的に下顎あるいは上顎骨単独の手術では800 ml、上下顎骨の手術では1200 ml貯血します。貯血は1回400 mlを原則とし、手術日からさかのぼって1週間に1度(毎週水曜日の午後)行います。貯血の2週間前から、採血によって生じる血基礎色素の減少に備えて、鉄剤とビタミン剤を内服していただきます。また、赤血球増加因子を注射する必要が生じる場合があります。事前に貧血がある場合や、体重が少ない場合(40 kg以下)には、一回に400 mlの貯血が出来ないため、採血のスケジュールを変更する場合があります。

②入院してから手術前日までの処置

咬み合わせの最終的な調整や、矯正装置の調整を行います。また、手術前の発音の状態、気道(咽頭部)の状態、顎骨の3次元的な形態を評価するために、言語検査、鼻咽腔ファイバー検査、CT検査などを行います。

③手術当日

手術室に行く前に、朝から血管確保のために点滴を行います。手術は経鼻挿管による全身麻酔で行われます。顎間固定された状態で麻酔から覚醒するため(表現要検討)、術後の呼吸管理が重要となります。術後は一般病室ではなく、外科系HCUに帰室し1~3日間呼吸管理を行います。特に上下顎骨切り術後の場合は、咽頭部の術後腫脹が著しくなる場合がありますので、挿管チューブは抜去せず、翌日まで留置し、気道を確保します。

④顎間固定

通常は、針金またはゴムを用い術後1週間の顎間固定を行います。この間は、口が開きませんので、鼻から胃まで挿入した胃管を通して経管栄養剤を摂取していただきます。

⑤術後の咬合管理

顎間固定除去後は、矯正歯科医とともに咬合の管理を行います。術後2週間程度で退院となります。

⑥骨固定用ミニプレートの除去

一般に骨が癒合するまでの期間は下顎骨で4~6週、上顎骨で6~8週とされています。したがって骨片固定期間はそれを上回る期間が必要です。骨を固定したミニプレートは通常、下顎では術後6ヶ月、上顎では術後1年を経過したところで抜去します。この場合も、入院、全身麻酔での手術が必要です。また、術後の顎間固定を解除した時点で、顎位のずれが確認された場合には、早期にプレートを除去する手術処置を行う場合があります。

(上記は1例で、施設・症例・症状によって方法、量や回数、期間など大きく異なります。)

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【歯を動かす治療(手術後矯正治療)】

当院にて術後矯正治療を行います。毎回の治療は、症例、症状によって大きく異なります。

(おおよそ月に一度、30分から1時間程度です)

術後矯正治療が終了し矯正装置を撤去した様子。(下顎前突症例)

術後矯正治療が終了し矯正装置を撤去した様子。(上顎前突症例)

顔面非対称(下顎骨の右方偏位)症例 初診時と保定開始時の比較です。

主訴:顔が曲がっている。かみ合わせがおかしい。

顔面非対称(骨格性下顎前突、下顎骨の右方変位)、反対咬合、叢生

マルチブラケット装置と上顎L1 下顎SSROによる外科的矯正治療

動的治療期間は2年6か月。保定期間は2年。

治療費は、健康保険の適応

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について

① 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。

② 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。

③ 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重 要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。

④ 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まります ので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと 隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。

⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がること があります。

⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。

⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。

⑧ 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。

⑨ 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあり ます。

⑩ 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。

⑪ 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。

⑫ 矯正装置を誤飲する可能性があります。

⑬ 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する 可能性があります。

⑭ 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。

⑮ 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物) などをやりなおす可能性があります。

⑯ あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。

⑰ 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えてい る骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる ことがあります。

⑱ 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。

【保定(後戻りを防ぐ治療)】

動的治療が終わって矯正装置を撤去した直後から1~2年は、正しく整えられた歯並びが乱れやすい(後戻りを起こしやすい)時期です。それを防ぎ、歯並びの維持管理を行います。

(年に3度程度の来院間隔です)

おおよそ2年間の管理の後、矯正歯科治療は終了となりますが、その後も定期的な口の中のチェック(健診)や専門的クリーニングを希望される場合はお申し付けください。

人生の中の大事な時間を矯正治療に充てられた患者さんの歯並びが、長く永く健康で美しく保たれることが私たちの願いです。

【紹介および連携医療施設】

当院では、他の医療機関と連携しチームを組んで顎矯正治療を行っております。

東京医科歯科大学歯学部附属病院(院長の出身校、当院からも近いうえ、御茶ノ水駅前のため通院も便利です。)

東京大学医学部附属病院 顎口腔外科・歯科矯正歯科(院長が勤務していた大学の附属病院です。当院からは徒歩圏です。)

東京医科大学病院(東大病院で数多く一緒に仕事をさせていただいた先輩が口腔外科の教授をされています。)

国立国際医療研究センター病院 歯科口腔外科

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