先端巨大症ほか

❐先端巨大症

〔定義〕

先端巨大症は、アクロメガリー(acromegaly)、末端肥大症とも呼ばれ成長ホルモン(growth hormone:GH)の分泌過剰により引き起こされる疾患です。

〔原因〕

脳下垂体から発生した下垂体腺腫(良性腫瘍)により成長ホルモンが慢性的に過剰分泌されるため、骨、筋、結合組織、内臓の過剰発育をきたします。若年者で発病した場合は、身長の伸びが促進され巨人症となります。一方、成人では、末端部のみに肥大症状が現れます。発症率は100万人対し4~6人と推察され、性差や人種差はありません。

〔症状〕

手足の肥大の他、高血圧、糖尿病、高脂血症、発汗過多、耐糖能低下、性機能低下、睡眠時無呼吸症候群を認めます。顎顔面領域では、額や顎の突出、鼻や口唇の肥大を呈し、下顎の過成長による反対咬合、歯間離開、巨大舌を認めます。

〔診断〕

成長ホルモンの分泌過剰(ブドウ糖負荷試験)、血中インシュリン様成長因子(IGF-I、ソマトメジンC)量について血液検査を行います。また、CTやMRIで下垂体腺腫の所見を確認します。単純X線写真の所見では、トルコ鞍の拡大や鞍底二重輪郭、前頭洞の突出、外後頭隆起の突出、下顎角の開大と下顎の突出を認め、手指では、末端骨の花キャベツ様肥大を呈します。

〔治療〕

原因となる下垂体腺腫を取り除き、血中GH濃度を正常に戻します。一般には、鼻腔から下垂体に到達する経蝶形骨洞到達法を内視鏡下で行うことが多いようです。また、開頭術、薬物療法、放射線治療が選択されることもあります。顎顔面骨格の異常および不正咬合については、血中GH濃度が正常値にコントロールされ、顎骨に変化がないことを確認してから外科的矯正治療を行います。

〔文献〕

Ardran GM, Kemp FH:The tongue and mouth in acromegaly. Clin Radiol, 34: 434-444, 1972.

高倉百々子, 須佐美隆史:口と歯の辞典, 第1版(高戸毅ら編集), pp219-221, 朝倉書店, 東京, 2008.

黒田敬之(監修):アトラス顎顔面矯正, pp30-35, 医歯薬出版, 東京, 2002.

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尖端巨大症患者の顔貌

顔貌は、額や下顎が大きく突出している。

頭部および手の単純Ⅹ線写真

A:骨格性下顎前突および前頭洞の突出がみられる。

B:トルコ鞍の二重底。

C:手指末節骨の花キャベツ様肥大。

❐軟骨無形成症

〔定義〕

軟骨無形成症(achondroplasia:ACH)は、軟骨内骨化の障害による短い四肢を特徴とする遺伝性疾患です。

〔原因〕

遺伝子座4p16.3に存在する繊維芽細胞増殖因子受容体3遺伝子(FGFR3)の変異による軟骨細胞の増殖抑制が原因とされています。遺伝様式は、常染色体優性遺伝、70~80%は新生突然変異です。発症率は、1/ 10000~1/35000で性差や人種差はありません。

〔症状〕

四肢短縮による低身長、手指・足趾は太く短縮、三尖手(第三指と第四指の間が広がる)を認めます。また、腰痛や関節痛、脊柱弯曲、肘・股関節の伸展制限、O脚、X脚を認め、骨盤の狭小により出産は帝王切開となることが多いようです。顎顔面領域では、前頭部の突出、中顔面部の陥凹を呈し、大後頭孔の狭窄による水頭症や麻痺などの神経症状、鼻咽腔の狭小により中耳炎、鼻炎を生じます。上顎骨の劣成長による反対咬合と開咬、叢生が特徴です。

〔治療〕

低身長に対する治療として、特に下肢では骨延長術が適応されます。学童期には成長ホルモン療法が行われる場合もあります。一方、神経圧迫症状や脊柱の変形には、整形外科的治療が行われます。顎顔面骨格の異常および不正咬合については、外科的矯正治療、矯正歯科治療が行われます。現在、本疾患は小児慢性特定疾患に指定され公的補助が受けられます。

〔文献〕

Gorlin RJ, Cohen MM,Jr, Hennekam RCM:Syndromes of the Head and Neck 4th Ed, pp197-202, Oxford University Press, New York, 2001.

辻美智子, 大山紀美栄:口と歯の辞典, 第1版(高戸毅ら編集), pp212-214, 朝倉書店, 東京, 2008.

外木秀文:新先天奇形症候群アトラス, 梶井正ら編, pp148-149, 南江堂, 東京, 1998.

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