早期介入と特別支援教育

早期介入(早期療育)とは何でしょうか?

早期介入とは、発達に遅れがみられる乳幼児へのサービスや支援のことを言います。これらの支援は、子どもたちの発達を促す助けになります。
早期介入サービスには以下のようなものが含まれます。
・発達評価
・理学療法(PT)、作業療法、言語療法
・支援技術
・親/家族のトレーニング
・レスパイトケア

理学療法では、粗大運動の問題(上肢や下肢、体幹の大きな筋肉の機能)を訓練します。

WAGR症候群の子どもたちにおいて、理学療法は、寝返り、自力で座る、座位から立位へ、這う、歩くなどの能力を制限しうる体幹の弱さに対処できます。セラピストは、下肢や上肢、体幹の筋力の弱さを評価し、運動や遊びを通してこれらの問題に対処するための戦略をたてます。

作業療法では、微細運動の遅れ(手指の動きの問題)に対応します。

WAGR症候群の子どもでは、作業療法士が感覚の問題と微細運動の遅れについて評価します。感覚統合とは、私たちの体が外部からの刺激を受け取り、分析し、それに反応する方法です。感覚統合の問題は、触覚、味覚、音、動き、および嗅覚に対する過敏または鈍麻として現れることがあります。子どもが感覚の処理に困難を抱えているとき、様々な経験に適切に反応するのに苦労するかもしれません、そして問題行動や微細・粗大運動や口腔の運動発達の遅れにつながることもあります。作業療法士は、子どもの感覚統合の問題を評価し、改善するための「感覚ダイエット」のプランを作ります。

微細運動の遅れとは、手や指を使って、年齢相応のレベルで物をつかんだり、操作したり、使ったりできない状況を指します。作業療法では遅れがあるかどうかを評価し、セラピストはこれらのスキルを向上させるためのプログラムを提供します。

言語療法では、子どもの発語と言語の発達を扱います。
WAGR症候群の子どもでは、言語療法士は飲食やコミュニケーションに関連する口腔運動機能を評価します。言語聴覚士は、音や最初の言葉を作り、子どもがどのように唇や舌を動かすか口の周りの触覚過敏に関連する、口腔の筋肉や感覚機能を評価します。言語療法を通して、子どもの摂食、コミュニケーション、および認知機能を向上させることができます。

特別支援教育とは何でしょうか?

特別支援教育は、個別のニーズに対応して、学齢期の子どもたちを教育する方法です。教室の環境調整、教育方法や教材の工夫によって、子どもの能力を最大眼に伸ばすことができます 。

WAGR症候群の
学齢期の子どもは、教育上のニーズに影響を与える複数の問題をかかえていることがあります。
・視覚障害
・学習障害
・知的障害
・聴覚情報処理障害
・発語・発話と言語の問題
・感覚統合障害
・聴覚障害
・行動障害または精神障害
・健康上の問題

WAGR症候群の子どもたちに最も適した教育環境は、個々のニーズによって異なります。またそれは、子どものニーズが変化することに応じて、年ごとに変わる可能性があります。
・普通学校の教室で障害のない仲間と一緒に学ぶ
・障害児のための個別の教室で学ぶ(支援学級や通級)
・特別支援学校で学ぶ

IWSA先生のためのアドバイスシートは、WAGR症候群の子どもがもっている可能性のある課題に対処するための情報を提供するために作られました。
先生のためのアドバイスシート

サインランゲージと代替コミュニケーション手段

WAGR症候群の子どもは言語発達が遅れることがよくあります。これは以下の一つ、あるいは全てが原因で生じるといわれています。
・感覚統合障害
・筋緊張と口と舌の協調運動障害
・知的障害

多くのWAGR症候群の子どもたちが話すことを学びよくしゃべる一方で、発語のない子どももいます。そのようなケースでは、サインランゲージ(手話)が非常に有効な場合もあります。代替コミュニケーション手段支援技術を使うことが、発語のない子供たちがコミュニケーションをとるのに有用なこともあります。

サインランゲージ
サインランゲージは、WAGR症候群の子どもたちの言語発達を促す有用な方法です。サインランゲージは以下のことに役立ちます;
・脳のコミュニケーションセンターの発達を促す
・子ども自身が自らの要求などを伝えられることによって、フラストレーションから生じる問題行動を減らすことができる。

サインランゲージは6-12か月の乳幼児に教え始めることが多いです。親や養育者は、いくつかの単純なサインから学びはじめ、言葉かけと同時にそれらのサインを使うのがよいでしょう。初めてのサインとして一般的なのは、「ミルク」「食べる」「もっと」そして「おしまい」です。言葉かけと同時にサインを使うのを忘れないでください。子どもたちがマネをし始める前には、何か月間も続けてサインを見ながら言葉を聞くことが必要なのです。

サインランゲージに関するたくさんのサイトやビデオがあります →こちら(英語のサイトです)

代替コミュニケーション
発語のないWAGR症候群の子どもたちは、コミュニケーションのための道具・システムや機器が役に立つでしょう。代替コミュニケーション手段の例は;
・シンボルボード
・絵カード
・コミュニケーションブック
・音声会話機器やコミュニケーション機器
・モバイル機器の代替コミュニケーションアプリ

言語聴覚士が、代替コミュニケーション機器の選択を手助けしてくれるでしょうし、それらの機器を効果的に使えるよう学ぶ手助けをしてくれるでしょう。

代替コミュニケーション手段は、子どもの独立心や社会スキル、社会的相互関係を向上させ、自身の考えや気持ち、個性を人と共有できるようにします。

このページは、International WAGR Syndrome Association(IWSA)の許可を得て、IWSAのweb siteの記事を翻訳・転載したものです。日本とアメリカには、早期療育と特別支援教育のシステムに大きな違いがあります。日本で得られるサービスやシステムについては他もご参照ください。
Translated by Madoka Hasegawa, October 2020