WAGR症候群における聴覚情報処理障害

Kelly Trout, BSN, RN Updated January, 2019

WAGR症候群の患者さんの90%以上に、ある程度の聴覚情報処理障害(以下APD)や中枢性聴覚情報処理障害(CAPD)があると言われています

APDのために、行動の問題や言葉の遅れ、学習障害、学校や社会生活での問題を生じる場合があります

聴覚情報処理障害とは何でしょうか?
聴覚情報処理障害の人々は、耳と脳の統合が完全にはうまくいっていないために、聞こえたことを他の人がするようには処理できません。APDの人の聴力は通常正常ですが、音、とりわけ会話を脳が認識するのを何かが邪魔をするのです。APDの人々は、聞き取るのに十分大きくはっきりしていたとしても、言葉の中の音を認識できないことがよくあります。これは、他の人が話していたり、テレビや音楽がなっているような背景で音がする状況で問題になります。

聴覚情報処理障害の症状とは何でしょうか?
APDの症状は軽度から重度まであり、様々なものがあります。APDの人は:・騒がしい環境で混乱する・静かな場所のほうがうまくふるまえる・簡単であろうと複雑であろうと、指示に従うのが難しい・読む、綴る、書く、その他話し言葉が苦手・算数の文章題が苦手・整理整頓ができず、忘れやすい・会話についていくのが難しい

聴覚情報処理障害はどのように診断されるでしょうか?
上に記載した症状の多くは、学習障害や不安障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、聴覚障害など他の問題に付随しえます。あなたの子どもが、聞いたり人が話しているのを理解するのに問題がありそうだと思うなら、聴覚士(聴覚の専門家)に検査してもらいましょう。聴覚士だけが聴覚情報処理障害を診断できます。APDを調べるためになされる検査のほとんどは、子どもが7~8歳になる必要があり、そのため多くの場合、その年齢以上にならないと診断されません。もし幼い子どもにAPDがありそうだと思うなら、助けになることはたくさんあります。

聴覚情報処理障害はどのように治療されますか?
APDに治療法はありませんが、子どもたちが音に気づいたり、コミュニケーションスキルを向上させるのを助けるために親や先生ができるいくつかの方法があります。その方法には以下に記載したテクニックと共に、言語療法やFrequency Modulation(FM)システムのような聴覚支援機器も含みます。

方法:APDの人の助けになる最も効果的なテクニックは、最も単純なことでもあります: 

  • 周りの音に注意深くなりましょう:家の中、外、お店で…

  • あなたにとってはちょっとした雑音に過ぎないテレビの音、ラジオの音、周りの人の話し声であっても、その音のせいでお子さんは、あなたが言っていることを聞き取って理解するのが難しくなってしまっている可能性があるということを知りましょう

  • あなたのお子さんに話しかけるときには:
    ・近づいてはなしかけましょう
    ・子どもにあなたを注視させましょう
    ・テレビや音楽、他にはなしている人の声など部屋の他の音は、可能な限り消すか小さくしましょう。
    ・1度に言うことは1つだけにしましょう:例えば「帽子と靴を脱いで、ここに持ってきて」というのではなく、「帽子を脱いで」というように。
    ・指示を繰り返させましょう:「私の言ったことが聞こえた?と聞くのではなく、「私はなんて言った?」や「あなたは何をするつもり?」と尋ねましょう

  • 教室では:
    ・優先席を使いましょう:席は、前/真ん中あたりがいいでしょう
    ・教室内の雑音を減らしましょう:例えば、椅子の足にテニスボールをはめて、椅子を動かしても音がならないようにしたり、水槽やハムスター用の回し車をなくすか、そのようなものから遠い場所の席にしてもらいましょう

Frequency Modulation Systems(FM):
Frequency Modulation Systems(FM)は、子どもが話している子をを理解できるように、背景の音を減らして話者の声を大きくする聴覚支援機器です。FMシステムは、教室で特に助けになります。教師がマイクロフォンとトランスミッターをを装着すると、子どもの耳や体のどこかに装着したワイヤレスレシーバーにシグナルが送られます。FMシステムを有効活用するのに重要なことは、子どもが話したり聞いたりするスキルを向上させるのを助ける言語聴覚士との訓練を続けることです。

*Auditory Function in WAGR Syndrome and Isolated Aniridia. Kokx M, Zalewski CK, King KA, Brady SM, Hanish AE, Hicks MD, Huey AE, Fuhr SR, Danley KM, Brewer CC, Han JC. 40th Annual Scientific and Technology Conference of the American Auditory Society in Scottsdale, AZ, March 2013. https://aas.memberclicks.net/assets/docs/aas_2013_poster_abstracts.pdf?mcid_token=36108aed-843a-4 77d-a9b9-c9469c6b1707

このページは、International WAGR Syndrome Association(IWSA)の許可を得て、IWSAのweb siteの記事を翻訳・転載したものです
Translated by Madoka Hasegawa, October 2020