宗教のデザイン
左右対称と左右不対称

お話:藤原修栄(本法寺住職)2022年5月23日

東京文京区の本法寺と申します。私の第1回目のお話しとして、今回は宗教全般のデザインの中から左右対称と左右不対称のお話を致します。
1番目、左右対称のお話しから始めます。例として宗教建築であります教会・神社・寺院・町のお稲荷さん、お地蔵さんの祠(ほこら)などが縦の中心線を軸として左右が鏡にうちした如く逆転し、三次元的に配されている姿です。
国会議事堂や日銀本店の建物も左右対称いわゆるシンメトリーであり、古代の祭政一致の祭(まつ)り事の場としての形を残しています。
美的調和のあるフォーマル儀礼的・公式的な建築物の意味をなし、あらたまったフンイキをかもしだしています。
また細部の文様に至るまで意匠にこだわり左右に対応させます。これは衣食住の生活の為の建築物とは異なっています。

次に宗教のデザインの二番目、左右不対称のお話しを致します。
例として神社の「やしろ」の前に置かれる「阿吽(あうん)」の狛犬(こまいぬ)。寺院の本堂や神社に彫刻される昇り龍、降り龍。奈良東大寺南大門に有る阿吽の仁王像、正しくは金剛力士像。左と右が対象の姿をしていながら一部が正反対の形をなす対の造形物。
建築関係ではありませんが身近かな物で、左右不対称・対(つい)のデザインは祝儀・不祝儀の袋であります。水引が左右で色を変えて飾られています。
共に宗教色の有る行事の金銭袋で赤白、黒白、金銀、黄色白の様に右が日向(ひなた)の濃い色、左が影の淡(あわ)い色という決まり事があります。

ここまでのお話しで私の結論を申し上げます。左右対称のデザインも左右不対称で対(つい)のデザインも共に礼儀作法を必要とする、あらたまった領域。尊く大切な場所を意味し又、不対称の対のデザインは神・佛・死者に荘厳をととのえる威儀物としての存在と同時に、これら拝礼の対称と自分の違いを対比させる説明的荘厳と理解しております。

本日のお話しは以上です。