本当の仲間

お話 西尾朋央(福成寺住職) 2023年10月10日

こんにちは。今回担当いたします福成寺の西尾朋央と申します。宜しくお願いいたします。

今年は野球のWBCに始まり、バスケットボールやラグビー等、多くの日本代表が活躍しております。スポーツを観戦していますと、共に助け合い、戦う姿に感動する人も多いのではないでしょうか。そこで「本当の仲間」ということについて、今回も子どもたちの前でお話したことをご紹介したいと思います。

 

皆さん、「EU」って聞いたことありますか?以前イギリスという国が「EU」から離脱しましたというニュースがやっていました。「EU」とは一言でいうと「ヨーロッパの国々が集まって出来た組織体」だそうです。何故その様な集まりが出来たのか。それは、昔起こった数々の戦争の反省からなのだそうです。戦争は国と国の争いです。それによって沢山の尊い命が失われていきました。そこで、変わらず国は存在しますが、人や物やお金が自由に通れる様にして、国と国の「境」を少しでも軽くし、争い事を無くしていきましょうという願いから、「EU」という集まりが始まったのだそうです。

私たちは日本に生まれました。オリンピックが行われると、やっぱり日本人を応援してしまいますよね。国だけではなく、学校でも家族でも、私たちは「仲間」を作り、「仲間」と共に助けて合って生きています。人間は「一人」では生きていけません。

ですから、国や学校や家族などの「仲間」は無くてはならない大切なものになります。しかし一方で、私たちは「仲間」を作ると同時に「仲間はずれ」を作ってしまうのではないでしょうか。仲の良い人たちの輪が出来ると、同時にそうではない人をその輪に入れないようにしていませんか。「〇〇ちゃんは他のグループだからこっちに来ちゃだめ~」といったことありませんか?

お釈迦様は「本当の仲間」とは何かという事を「天上天下唯我独尊」というお言葉で教えてくださいました。これは「天の上にも下にも、私はただ一人なのだから、尊い命なのです」ということです。でも、これは「私が一番尊いんだ!」とか、「どうせ私は一人ぼっち」という意味ではありません。私が一人にして尊いという事は、私の目の前にいるあなたも一人にして尊い。あの人もこの人も、皆な一人にして尊いということです。そこには何の「境」もありません。誰一人欠ける事なく、皆な尊い「仲間」という事です。

 

以上が子どもたちとしたお話です。人と人とが協力し、共に助け合って生きていくことは大切です。けれども、そこには「全ての人を認め合う」ということがなければ、本当の意味での「仲間」にはならないのではないでしょうか。オリンピックも国の「境」を越えて、日本人はもちろん、すべての国の人たちを応援したいものです。