2023/9/14 pixivからの再掲。
めぐるちゃんとヨウくんの中身が入れ替わる話。
「あらら、また不具合でアバターが入れ替わっちゃったみたいだね〜しばらくそのままでいてくれる?」
「えっ」
またまた訪れた、アニメとかでよくある展開。
ヨウくんと私の見た目が入れ替わっちゃったの!
これで2回目なんだよ〜、この世界ではよくあることなのかな?
「…はぁ」
ヨウくんは小さく息をつく。
この前はなんとかなったからよかったけど、今回は一つ自縄ではいかなさそう。
なぜなら、
「どうしよ〜!?これから撮影なのに〜!!!」
この後すぐに断れない撮影があるからだ!
「え、こんな大声出せたんだ、俺…じゃなくて!とにかく、いつも通りやるしかない」
ヨウくんはいつも通り冷静で、私の声からは信じられないほどの低い音が出てる。
「そうだね〜早く直るように急いで調べるけど、がんばってね。2人ならなんとかなりそうだけど」
「は〜い」
「…やれやれ」
きっとなんとかなるよね、とヨウくん(見た目は私だけど)と目を合わせた。
なんだか鏡みたい。
………
飛び交うドローン達に囲まれながら、私たちはポーズを決める。
「じゃあ次、めぐるちゃんだけで撮ってみようか!」
「は〜い!」
そう言われて、私(ヨウくんの体)は撮影場からはける。
スタッフさんからいろんな指示をされて、違和感なくこなしていくヨウくん。
よく私のこと見てるんだなぁ…。さすがというか、なんというか。
じむしょで低い声を出していた私が、いつものような明るい声を発している。
私の声や体の扱いが想像以上に上手くてびっくり。だって女の子歩きもバッチリなんだもん!前世は女の子だったんじゃないの?って思わず言いそうになって、グッと飲み込む。
そういえば、ヨウくんっぽい仕草って、なんだろう?
次は私が呼ばれるんだ。そのことを意識した瞬間、私の中で違和感が走り出した。
腕を組むとか、動きにいつも以上にメリハリを出すとか…?
そんなことを考えても、なんだかしっくりこない。
あれ?私って、ヨウくんのこと、全然見てない?
私は、ここでダンスしたり、みんなと笑って、美味しいものを食べて、時々おふざけとか、SNSで話題になってることを真似して遊んだり…。
私、自分や目の前のことでいっぱいいっぱいになって、ヨウくんとか、周りのこと、よく見てないかも。
ドクドクドク。周りの声をかき消すように、心臓の音が響く。
私の心のサイレンのように、鳴り止まない。
「めぐる…?」
呼ばれても動かないからヨウくんが声をかけてくれたみたい。
「あっ、ごめん…気づかなかったよ!今行くね」
私の中のモヤモヤを隠すように、にっこりと笑う。
「大丈夫、めぐるならやれる。」
「う、うん!」
ヨウくんは恥ずかしそうに笑って私の肩を叩いた。
やっぱりヨウくんはかっこいいなぁ。
なら、私の思うカッコイイを表現すればいいんだ!
「ありがとう、ヨウくん」
この後、「めぐるー!とっておきのスマイルちょうだい!」と言われて、私(ヨウくんの体)がとびっきりのカワボと笑顔を大公開してヨウくんにめちゃくちゃ怒られ、女の子たちには黄色い歓声と共に「助かった…!」と賞賛されるのは、また別のお話。