高校時代の同窓会に参加した。
大学生なのにもう既に高校時代の同窓会とか、馬鹿げてるだろ。
まあ、そんなことを言っている俺も、とある人物を探して来てしまったわけだ。
「始諳」
「あれ?天田さん。来てたんだね!」
俺の同級生だった、黒河始諳。軽音部や吹奏楽部に所属してないが、ギターが尋常ではないレベルで上手かったヤツだ。
始諳とは中高と一緒で、俺が軽音でギターをやっていること言うこともあってなんやかんや話す機会が多かった。
「よお。久しぶりだな。」
俺は始諳の隣に立ち、にっこりと笑う。
「本当に久しぶりだね。なんやかんや連絡先も交換してなかったから」
「そうだな…なあ、覚えてるか?お前が合唱コンの個人発表でギター弾いてたこと」
「あはは…それはもう。」
俺たちの高校には、合唱コンと併せて音楽をやっているヤツの個人発表が行われていた。
それも、ウチの高校は吹奏楽部がそこそこ有名なところで、音楽に力を入れていたから、完全オーディション性で、先生に認められたやつしか演奏することが出来なかった。
多くのやつが吹奏楽部か教室に通っていて、尚且つウケのいいクラシックばっかり演奏していた。それでも落ちるヤツはいた。その中でイレギュラーだと影で話題になったのが…始諳だった。
「なんだっけか、始諳が演奏してた…そら…」
「ああ、天泣だね」
そう、コイツは"天泣"とかいうゲームの曲でオーディションを勝ち抜いた、どこにも所属していない謎多きギター奏者。
実際、彼の実力はオーディションをぶち抜いてしまうほどのものだった事は今でも忘れられない。
「なんであの曲にしたんだ?もっと色んなのあるだろ?」
「せっかくなら、僕の好きな物で勝負したかったんだ。」
いつもは影が薄くて、いわゆる陰キャの雰囲気を醸し出している彼が、ギターを持った途端何かが変わった。
その鋭い目や姿勢、そして音の一振一振が重く、その一瞬で俺は気圧されてしまった。
中学3年の春頃に彼のギターを聞いた時は、本当に趣味の範囲で、まだまだ俺と同じくらいだったのに。高校2年に上がった途端にアイツは突然ギターにとことんのめり込み始めた。
それが不思議で仕方なかったのだ。それも、部活などに入らず、独学で。
「ほんとお前、変わったよなあ」
「そうかな?何も変わってない気がするけどね。」
そうやって笑う始諳が眩しかった。
彼の底知れぬ情熱や意思に触れてしまうのが怖い。知りたいのに、知ってしまったら全てそのまま飲み込まれそうな気がした。
天田 時雨
中高と始諳と同じ学校だった。
6年間軽音部でギターボーカルを務めていた。
同じくギターをやっていた好で始諳と関わりを待つ。
陰キャのような雰囲気の彼を少し舐めていたら、高校2年に上がった瞬間に明るく、ギターに対する熱意が異常化したのをよく覚えている。
彼が合唱コンで披露した天泣に度肝を抜かれ、彼を心の中で尊敬し始める。