EPOLISからPinkyCrushへ移動する間、準備をしながらおしゃべりする兄妹のはなし。
時間が経つのはあっという間で。
エポリスラジオも終わり、僕たちは新しいDJ先へと向かうことになった。
「はやいねぇ、10ヶ月?ぐらいだっけ...全然実感ないや!」
流諳が荷物の整理をしながら笑う。
「そうだね…でも色々あって楽しかったよ。本当に時間の進みが早すぎる…」
エポリスに初めて来た時は、その夜景の綺麗さに大興奮したり、昔からラジオを聞いてきたから、憧れのラジオDJについて色々知れてワクワクしたっけ。
「…仕方ないとはいえ、別れはいつも悲しいね。色々経験してるつもりとはいえ、こればかりは慣れないし、慣れちゃいけないって思ってる自分もいるよ。」
エポリスで撮ったみんなとの写真。
僕と流諳とリドさんと、そこで知り合ったたくさんの友達と最後にパーティをした時のもの。
ここでDJを始めてから、たくさんの人と出会って、友達になって。
別の場所に行ってもみんなとは会えるけど、ここで見れた景色、出会った音楽。そして思い出は、ここにしかないから。
今までの自分からは想像もできないほど、たくさんの思い出が頭の中に浮かんで、「ああ、そんな場所から離れないといけないんだ」という思いが強くなる。
「そうだね。私、お兄ちゃんのそういう所が好きなんだ〜」
「唐突な告白だ…」
そう言って流諳は僕の方を見てにっこりと笑う。
「でも次のところも楽しみだよ!もちろん!なんだって、すっごく大きいイベント会場?なんだっけ?」
そう言って荷物から次の場所のパンフレットを渡してくれた。
次の場所、ピンキークラッシュは、色んなエンターテインメントが集まった大規模なイベントらしい。
エポリスのクールな黄色とは違い、ポップでエネルギッシュなピンクがあしらわれたパンフレットには、色んなブースの説明がズラっと並んでいる。
「すごいな。コスプレや色んなジャンルの展示もあるんだ…だからリドさんすごく張り切ってたんだね」
僕と流諳の友達、リドさんはコスプレイヤーで、この場所の告知がされた時からすごく忙しそうにしていた。きっとコスプレブースに参加するために準備をしているんだろう。
「ねー、色んなことが出来そうで楽しみだね!もちろん、DJも!」
「ふふ、そうだね。どんな音楽に出会えるか楽しみだよ」
そんな未来の話をして、僕たちは笑う。
少し悲しい気持ちを残しながら、また進んでいく。
出会いがあって別れがある。それはこの世界では避けられない。
でも、その中でかけがえのないものに出会うために、それを大切にするために。
そのためにたくさんの気持ちや思い出を抱えて生きているのかもしれない。
今は、自分の思う「楽しい」がある方向へ、みんなと歩いていきたいんだ。