「なんやかんやシアンのギターやってる所見るの初めてじゃないか?」
いつもゲーセンに集まる彼らは、今日はとある大学のホールに足を運んでいた。
「そうやねぇ。とってもたのしみやんな〜」
「他にも色んなブースがあって面白そうですね!」
………
シアンのメインステージが始まる前は、他のバンドのアシストでギターを弾いていた。
「お、いるいる」
「シアンくん、相変わらずオシャレやなあ〜」
「すっごい楽しそう!シアンさんのDJを思い出しますね」
DJやIIDXをしている時に見せる、キラキラとした笑顔と、音に乗せて揺れる体は、まさに彼そのものだった。
………
バンドの演奏が終わり、ステージに残されたのはシアンだけだった。
「いよいよ、シアンのターンか」
彼はステージの真ん中にたち、ゆっくりと手を動かす。
張り詰めるような感覚と、同時に響き渡る、強く燃えるようなギターの音。
ボーカルもなく、彼の音だけに意識が集まっていた。
「…シアン、いい顔だ」
「わあ…!かっこええなあ…!」
「ほんと、かっこいい…!」
いつもの姿からは想像もできないような、張り詰めていて、真剣な表情。
これは彼が"向き合う"ための音楽なのだと、3人は強く感じた。
その中でも微かに揺れる体と、リズムを取っている足で、彼が本当に全力で楽しんでもいる。
本当に彼らしく、黒河始諳─CYANOSにしか引き出せない音だ。
やがて曲が終わり拍手の中、ステージの彼は口を開いた。
「初めまして、CYANOSです。"愛"のあるギターをモットーにやっています。今日はよろしくお願いします」
「それでは次の曲、聴いてください─」