霧の森に宿る新種のスグリ
日本全国でスグリ科の着生植物・ヤシャビシャクの調査を行うなかで、富士山の雲霧林で出会った個体がこれまで知られていない未知の種であることに気付き、新種・フガクヤシャビシャクとして記載しました。
・種の特徴:樹高60cmまで生長する落葉低木。ヤシャビシャクに近い種ですが、萼片が赤みを帯びる、長枝にトゲを生じる、紙質で薄い葉をつける、葉の切れ込みが深いなどの点で異なります。また、遺伝分析によってヤシャビシャクとは独立の別種であることが確認できたため、2022年に新種として記載しました。
・生育環境:年降水量3000mを超える湿潤な冷温帯域に分布します。苔むした落葉樹の樹幹に着生することが多いです。
・分布域:現在のところ静岡・山梨県と、岐阜・長野県境の恵那山から知られています。
・タイプ産地:富士山南麓のブナ林。富士山では降水量の少ない北麓にヤシャビシャクが分布し、より冷涼湿潤な気候を好む本種と棲み分けています。
・記載論文:doi: 10.18942/apg.202109 ・恵那山からの新産地報告:doi: 10.18942/chiribunrui.0712-18