ゲノム情報で探る植物の種分化
生物の種分化では、集団のなかに隔離障壁が生じることで遺伝的交流が起こらなくなり、やがて独立した種へと進化してきます。種分化の進行に伴い、集団の遺伝的組成は徐々に変化していきますが、その速度はゲノム全体で一様ではなく、「速い場所」と「遅い場所」がモザイク状にあらわれます。
興味深いのは、ゲノムの特定領域で急速に分化が進む現象です。こうした急速なゲノム分化を生じさせる要因の代表が分岐選択で、とくに集団間の遺伝子流動が維持された状態で適応遺伝子に選択が及ぶと、その遺伝子の周辺だけ極端にゲノムが分化した特有のパターン(ゲノム分化の島)を生じます。よって、広大なゲノムの海から「ゲノム分化の島」を探し出すことが、種分化初期の環境適応、しいては生殖隔離に関与した遺伝子を見つける手掛かりとなります。
私たちは、自然選択が関わる野生植物の種分化、とくに生態的種分化や平行種分化などの「不自然な自然現象」に着目し、集団ゲノムデータから過去に起きた種分化の過程を復元することを目指しています。