植物多様性を次世代に継ぐために
日本の野生植物の約4分の1が絶滅の危機に瀕しています。その背景には,気候変動,開発や土地利用の変化,ニホンジカなどによる食害,盗掘など,人間活動による直接的・間接的な影響があります。
絶滅危惧植物の中には,はるか昔から現在の地域に生育し,長い進化の歴史の中で環境に適応しながら独自の遺伝的多様性を築いてきた種が数多く含まれています。しかし,こうしたかけがえのない進化の歴史や遺伝的資源が,わずかな時間のうちに失われようとしています。
一度失われた種や遺伝的多様性を取り戻すことは容易ではありません。そのため,絶滅に至る前に個体群を維持・回復し,将来の環境変化に対応できる健全な遺伝的多様性を次世代へ継承することが重要です。
私たちは,絶滅危惧植物の持続的な保全に向けて,集団ゲノミクスなどの手法を用いた遺伝的多様性の評価,個体群の歴史や進化的ポテンシャルの解明,さらには野生復帰や域外保全を含む効果的な保全手法の開発に取り組んでいます。科学的根拠に基づいた保全戦略を構築することで,植物が持つ多様な生命の歴史を未来へつなぐことを目指しています。