概要
LV(ロービジョン)とはWHO(世界保健機関)では矯正眼鏡等を装用しても「視力が0.05以上0.3以下」の状態としていますが、これに関しても様々な意見があります。また、両眼ともに光覚を失った者、あるいは光覚弁である者(視覚障害者の11%程度です)はLVのカテゴリーに含まれないとする意見もあります。
LV当事者の方においても視力低下、視野狭窄の程度は様々です。一般的には見えにくさから日常生活や学業、就労に困難をきたす場合をLVと考えて対応していく事が必要と考えます。
※目の見えにくさ:高度な視力障害、視野狭窄、まぶしさ、夜盲
原因
成人中途失明の原因は第1位緑内障、第2位糖尿病性網膜症、第3位加齢性黄斑変性症で先天性疾患由来の第1位は網膜色素変性症であります。
年代別、視覚障害となる原因疾患
新生児、幼児期:先天白内障、先天緑内障、高度屈折異常、視神経萎縮・低形成、網膜芽細胞腫、未熟児網膜症、第一次硝子体過形成遺残等
小児期〜思春期:黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、網膜色素変性症、スターガルト病、X染色体連鎖性網膜分離症等
壮年期:糖尿病性網膜症、病的近視、急性視神経炎、ぶどう膜炎等
壮年期〜老年期:緑内障、加齢性黄斑変性症、網膜血管障害(動脈、静脈閉塞)等
疾患について
緑内障
緑内障とは眼圧によって視神経が障害され(ダメージを受けて)視野狭窄が徐々に進行し末期では視力も障害され失明に至る可能性のある疾患です。
40才以上の20人に1人が罹患しているといわれています。多くのケースでは視野狭窄は徐々に進行し、視力も維持されるため自覚症状が出現した時点ではかなり進行しています。(特に片眼の緑内障では健眼でものがよく見えるためにより自覚症状に気づきません)しかし、中心視力が良好であっても周辺が見にくいため、物にぶつかったり、読書がしにくかったりします。症状の無い方でも人間ドック、眼科検診(年1度程度)を受け、早期発見をすることが大切です。
糖尿病性網膜症(DR:Diabetic Retinopathy)
DRは網膜細小血管の障害により毛細血管瘤、網膜点状、斑状出血、硬性白斑を生じます。さらに進行すると、網膜血管の閉塞から網膜内広範囲の虚血、新生血管の発生、黄斑浮腫などにより、視力が障害されます。DRを放置した場合、いずれ新生血管緑内障、増殖性網膜剥離等を生じ失明するリスクがあります。内科医との連携も大切で経過観察やケースによっては適切な治療が必要となります。
網膜色素変性症
少しずつ視野狭窄を生じますが中心視野は最後まで保たれるため急激な視力低下はおこりません。色素変性症は様々な遺伝子の異常により生じ、発症年令や進行速度も様々です。通常は両眼性です。
緑内障の進行判定にも使用される中心視野感度の低下傾向(MDスコープ)を活用することで将来の視機能をある程度予測できるため進行の早いケースでは若年期からロービジョンエイド(低視力者用補助具)の使用を習得しておくことも大切です。
加齢性黄斑変性症(AMD or ARMD Age-related Macular Degeneration)
黄斑とは物を見るときの中心となる部分です。黄斑が障害されると周辺は見えますが真に見ようとする部分が見えなくなる(見えにくくなる)ため、文字等が読むことができず著しく視力が低下します。AMDには大別すると滲出型加齢性黄斑変性症と萎縮型黄斑変性症があります。
原因としては老化、酸化ストレス、喫煙など色々あります。
治療方法には光線力学療法や抗VEGF(血管内皮増殖因子)剤の硝子体内注射等があります。
検査
1. 視力検査(遠見、近見視力)
2. 眼圧検査
3. グレア検査:中心透光体に存在する混濁、角膜混濁(白内障など)により光が散乱して生じる視機能低下を自覚的に評価します
4. 視野検査:動的視野検査、静的視野検査
5. 色覚検査
6. 眼底検査、蛍光眼底撮影
7. 光干渉断層計(OCT)
8. 血液検査
9. 電気生理学的検査:VEP(視覚誘発電位)、ERG(網膜電位図)、EOG(眼球電位図)等
10. CT、MR
11. 遺伝子検査等
など予想される原因疾患に対し様々な検査を組み合わせて診断を行なっていきます。
治療および対策
LVに至る原因疾患の中には残念ながら現在のところ有効な治療が確立されていないものもあります。しかしながら前述したように早期発見、早期治療によりLV
を防止することが可能な疾患、ケースもあります。視覚に少しでも異常を自覚された場合、速やかに眼科を受診してください。また、現段階では治療が困難な疾患についても今後遺伝子治療、再生医療等の発展により多くの疾患が克服されていくことと考えます。実際この10年間を振り返っても科学分野はもとより医療分野も大きく発展前進しています。希望の光はすぐ先にあるかもしれません。