ここでは、見えにくさのある子どもたちが、より便利に楽しく学習するための用具やアイデアを紹介します。
平成20年の教科書バリアフリー法成立により、教科書発行者は拡大教科書の発行が努力義務になりました。
拡大教科書は、弱視の児童生徒が読みやすいようにゴシック体や丸ゴシック体の文字が使われています。また、字の大きさ(ポイント数)も、18,22,26,30,32など複数作られています。※教科書会社により、採用する大きさが違います。
次年度の学習で拡大教科書を使うためには、学校を通して教育委員会に報告する必要があります。多くの場合、一学期の終わり頃が締切です。
拡大教科書を選ぶには、読みやすいポイント数を調べたり、教科書会社で発行しているポイント数を確かめたり、必要な教科を選んだりする必要があります。県内であれば、沼津・静岡・浜松視覚特別支援学校に相談するとよいでしょう。
より詳しいことは一般社団法人教科書協会のホームページを参考にしてください。ホームページへはこちらから
PDF拡大教科書はiPadで利用できるデジタル教科書です。慶応技術大学の中野泰志研修室が事務局を務め、提供しています。日本中の多くの弱視児童生徒が利用しています。
PDF拡大教科書を利用するためにはiPadのアプリ『UDブラウザ(無料)』が必要です。 ※AndroidやChromeBookでは利用できません。
PDF拡大教科書は教科書の画面の拡大や、文字だけを見やすく表示するリフロー機能などが利用できます。
PDF拡大教科書を利用するためには、事務局(中野泰志研修室)への登録が必要です。
詳しくはUDブラウザホームページを御覧ください。
日本ノート株式会社が販売する合理的配慮のためのノートシリーズです。太く大きな枠はとても見やすく、弱視のお子さんに使ってもらいたい学用品の1つです。
鉛筆はB2・B4・B6など、色の濃いものを選びましょう。一般によく使われているHBでは薄すぎて見えにくいことがあります。
鉛筆に比べてコントラストがよく、弱視のお子さんでも見えやすいので人気です。油性と水性があり、色々なメーカーが販売しているので、用途に応じて使いやすく見やすいものを見つけてください。
サクラクレパス(フェルトペン)
ぺんてる(サインペン)
三菱鉛筆(サインペン)
寺西科学(ラッションペン) など
小学校低学年から、算数などで必要になります。目盛りが細かくて読みにくいため、弱視のお子さんがつまづきやすい学習の一つです。
比較的見やすいものは、黒字に白い文字で表記してある定規です。一般の文房具店にもありますし、Amazonなどの通販でも購入することができます。材質はプラスチック製とアルミ製があります。プラスチックの方が使い心地がソフトですが、カッターなどを使う場合には、アルミは定規を削ってしまう心配が少なく安心です。
弱視のお子さんにとって、教室の座席位置は重要な問題です。位置の決定には、主に「視力」「左右の視力差」「視野」「明るさの違い」の4つの条件が関わります。
1 視力 [席の前後位置]
視力によって、教室前面の黒板やディスプレイなどが見える距離が違います。多くの弱視児は、席を最前列にしていますが、単眼鏡を利用するなどして、少し後方にする場合もあります。
2 左右の視力差 [教室の左右どちら側か]
視力の左右差が大きい場合、基本的によく見える眼が教室の内側になる方が負担が少いようです。右眼の視力が良ければ教室の左側、左眼の視力が良ければ教室の右側にすると良いでしょう。
3 視野 [見える広さ]
視野が狭いと、最前面では黒板に近すぎて全体が見えない場合があります。視力とのかかわりもありますから前後左右いろいろな位置で試して、もっとも負担の少ない席を選びましょう。
4 明るさの問題
羞明(しゅうめい)がありまぶしさが苦手な場合は、窓際は避けることが多いようです。逆に暗さが苦手な場合は廊下側は暗すぎることがあります。次項「明るさの調整」のような方法も可能です。
前述のように、教室では席の位置による明るさの違いがありますが、遮光カーテンや個別LEDライトを使うことでも対応できます。教室全体の明るさは他の児童生徒にも影響することですから、全体の状況を考えて工夫できると良いでしょう。
現在は、ほとんどの小中学校(特別支援学校は小中学部)で、GIGAスクール構想により1人1台端末が実現されています。端末はクロームブックまたはiPadがほとんどで、それぞれに使い勝手が違いますが、弱視の児童生徒にとっては、iPadの方が便利なことが多いようです。
iPadはコンパクトで軽く、校外学習などでも気軽に持ち運びできて便利です。また、より直感的に利用できるため、慣れるのに時間がかかりません。更に前述しましたが、書き込みやリフロー機能などが使えて便利なPDF拡大教科書が利用できる「UDブラウザ」は、iPad専用のアプリです。
クロームブックかiPadかは、公立校の場合は自治体ごとに教育委員会が決定し、一般的にはクロームブックが多く選ばれています。
小中学校での学習には、見えにくさのある弱視の児童生徒にとっては様々なハードルが待ち構えています。
特に小さな物や動く物を見なければならない学習、細かな作業を要求される学習は難しい場合が多いのです。一目見て様子が分かり手順が見通せる児童生徒と違い、見えにくさのある児童生徒はどうすれば良いか分からず、とても厳しい状況になります。
学習のハードルは、例えば次のようなことがあります。
算数での定規、コンパス、分度器などの利用
理科での温度計など各種計測機器の利用や、目を近づけられない実験など
体育での様々な運動
家庭科での裁縫・ミシンや調理
図画工作や美術での刃物、工具類の扱い
校外宿泊や修学旅行など普段と違う活動
しかし、これらのハードルは事前に一度でも経験しておくと安心感が違います。家庭で事前にやってみることもできますが、一部のことがらは視覚特別支援学校の教育相談で体験することも可能です。学校での学習が開始される前に、教育相談担当者に「こんな学習が始まるので、先取りで経験しておきたい。」と相談してみてはどうでしょうか。