高等植物の生殖器官である花は、一般には花弁、萼片、雄蕊、雌蕊の4つの部位から構成されているとイメージされるが、雄蕊、雌蕊の揃った両性花だけではなく、雄蕊または雌蕊のどちらかを有する単性花もある。単性花をつける植物には、性染色体により雌雄が決定される私たちヒトと同じように別々の個体に単性花をつける雌雄異株や、同じ個体に雌雄の単性花をつける雌雄異花同株がある。雌雄異花同株であるベゴニアにおける雄花と雌花の分化を決定するしくみを調べるために、ベゴニアの雄花と雌花それぞれから、RNAを抽出し、RNAseqデータに基づいて比較トランスクリプトーム分析を行い、雄花と雌花それぞれ特異的に働く遺伝子の解析を行っている。
動かないように見える植物も、昆虫などの食害や病原体の感染による生物学的ストレスや、光や温度条件、乾燥など非生物学的ストレスなどさまざまな要因に応答する能力をもっている。モデル植物であるシロイヌナズナやイチゴの葉にSoft Mechanical Stimulation(SMS)処理を行うとカビに対する耐性が増加し、防御応答遺伝子の発現が誘導がされることが知られている。商業作物であるレタス(Lactuca sativa)をSMS処理し、SMS処理されたレタスと未処理のレタス、それぞれからmRNAを抽出し、RNA-seq解析を行い、機械刺激によりシグナル伝達や病害抵抗性マーカー遺伝子の発現が誘導されていることや数分で発現する遺伝子や数時間後に発現する遺伝子など多様であることが明らかになっている。