太陽光ファクトチェック

太陽光発電についてよくある疑問とファクトを整理します。


<太陽光発電の必要性について>

すでに再生可能エネルギーは十分普及しており更に増やす必要はないのでは?

国のエネルギー基本計画において、再生可能エネルギーの主力電源化は明記されています。一方で、日本の再エネの普及は他国に比べて低調であり、2030年度の目標に対しても太陽光発電の現状は58%にとどまっています。2030年度までに普及が可能でコストも低廉化している成熟した再エネである太陽光発電は、さらなる促進が求められます。国交省・経産省・環境省は「2030年までに新築戸建の6割に太陽光発電を設置する」という目標を明確に示しています。

インフォパック 東京都が提案する「住宅メーカーへの太陽光発電の設置義務化」を考える

エネルギー基本計画

今後の再生可能エネルギー政策について(資源エネルギー庁)

脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会 (国交省・経産省・環境省)

太陽光発電などの再エネ普及の前に省エネを推進するべきでは?

オイルショック以降、日本は家電や設備の効率向上と節電行動により、「エネルギー消費のムダを省く」省エネを推進してきました。しかし、エアコンや給湯機の効率向上は頭打ちであり、電力需給がひっ迫しているからと言って節電をむやみに推奨することは、夏の熱中症や冬のヒートショックなど、国民に大きな健康リスクを押し付けることになります。国民が健康快適に暮らすためにはエネルギーは必要ですが、従来のように化石燃料に依存することは、地球環境の面からも、経済性・安全保障の面からも望ましくありません。従来からの省エネ手法に限界があるからこそ、太陽光発電に代表される「エネルギーを生み出す」再エネの普及が必要なのです。

再エネを普及させるにしても、住宅の屋根に太陽光を載せる必要はないのでは?

大型発電所やメガソーラーなど、需要から遠く離れた場所で電気を作る「オフサイト」発電では、電気を遠く運び込むために系統を利用する「託送料金」がかかるため、電力使用者の電気代の負担が大きくなります。太陽光を屋根載せする「オンサイト」発電では、発電した電気を系統を経由せずに自家消費できるため、託送料金の支払いがないために電気代の負担を大きく低減することが可能です。

託送料金は家庭向け電気料金の30~40%

屋根載せ太陽光は自家消費優先なら他人に負担を押し付けない

他の再生可能エネルギーを重視するべきでは?

再エネには太陽光の他に、風力発電や水力発電・地熱発電などがありますが、住宅スケールで実用的なものはありません。薪ストーブなどバイオマス利用もあり、寒冷地での暖房には有効ですが、電気を生み出すことはできず、薪や木質ペレットの供給や排煙問題もあります。住宅において、生活に必要な大半の電力を自然エネルギーで供給できる成熟した技術は、現状において太陽光発電しかありません。

③太陽光発電新書 (東京都)

太陽光発電の普及は設置義務化以外の方法で行うべきではないか?

日本では1990年代から太陽光発電の技術開発、および固定価格買取制度(FIT)や設置補助など様々な普及政策を行ってきましたが、平成30年の住宅・土地統計調査における住宅の太陽光発電の設置率は4.08%にとどまっています。普及を加速させるため、カリフォルニア州やニューヨーク州・ドイツなどでは設置義務化がすすめられています。

総務省 住宅・土地統計調査

③太陽光発電新書 (東京都)

世界をリードするカリフォルニアの建築脱炭素政策 (自然エネルギー財団)

EUの野心的な自然エネルギー目標は、日本に警鐘を鳴らしている (自然エネルギー財団)

インフォパック 東京都が提案する「住宅メーカーへの太陽光発電の設置義務化」を考える (自然エネルギー財団)

太陽光発電を載せていない人にとって、再エネ賦課金の負担がさらに増えるのでは?

再エネの普及により、買取のための再エネ賦課金の負担が増えているのは事実です。ただし、そのほとんどはメガソーラーなど大規模な太陽光によるものです。住宅用の10kW未満の太陽光の影響は軽微であり、金額はすでにピークアウトしています固定価格買取期間が10年と短く、また最近は買取価格が引き下げられたこともあり、住宅に太陽光発電が普及したとしても、再エネ賦課金への影響はごく小さいものと考えられます。

固定価格買取制度 環境省

メガソーラーと住宅屋根載せを一緒に考えてはいけない

<経済メリットについて>

太陽光発電は他の発電に比べてコストが高いのでは?

技術の進歩により、2020年においてすでに太陽光発電は住宅用も含め、他の電源とそん色ない経済性を有しており、2030年にはむしろ他電源よりも安価となると予測されています。

電気をつくるには、どんなコストがかかる?

2020年の電源別発電コスト試算結果の構成

2030年の電源別発電コスト試算結果の構成 

売電単価が引き下げられた現在、太陽光発電の設置コストを回収出来ないのではないか?

太陽光の売電単価は従来より、調達価格等算定委員会において20年以内のコスト回収を想定して決められており、引き下げられているのは、設置コストの大幅な低下を反映したものです。実際の設置コストは、効率的な設計・調達により調達価格等算定委員会の想定より安くすることが可能であり、10年少しでの償却が十分に可能です。東京都の試算では、4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用92万円を10年(現行の補助金を活用した場合6年)で回収可能です。また、30年間の支出と収入を比較すると、最大152万円のメリットを得られる計算となっています。

昨今では輸入燃料の高騰の影響で系統からの買電単価が急騰しているため、発電分の自家消費を増やすことで、ペイバックに必要な期間はさらに短くなり、経済性を向上させることが可能です

調達価格等算定委員会 令和4年度以降の調達価格等に関する意見

③太陽光発電新書 (東京都)

「電気代は何とかなる」なんてゼッタイ言えない

太陽光の発電実績は都の想定を上回っている

東京理科大学 植田先生に学ぶ家づくり!『脱炭素の鍵は太陽光』編~変わりゆく電力事情、脱炭素化と太陽光発電~(動画)

以下のエクセルシートで、簡易的に太陽光の収支を計算できます。

太陽光発電 コスト試算シート (EXCEL

太陽光発電の設置コストを負担できず、家を買えない人が出るのではないか?

太陽光のシステム費用は低下傾向が続いており、2021年の平均は容量1kWあたり28.8万円、一般的な容量5kWでは144万円となります。設計・調達の最適化により、さらに低価格化が可能です。

令和4年度以降の調達価格等に関する意見

太陽光発電は電気代負担を大きく削減でき、長期の運用で施主にとって大きなメリットをもたらすため、課題は初期コストの負担に絞られます。例えば住宅金融支援機構のフラット35には、太陽光を載せたゼロエネルギー住宅(ZEH)に金利優遇を2022年10月に開始予定で、自治体によっては設置補助を行うなど、初期負担低減の施策が様々に実施されています。

今後の再生可能エネルギー政策について(資源エネルギー庁)

フラット35S【ZEH】

初期コストを負担できない人には、事業者が初期コストを負担する「タダ載せ」のPPAモデルが利用できます。

0円ソーラー

発電量低下したり機器故障したりするのでは?

太陽光発電も通常の設備と同じように、運用している内に効率が低下します。現状では多くのメーカーが、「システム保証」を10~15年としており、この期間に発電ができなくなった場合はメーカー負担で修理されます。発電量に対する「出力保証」は15~25年が一般的です。直流の電気を交流に変換する「パワコン」は10年程度で交換するのが一般的ですが、屋根に載せる「パネル」の方は数十年にわたり利用できると予想されます。

2017年4月のFIT制度改正により、メンテナンス(保守点検)が義務化されており、定期的な点検により発電量が維持されることが期待されます。

太陽光発電(パネル)のメーカー保証比較

太陽光発電のメンテナンス義務化について正しく理解しよう!

<建築的な課題 について>

パネルの 重さにより 耐震性 が低下する のではないか?

住宅屋根載せにおいて一般的な発電容量である5kW分の太陽光パネルの重量は300kg、設置架台の重量は100kg程度で、屋根に載る重量は合計で400kg程度です。瓦屋根の重量は4000kg程度あるので、太陽光パネルによる追加重量は大きくありません。通常の耐震設計で問題ありません。

太陽光パネルの屋根載せで雨漏れするリスクがあるのではないか?

雨漏りは、屋根以外にも、ベランダ・窓サッシ・天窓・外壁など、様々な部位で発生します。住宅保証支援機構の調査において、雨漏りの8割は屋根以外で発生しており、屋根が原因なのは22.4%です。そのうち、太陽パネルの設置が原因となっている件数は統計がなく、ほとんどないものと考えられます。瓦・スレートに穴あけを行うものも含め、メーカーが推奨する工法に従って適切に施工すれば、雨漏りのリスクは限りなくゼロです。万一、雨漏りが発生した場合でも、瑕疵担保保険によりカバーされるので、住まい手に負担が及ぶことはありません。

事例から学ぶ住宅トラブルとその実態(一般財団法人 住宅保証支援機構)

住宅瑕疵担保履行法とは

台風ひょう 等の自然災害 で壊れる リスク があるのではないか?

台風の。また太陽光パネルの表面はガラスで密に覆われており、ひょうなどが当っても容易には破損しません。また一般に、自然災害による太陽光発電の損害は、火災保険でカバーされます。

③太陽光発電新書 (東京都)

火災が発生するリスクがあるのではないか? 

住宅用太陽光発電システムの累積設置棟数は、平成 30 年 10 月時点で全国に 2,374,700 棟。一方、火災事例は平成 20 年3月から平成 29 年 11 月までで、事故情報データバンク に127 件登録されています。72 件の調査対象のうち、モジュール又はケーブルから発生した火災事故等が 13 件とされています。太陽光に伴う火災は設置数に比べて極めて少なく、適切に施工していれば火災の可能性は限りなくゼロといえます。

住宅用太陽光発電システムに起因した住宅の火災事故に注意!(消費者庁)

火災時の消火において感電 リスク があるのではないか?

消防庁は太陽光設置住戸における消火活動時の注意点を整理しており、適切に対応することで問題なく消火活動を行えます。

太陽光発電システムの設置された一般住宅における消防活動上の留意点(消防庁)

③太陽光発電新書 (東京都)

<環境問題 について>

製造時のエネルギー消費やCO2排出を運用時の発電量で償却できないのでは?(ペイバック 問題)

NEDO報告書における2009年度の時点で、すでに太陽光発電システムのエネルギー・およびCO2のペイバックタイムは2~3年程度とされています。その後、シリコンには半導体グレード(SEG-SI, 11N)よりソーラーグレード(SOG-SI, 6N)が主に用いられるようになるなど、製造時の省エネ・省CO2はさらに進んでいます。

他の発電方式と比べても、建設時等の「間接」と発電燃料燃焼の「直接」とも、住宅用の太陽光はCO2排出量は非常に少なくなっています。

太陽光発電の二酸化炭素排出量とペイバックタイム

「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点

太陽光パネルが大量に廃棄されて処分に困るのでは?

通常の製品(家そのもの)と同様に、太陽光パネルも最終的には廃棄が必要です。

太陽光パネル"大廃棄時代"がやってくる (NHK)

どうする!? 太陽光パネルの"就活"  (NHK)

環境省の調査において、日本全体における太陽光パネルの廃棄量は年間5000~7000トン程度、そのうち2/3はリユースされており、リサイクルなど処分されているのは1/3の2000トン弱です。東京都では現状の700トンが、2060年には約4倍の3000トン程度になると予想しています。

一方で、日本全体からの産業廃棄物は3.9億トン、建設業からだけでも8300万トンにおよびます。太陽光パネルの廃棄は現状において建設業からの産廃問題全体からみれば極めて軽微であり、殊更に問題とすべき課題とはいえません。


使用済太陽電池モジュールリサイクルの実態調査報告書の概要

太陽光発電設備の3R推進について (東京都)版

産業廃棄物の排出及び処理状況等 (環境省)

太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版) (環境省)


環境省はH28年報告書において、将来的に太陽光パネルの廃棄は80万トン近くに達すると見積もっていますが、その全量を埋め立てたと仮定した場合でも産業廃棄物の年間最終処分量に占める割合は6%です。また、この環境省の「最大80万トン」予測は、同じ年に導入させた太陽光パネルが設置後同じ年に寿命を迎えるという単純な仮定に基づいたもので、リサイクル体制の整備を目指すための最大見積という意味合いが強いものです。実際には、NEDOの「ピーク28万トン」が現実的と考えられます。現状のリサイクル工場は全国に30社以上、1社1日1交代で1日パネル480枚、年間1800トンの処理が可能とするとすると、可能最大処理能力はすでに年間十万トン以上あると考えられます。なお、首都圏のリサイクル工場にヒアリングしたところ、現状の稼働率は1割以下と低く十分な余裕があり、今後の処理施設の充実や勤務体制の強化により、本格的な廃棄がはじまっても全く問題ないと考えられます。

太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版) (環境省)

太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト事業原簿【公開】 (NEDO) Ⅲ-114に予想量記載

廃棄された太陽光パネルはリサイクルできないのでは?

太陽光パネルを撤去する際は、他の場所で利用する「リユース」が推奨されます。廃棄する場合にもリサイクル技術はNEDOの技術開発などを通してすでに確立しており、各地のリサイクル工場で適切な処理を行うことができます。

使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて  (環境省)

太陽光発電設備をリユース、リサイクル、処分する際の留意点について

③太陽光発電新書 (東京都)

太陽光パネルのリサイクルの流れ

リサイクル技術の分類   

使用済再エネ設備関連(環境省)

太陽光パネルリサイクルの総合情報サイト

太陽光パネルリサイクル事業のご紹介(動画) 詳細版(動画) 株式会社 浜田

太陽光パネルを100%リサイクル!!(動画) 東京パワーテクノロジー株式会社

太陽光パネルには有害物質が大量に含まれているのでは?

太陽光パネルは、ガラスが6割、アルミが2割、樹脂などが2割弱となっており、ほとんどの材は「窓」と同じです。太陽光パネルに特有の材は、セルは3%、配線やハンダ1%にすぎません。環境省の調査によると、溶出試験よりハンダに使われる鉛が検出されていますが、技術改良により使用量は減少しています。また一部メーカーのパネルから基準値を上回るセレンやカドミウムが検出していますが市場シェアは小さく、独自のメーカーリサイクル体制が準備されています。現状ではセレン・カドミウムを含まない、単結晶シリコン型が大半です。パネル解体後、セルや配線の部位は非鉄精錬業者により、各種環境法令の基準値を守りながら、非鉄金属の回収・セメント原料や路盤材として再利用されます。

パネルに含まれる成分(有用資源と環境影響)

太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版) (環境省)

太陽光発電「廃パネル」の処理問題とは?

電子製品の廃棄物(E-WASTE)に伴う問題は、パソコンやスマートフォンなど身近な情報家電などに共通した問題であり、廃棄物全般の問題として対応が求められます。

電気電子機器廃棄物

太陽光発電設備の撤去に多額の費用がかかるのでは?

住宅用太陽光発電設備の撤去にかかる費用は、環境省のH24,H25年における調査では、解体業者では平均8.9万円、施工業者では平均18.9万円です。業者へのヒアリングによるとパネル一枚の処理費(契約・搬送費用別)は、通常の埋め立て処理では約二千円、リサイクル処理では約三千円が目安のようです。

太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン (環境省)

蓄電とセットでないと太陽光発電は意味が無いが、蓄電池は未だ高いのでは?

太陽光発電の設置住戸数が少ない現状では、自家消費できずに系統に売電した分も、近隣住戸ですぐに消費されるため、地域全体のエネルギー自立に有効です。自家消費を増やすには蓄電池が最も有効で、そのコストも急激に低下しています。また昼間沸き上げ型エコキュートなど、太陽光の発電を積極的に自家消費する設備も登場しています。

太陽光発電・蓄電池・昼間沸き上げエコキュート向け電力メニュー 東京電力エナジーパートナー

<国際問題について>

パネルは中国からの輸入が殆どでエネルギー安全保障上の課題があるのでは?

ほぼ全量を海外に依存している化石燃料の膨大な輸入量、それに伴う多大な国富の流出の方が、エネルギー安全保障上はるかに大きな問題です。2021年の太陽光発電関係の輸入金額は2500億円に対し、化石燃料の輸入は16.8兆円に達しており、エネルギー価格高騰と円安の影響でさらなる増加が予想されます。部材の一部を輸入するにしても、その後に国内でエネルギーを生み出し続ける太陽光発電は、エネルギー安全保障を強化するのに有効です。また住宅用は小さな屋根や保障・アフターサービスが充実したu日本企業のシェアが大きく、国産のパネルを選択することも可能です。

太陽光発電の部材と化石燃料の輸入金額

③太陽光発電新書 (東京都)

太陽光パネルは国産を選択することも可能

材料となるシリコンの 主要 生産地のウイグル問題が心配だけど?

太陽光パネルに使われるシリコンは多くが中国製であり、人権問題が懸念されるウイグルで製造されているものも含まれると推測されます。アメリカはウイグルの強制労働問題に輸入禁止などで対応しており、日本も含め世界が連携して人権保護を進めていくことが重要です。一方で、シリコンは身の回りの家電や車などに搭載される、あらゆる半導体に使われている現代社会の必需物質です。太陽光パネルに固有の問題ではなく、シリコンやレアメタル全般に共通の問題として、適切に対処していく必要があります。

米インテル、中国に謝罪 ウイグル製品不使用要請で

ウイグル強制労働防止法、6月21日に輸入禁止施行へ

③太陽光発電新書 (東京都)