220824

住環境計画研究所

ヒアリング先:住環境計画研究所 URL

参加者:鶴崎様・平山様・水谷様・岡本様


太陽光発電の実際に関するまとめ

  • 環境省の大規模なエネルギー調査でも、太陽光発電の省エネ効果の大きさは確認されている

  • 太陽光発電の性能や信頼性は向上しており、現在では想定通りの発電が期待できる

  • 太陽光を搭載した後に、新たに建設された隣棟の影による発電障害の事例はごく限られる


(前)環境計画研究所では、住宅に関する様々な調査をされていますね。

(住環境)2017年(平成29年)より環境省の事業として、「家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)」を毎年実施しています。約1万件近い調査対象について、月々の光熱費の検針値をご提供いただき、家族構成や建物性能、設備などとの関係を分析しています。

家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)

(前)毎年継続的にこれほどの規模で住宅のエネルギーを調査している事例というのは、他に例がないと思います。様々な省エネ方法があると思いますが、効果が大きいものは何でしょうか。

住環境)やはり、太陽光発電は最も効果が大きいです。2020年(令和2年)の調査では、調査対象内での戸建全体での搭載率は12.3%、容量は4kW~6kWが42%と最も多くなっています。太陽光発電システムの年間発電量は平均5,300kWh、売電量は3,661kWhです。

(前)太陽光発電がある家のエネルギー消費量は2次エネ換算で32.3GJ、うち電気は20.7GJとなっています。売電3,661kWhは13.2GJですから、それを差し引くと電気では7.5GJ、家全体でも19.1GJ。載せていない家の40.5GJに比べて半分以下ですね。太陽光発電を載せると、家全体のエネルギー消費がザックリ半分になるんですね。

(住環境)単体でこれだけ省エネ効果が大きい対策は、他にはちょっと見当たりません。

出展:令和2年度家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)

(前)太陽光発電に関しては、載せても想定通りに発電しないのでは、と考えている人も多いようです。

(住環境)当所では1998年ごろから太陽光発電について調査を行っています。ちゃんと発電できているかを判定するため、SOLAR CLINICというサイトを運営しています。郵便番号とパネルの条件を入力すると、その地域の気象データから平均的に予想される発電量を知ることができます。現在では更新は終了していますが、ご利用はいただけます。

太陽光発電ユーザー SOLAR CLINIC

(前)予想される発電量より、実際の発電量が少ない、という問い合わせはあったのでしょうか?

住環境)2000年以前のものについては、想定より実発電量が少ない、ということはいくかあったようです。しかし2000年以降は太陽光発電の品質が向上したため、大概は想定通りの発電が行われるようになったようです。


(前)太陽光を載せた後に、隣に建物が建って影になり発電ができなくなるのでは、という意見も聞きますが。

(住環境)10年くらい前に、戸建住宅の屋根に太陽光パネルを載せた後、東隣にマンションの建設計画があり、発電量が減りそうだ、という相談がありました。マンションの建設後に発電量が16%(年間500kWh)減りそうだ、という試算をしました。

(前)となりにマンションが建つとなると影響がずいぶん大きそうですが、2割弱とそれほど大きい影響でもないですね。高さが10メートルを超える建物については日影規制がかかるので、北側にひどく影を落とす建物を建設することはできませんし。

日影規制とはどのようなことですか?(江戸川区)


(前)現状では、太陽光発電はだいたい問題なく発電できそうということでしょうか?

(住環境)調査をしていても、2005年以降はシステム出力係数は顕著に改善しており、発電が確実に行われていることが分かります。太陽光発電には長い技術の蓄積があり、その性能と信頼性は確実に向上しています。

長期発電実績に基づく住宅用太陽光発電システムの性能評価

戸建住宅における太陽光発電システムの導入者意識と発電実態