220803 東京都環境局

22/08/03 東京都環境局の太陽光パネル廃棄への対応について

取材協力:建築知識ビルダーズ


ヒアリング先:  東京都環境局 山田様 岩崎様

取材者: 木藤編集長・山川様(エクスナレッジ) 前(東京大学)

太陽光パネルの廃棄に関するまとめ

  • 太陽光の廃棄パネルは、現状では3/4が「リユース」され再度発電に使われている

  • 建設リサイクル法により、住宅の解体時には太陽光パネルも含めて現場での分別解体が義務である

  • パネルを廃棄処理する方法は「破砕・埋立」「リサイクル」の二択

  • ハウスメーカー・工務店などの排出事業者は、中間処理業者に「破砕・埋立」「リサイクル」を指定する。

  • 「破砕・埋立」される場合でも、汚染が広がらない「管理型」の最終処分地に埋立が義務なので、汚染などのリスクは通常の電気機械器具と同様に管理されている

  • 資源保護のため、リサイクルが望ましい。排出事業者は、リサイクルができる中間処理業者である「リサイクル処理業者」にリサイクルの依頼をして費用を支払うことで、廃棄パネルを確実にリサイクルすることができる

  • リサイクル処理業者は十分なキャパシティを持っており、新規参入も増えていることから、将来にわたって十分な処理能力が確保されている

(前)東京都は、全国に先がけて太陽光発電の設置義務化に向けた取り組みを進められています。先日公開された「太陽光発設置 解体新書」は、太陽光に関わる疑問に極めてクリアで分かりやすく解説されていて、素晴らしいと思います。太陽光の普及が進むと、太陽光パネルの廃棄も増えると思いますが、どのような対策をされているのでしょうか?

太陽光発電設置 解体新書

(環境局)東京都としては、2030年までにカーボンハーフを達成するべく、省エネや再エネの普及に努めています。太陽光発電の普及を推進するとともに、将来的に太陽光パネルの廃棄が2040年代半ばには2500トン程度にまで増加すると予測し、廃棄パネルのリサイクル体制の構築を進めてきました。

東京都使用済太陽光発電設備リサイクル検討会 報告書

(前)住宅用の太陽光パネルが廃棄される場合のフローを教えていただけますか?

(環境局)一般的には、家屋の解体や屋根の葺き替えなどの工事の際に撤去されることが多く、当該工事を請け負ったハウスメーカーや工務店の産業廃棄物として、これらのハウスメーカー等が適切に処理する責任を負います。

(前)家の建て替えでは大量の廃材が出ます。それと同じように、太陽光パネルも同じということですね。

(環境局)ハウスメーカー・工務店などの排出事業者は、「産業廃棄物処理業者」に廃棄パネルの処理を依頼します。産業廃棄物処理業者は、「収集運搬業者」「中間処理業者」「最終処理業者」の3業態を含んだ総省です。

収集運搬業者:廃棄物を収集する

中間処理業者:廃棄物の焼却・破砕・溶融・選別など 廃棄パネルは「破砕」または「リサイクル」される

最終処理業者焼却・破砕された破砕物を埋め立てる


(前)つまり、廃棄パネルは「破砕・埋立」されるか「リサイクル」されるかの二択だと。

(環境局)その通りです。補足すると、以下のようになります。

破砕・埋立:中間処理施設で破砕後、管理型最終処分場で埋め立て

リサイクル:中間処理施設で素材を分離(例:浜田 東京パワーテクノロジー)した後、別の施設へ持ち込み再利用(アルミ:アルミ原料、ガラス:建築土木資材、セル等:金属精錬)


(前)廃棄パネルが「破砕・埋め立て」されるか、「リサイクル」されるかは、この中間処理業者次第ということですね。工務店などの排出事業者が「リサイクルできる中間処理業者」を選んで「リサイクル」の要望を出して費用を払えば、確実にリサイクルされるということですね。

(環境局)その通りです。下の図では、廃棄パネルのリサイクルができる中間処理業者を「リサイクル処理業者」としています。廃棄パネルはサイクル処理業者にリサイクルを依頼すれば、パネルの破損など大きな問題がない限り、確実にリサイクルされます。リサイクル処理業者は「パネルからガラスとセル等を分離できる装置を持っていること」「分離した材料を引き取ってくれる先を持っていること」が必要です。

PVリサイクル リサイクル処理業者一覧

(前)廃棄パネルはリサイクル処理業者に再資源化を依頼するのが一番安心ですね。そもそも、家を解体した場合、廃材はどのように廃棄されるものなのでしょうか?

(環境局)一定規模以上の物件の案件に伴い廃棄される場合、建設リサイクル法の対象です。現場での分別分離は義務となりますので、太陽光パネルも単品で撤去することになります。

建設リサイクル法

一定規模以上※の建設工事事(以下、対象建設工事)について、発注者及び建設業者に対し、分別解体等及び再資源化等を行うことを義務付け。

・特定建設資材を用いた建築物等に係る解体工事

・その施工に特定建設資材を使用する新築工事等

※一定規模以上

1)建築物の解体工事では床面積 80m2 以上

2)建築物の新築又は増築の工事では床面積 500m2 以上

3)建築物の修繕・模様替え等の工事では請負代金が1億円以上

4)建築物以外の工作物の解体工事又は新築工事等では請負代金が 500 万円以上


(前)解体工事で床面積 80m2以上が対象ということになると、普通の住宅の建替であれば、大概は建設リサイクル法の対象となると考えてよさそうですね。その単品で撤去された廃棄パネルは、リサイクルに回す義務があるのでしょうか。

(環境局)現状では、建設リサイクル法で再資源化が義務付けられているのは、「特定建設資材」であるコンクリート、アスファルト・コンクリート、木材の4品目だけです。

(前)現状では、PVパネルは解体時に分別分離はしないといけないけど、再資源化までは義務付けられていないということですね。工務店など排出事業者側でリサイクル処理業者を選ぶことがやっぱり大事だと。

(前)法律的に許されている太陽光パネルの処理は「破砕・埋立」「リサイクル」の二択ですが、どちらでもない「不法投棄」の可能性を聞いたことがあるのですが

(環境局)不法投棄はあってはならないことですが、メガソーラーなどの太陽光発電事業は参入障壁が低く、様々な事業者が参加しており、事業主体の変更も行われやすいことから、事業終了後に廃棄・不法投棄される懸念は指摘されてきました。そのため、現在では事業用(10kW以上)を対象とした廃棄等費用外部積立て制度が用意されています。

廃棄等費用積立ガイドライン(資源エネルギー庁)


(前)不法投棄は大規模太陽光では起きうるけど、今では廃棄費用の積み立てが義務化されてリスクは減っていると。そもそも住宅用の太陽光パネルは建設リサイクル法の対象だから、大規模太陽光とは全然別の話ですね。ところで、処理業者は引き取ったパネルをどうするのでしょうか?

(環境局)現状では、そもそも住宅用パネルが廃棄されるケースが非常に少ないようです。国の調査によれば、現状で廃棄されているのは、メガソーラーなどの事業用パネルが被災したものやメンテナンスの際に不具合が見つかったものが多くを占めています。そうしたパネルも、別の場所で再度発電に使われる「リユース」として活用される分が3/4以上を占めています。


(前)廃棄パネルの多くはリユースされているんですね。もう一度使えるならそれがベストですね。

(環境局)残りの1/4が、破砕されて埋め立てられるか、リサイクルに回されています。前述の通り、リサイクルに回すのが良いですが、破砕・埋立される場合でも、汚染物質が流出しない「管理型」の最終処分場とすることが、環境省のリサイクル等推進ガイドライン(第2版)で明示されています。本ガイドラインでは、太陽光パネルは電気機械器具に該当するとされており、廃棄物処理法の処理基準上、電気機械器具は「安定型」では埋立処分できません。そのため太陽光パネルの廃棄は、「管理型」で埋立処分することになります。

(前)破砕・埋立される廃棄パネルについても、汚染物質が流出しない管理型処分場への埋立が必須ということですね。もちろん、パネルをリサイクルして再資源化するのがベターですが、破砕・埋立される場合でも、他の廃棄物と同様の安全性が確保されていることが理解できました。

(環境局)太陽光パネルを構成するもののうち、大部分はガラス・アルミ・プラスチックとなります。

(前)ガラス6割、アルミ2割弱、樹脂2割弱というと、これは普通のガラス窓と変わりませんね。セルや電極といった太陽光固有の特殊な素材はわずか3%しかない。しかもパソコンやテレビなど身近な家電においても、普通に廃棄されているものですよね。太陽光パネルは「ほぼ窓 & ちょっとパソコン」と理解しました。特殊なものではなく、普通の工業製品なんですね。

(環境局)パネルを分解した後、樹脂・セル・電極が一体化した「発電シート」は精錬工場において、各種環境法令の基準値を守りながら適切に処理されます。パソコンやテレビの基盤などと同じです。

(前)発電シートに含まれる鉛などの有害物質も適切に処理されるので、環境汚染を起こすことはなくて安心ですね。太陽光パネルも普通の廃棄物と同じで、特別な問題はないと理解しました。

(前)東京の近くで処理できる工場はどれくらいあるのでしょうか?

(環境局)少なくとも首都圏近郊に7か所のリサイクル施設が既に稼働しています。そのうち、3施設は、ここ2年間で新たに稼働した施設です。

(前)将来予測される廃棄量のピーク年2500トンに対しても、余裕で対応できますね。すでに十分なキャパシティが準備されていることが理解できました。一通りお伺いして、要点を以下に整理しておきました。