221007 日本住宅保証検査機構(JIO)

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西山様・小久保様・齋藤様・金井様


住宅瑕疵保険の概要および太陽光発電に伴う雨漏りの発生状況に関するまとめ

  • 新築住宅は構造と防水の主要部分について10年の瑕疵担保責任が義務づけられ、その資力確保のために「新築住宅瑕疵保険」がある

  • 2008年12月から2020年06月の期間にJIOが受けた戸建住宅の「新築住宅瑕疵保険」の約100万件のうち、発生割合は10年通算で0.6%程度

  • 瑕疵のほとんどは雨漏り その多くは「窓回り」や「屋根と壁の取り合い」で発生している

  • 屋根からの雨漏りは少なく、太陽光発電が原因の雨漏りは2件のみ 太陽光発電による雨漏りのリスクはごく小さい

  • 既存住宅の「リフォーム瑕疵保険」は任意 太陽光発電が原因の雨漏りは3件だが、太陽光専門工事業者が設置した場合は、その業者が加入している保険等で対応していると思われる

  • 耐震性や防水の確保のためにも、太陽光は新築時に載せる方が有利

(前)まず、御社の業務についてご説明をお願いします。そもそも、住宅瑕疵担保とはなんなのでしょうか?

(JIO) 当社は国土交通大臣から指定を受けた「住宅瑕疵担保責任保険法人」です。

1990年代に販売された住宅において、地盤沈下や施工不良などの欠陥・不具合などの重大な瑕疵(種類・品質が契約に適合していない状態)が発見される事件があり、住民集団訴訟が起こされるなど大きな問題になりました。これを受けて2000年(平成12年)4月1日に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」通称:品確法が施行され、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」について、10年間保証することが義務付けされました。瑕疵が見つかった場合は、住宅を引き渡した住宅事業者が無償で修理しなければなりません。

住宅の品質確保の促進等に関する法律 (国交省Wikipedia

ところが、2005年に発覚した構造計算書偽装事件(Wikipedia)においては、構造に瑕疵がある物件が販売されていたにも関わらず、住宅事業者が倒産してしまったため、住宅購入者が補償を受けられないという問題が発生しました。そのため、もしも住宅事業者が倒産しても購入者が確実に補修する資金を確保するという趣旨で、「瑕疵担保責任を履行する資力の確保」のために、2009年10月に住宅瑕疵担保履行法が施行されました。

国土交通省 住宅瑕疵担保制度ポータルサイト 住宅瑕疵担保履行法について 住宅瑕疵担保履行法の概要

まんがでわかる「住宅かし担保履行法」


(前)品確法で定められている瑕疵担保の10年間保証を、住宅購入者が確実に受けられるための仕組みが作られたのですね。家を買う人は安心できる、よい制度だと思います。

(JIO)資力の確保の方法は「供託」と「保険」の2つがあります。大手ハウスメーカーは供託の場合が多いのですが、それ以外は保険になります。当社は国土交通大臣から指定を受けた「住宅瑕疵担保責任保険法人」として、「新築住宅瑕疵保険」をお引き受けすることを業務としています。

JIO わが家の保険

(前)実際に構造上の問題や雨漏りなどの瑕疵が発生した場合はどうなるのでしょうか?

(JIO)新築住宅を引き渡した住宅事業者に、保険の対象となる損害の合計額から免責金額10万円を引いた、80%を保険金としてお支払いします。万が一、住宅事業者が倒産等されている場合には、住宅取得者に免責金額10万円を引いた全額を保険金としてお支払いします。

(前)御社で保険を引き受ける場合は、現場の検査などをされるのでしょうか?

(JIO)基本的に2回、現場の検査を行います。1回目は基礎の鉄筋を入れた状態、2回目は棟上げをした状態になります。オプションで防水紙等外装下地の施工状態の検査もお引き受けしています。当社には社員の検査員が100名以上いて質の高い検査をご提供しており、また現場の方に改善をご提案する「フィードバック面談」も行っております。

(前)新築時に太陽光発電を載せていて雨漏りが発生した場合には、新築住宅瑕疵保険によりカバーされるのでしょうか。

(JIO)新築住宅が引き渡される時点で太陽光が載っていたのであれば、当然カバーされますのでご安心ください。また、保険料は床面積や団体割引などで変わりますが、太陽光の有無などによる保険料の差はありません。


(前)御社は新築住宅瑕疵保険のアンダーテイカーとして、瑕疵の発生状況をよくご存じだと思います。新築住宅において瑕疵がどのように発生しているかをまず教えていただけますか?

(JIO)当社は2008年12月から2020年06月の期間において、およそ100万件の新築戸建住宅の新築住宅瑕疵保険をお受けしております。瑕疵が発生する割合は0.6%程度、数にしておよそ6000件です。そのうち9割以上が「雨漏り」です。瑕疵保険法人で共通の設計施工基準では細部の防水方法が明示されていないので、当社ではこうした瑕疵を減らすため、防水施工のポイントを防水施工マニュアル(住宅用防水施工技術)にまとめております。この防水施工マニュアルに従ってご説明したいと思います。

(前)そもそも、雨漏りはどこで発生しているのでしょうか。

(JIO)単体で一番多いのは、「サッシ回り」です。木造住宅では34.4%にのぼります。透湿防水シートや防水テープにシワや破れ・浮きがあると、そこから毛細管現象で水が室内に浸入してきてしまいます。また、通気層の横胴縁・縦胴縁なども、隙間を適切に空けておかないと水が溜まって雨漏りの原因になります。

(前)サッシ回りは特に丁寧に施工する必要があるのですね。他はどこが雨漏りしやすいのでしょうか?

(JIO)「屋根と外壁の取り合い」も雨漏りが起きやすい部分です。木造住宅では35.6%を占めます特に、バルコニーや陸屋根は注意が必要です。

(前)軒やケラバでの雨漏りも多いようですね。

(JIO)最近増えてきている、軒の出が極端に少ない「軒ゼロ」住宅については、外壁の通気層に雨水が浸入しやすいので、その具体的な対策もマニュアルに整理しています。

(前)どのような形の屋根が雨漏りしにくいのでしょうか?

(JIO)昔の家のように屋根の形が複雑だと谷の部分が弱点になりやすいので、シンプルな形の屋根の方が雨仕舞は有利です。切妻が一番バランスがよいではないでしょうか。寄棟は小屋裏の通気効率が悪く、片流れは棟側の防水に注意が必要です。軒の出は60cm程度、ケラバの出は30cm程度あった方が、壁や窓の保護にもなって望ましいと思います。また、バルコニーや天窓はない方が雨漏りのリスクは下がります。

引用:「防水施工マニュアル(住宅用防水施工技術)2021」 p.3,p.4,p.94(㈱日本住宅保証検査機構(JIO)編集,技報堂出版㈱発行)


(前)雨漏りというと屋根が一番多いのかと思ってしまいますが、そうでもないのですね。

(JIO)屋根からの雨漏りの割合は14.9%です。特に、水が溜まりやすい陸屋根やバルコニーが多くなっています。勾配屋根で雨が漏るというのは多くありません。ただし、屋根に開けられた天窓は雨漏りしやすいので、既製品以外を用いる場合は特に注意が必要です。

(前)屋根から雨漏りする割合は少ないことは分かりましたが、そのうち太陽光発電が原因の雨漏りはどの程度あったのでしょうか?

(JIO)2008年12月から2020年06月の期間において、太陽光パネルの設置が原因が発生した雨漏りは、2件ありました。1件はスレート瓦においてビス周りのシーリング不良(施工後9年目に発生)、もう1件はアスファルトシングルでビス周りの防水不良(施工後年目に発生)でした。

(前)同じ期間に約6000件の瑕疵が発生する中で、2件というのはずいぶん少ないですね。

(JIO)我々も新築住宅において、太陽光発電の設置による雨漏りのリスクはごく小さいと考えています。特に、現状で6割以上を占めるガルバなどの金属屋根であれば、縦ハゼにつかみ金具で太陽光パネルを固定でき、穴をあけないので防水層を痛めるリスクがありません。瓦やスレートに穴をあける必要がある場合は、施工はしっかり行う必要があります。支持瓦などを使う場合も、サイズや設置を適切に行う必要があります。

引用:「防水施工マニュアル(住宅用防水施工技術)2021」 p.9(㈱日本住宅保証検査機構(JIO)編集,技報堂出版㈱発行)


(前)新築住宅において、太陽光パネルによる雨漏りはほとんどないということが分かりました。既存住宅に後載せする場合はいかがでしょうか。

(JIO)当社は、既存住宅でのリフォーム工事向けにリフォームかし保険もご提供しています。新築では新築住宅瑕疵保険(または供託)が義務ですが、リフォームでは任意です。リフォーム工事の範囲に太陽光発電の設置工事が入っている場合は、リフォーム瑕疵保険の対象となります。当社の保険の契約件数は、月平均200件弱で、年間で約2,200件。過去12年間の累計は2万程度。それに対して、太陽光パネルからの雨漏り事故は3件となっている、やはり多くありません。ただし、太陽光専門工事業者が設置した場合は、その業者が加入している保険等で対応していると思われます。

なお、リフォームかし保険は、壁だけ・水回りだけなどの工事での利用が多く、屋根のリフォーム工事を対象とするものは1割よりも少ないです。さらに工事内容に太陽光パネルの設置があるものは少ないので、新築に比べて既存住宅に太陽光を後載せする場合の方が雨漏りのリスクは大きいと考えます。

(前)新築の時に太陽光を載せた方が、防水上有利になるのですね。

(JIO)構造、特に耐震性の面からも、新築時に載せるのであれば、太陽光パネルのことを考えた設計が可能です。新築時にできるだけ、太陽光発電についてもしっかりと準備・計画をしておくことが、防水や構造の面からも望ましいと考えます。